転生〜攻略対象と初遭遇まで
私はクルムバッハ辺境伯の令嬢として、転生した。
聖女の頃の記憶をそのまま引き継いで。
物心ついたころから、聖女だった頃の記憶がある。
最初は混乱した。
昼間から夢を見ているようだったから。
眼に映る景色が今見ているものなのか、前世の記憶のものなのか、あやふやにさえなっていた。
本当に、厄介な子供だったと思う。
魔王の記憶を。
戦いの記憶を。
仲間が倒れていく姿を。
思い出しては叫び泣き、怯えていたのだから。
それでも、家族は優しかった。
何も聞かずに、抱きしめてくれた。
おかげで、ようやく前世の聖女の私と今世の私が融合できた。
今、あるのは…。
ひょっとしたら、同じ世界に転生しているかもしれない、前世の仲間たちと
俺TUEEEEE ひゃっはー!!
って言いながら、前線で、大剣で、モンスターをハントしたい!
だけだった。
だけど、悲しいかな。
この世界にはモンスターはいなかった。
まあ、領地にある森にはつよい、魔物が出るけどね。
でもね、魔物は食べられないのですよ。
こんがり上手に焼けました!って言いながらモリモリ食べれないのですよ。
あれ、前世で勇者様にお話聞いた時に、すごくやりたいって思ってたから。
がっかりです。
それとね、私、今世でも…。
前線の戦いには向かないスキル持ちでした。
辺境伯だからね、女でも剣は習うのですよ。
うちのね、家訓は全員攻撃、全員守備!
女子供関係ない、全員で頑張るぞー!!
的なノリなんですけどね。
私、剣のセンスどころか運動音痴だった。
剣を振ったら自分から出血。
避けると転んで捻挫。
稽古をやればやるほど、私がボロボロになっていった。
それなら、攻撃魔法は…ってなったけど。
こちらも、適正ゼロだった。
幼児でも出来ると言われるロウソクに火を灯す事さえ出来なかったよ…。
かわりに…治癒と浄化が最高レベル。
「この能力、代々語り継がれている聖女様の化身のようです。」
と、適性を見てくれた神官様。
…ソウデスネ、ワタシ、聖女やってましたカラネ。
聖女の能力は、嫌いじゃないのよ。
でもね、やっぱり、私はどうせなら、前線で戦って、守りたい。
傷ついた人を癒すのは大事だけど。
傷ついてからじゃなくて、傷付く前に守りたい。
穢れたところを浄化できるのは、大事だけど。
穢れる前に食い止めたい。
その能力。
どうして、私は貰えないんだろう…。
神様は、いつも、意地悪ね。
※※※※※
15歳になりました!
私はやれば出来る子!
やりましたよ!
私、補助魔法極めました!!
攻撃系じゃなければちょっとは適性あったのです。
まぁ、前世でも使ってたから、覚えるのは楽だった。
運動音痴だけど、身体強化と攻撃力プラスをつければ、ウサギ位は1人で狩れるようになりました!!
剣使うのはお願いだからやめてって、家族に泣かれたから。
幼児用のちっちゃい弓を使ってます!
弓って言っても、当たらないからウサギの周りをバンバン撃って、罠に追い詰める方法だけど…。
それでも、良いんだ。1人で狩が出来たってことが、大事。
今日も今日とて、元気に森へ。
ウサギは美味しいからねー。
家族にも、使用人に喜ばれるし。
鼻歌歌いながら、森へ入ると。
なんかいつもと違う空気。
肌がピリピリする。
この感覚、前世の私が、知ってる…。
神経を張り巡らせて。
この空気の発生源を探る。
…いた。
狼の魔物だ。
これらは、群れる。
案の定、7匹もいた。
そして、その狼の魔物の前に、男の子が3人。
頑張って応戦しているけど。
あれじゃ、無理ね。
私は狼の魔物に気付かれないように、そっと彼らの後ろへ近づき。
彼らに結界を張った。
長くは持たないけど、応急処置と話くらいはできるはず。
まずは、体格は良いのに、無駄としか言いようのない筋肉をつけている筋肉バカに回復と説教だ!
「そこの筋肉バカ、聞こえます?そう、貴方ですよ。その体についている見掛け倒しの筋肉と一緒で動きに無駄が多すぎますわ。」
そういいながら、回復魔法と、身体強化、物理攻撃プラスの魔法をかける。
これで、傷を庇いながらのヘナチョコ剣じゃ無くなるはず。
突然痛みがひいたのと、身体中に力が湧き上がったのをキョトンとしてみている、筋肉バカ。
「いいから、右半分。今なら3匹くらい、一撃で行けるはずよ。さあ、頑張って。」
そして、次は魔法使いか。
私よりちっこいくせに、攻撃魔法が出来るなんて、ズルい。
しかも使えるくせに、無駄撃ちしてるから、MPなくなってるし…。ドジっ子か!!
「ほら、私の魔力をわけるから。たまったら、よく狙いなさい。あぁ、広げちゃダメよ。森が燃えちゃう。ほら、魔物だけ燃えるように…イメージして。そう、やつらだけよ。イメージすれば、目を瞑ってだって、できるはず。」
手を握り、私の魔力を流す。そして魔物を指差して。
一緒にイメージすれば、ほらね。
残り3匹、消し炭になるわ。
そして、最後の1人。
真ん中で、1番大きな狼の魔物と戦っていた金色の髪の男の子。
服装からして、貴族の中でも爵位が高そうな坊ちゃんだ。
頑張って応戦してるけど、戦って欲しいのは、それじゃない。
結界が壊れないうちに、教えないと。
「聞いて。貴方が狙うのはそれじゃないの。目の前の魔物は雑魚。それは、筋肉バカに任せなさい。」
「…君は?いや、それより、何故女の子がここに?危ないから逃げて!」
「説明してる場合じゃないの、いいからこれを持って。」
そう言って、彼の持っていた剣を奪い、私が持っていた、幼児用の弓を渡した。
「ちっちゃいけど、大丈夫。精霊の加護がかかってるから。構えたら、私の指差す方を見て。って、筋肉!!さっさと、デカイの片付けて!邪魔!!」
彼が応戦していた魔物がウザかったので、筋肉に頼んだ。言い方ちょっと、キツイけど気にしないよね?
「ほら、この方角。神経を張り巡らせて。そしたら、感じる。もっとデカイのが…くる。」
「!!!」
「感じた?じゃそのまま構えててね。これから貴方と弓に補助魔法をかけるから。」
身体強化、照準補正、攻撃力プラス、感覚プラス…
「今よ、撃って」
私が指差す方角に、正確に、真っ直ぐに。
矢は飛んで行った…。
そして、見事に仕留めた。
狼の魔物の群れのボス。
ボスを一撃で仕留めるなんてさすがね。
さすが私の補助魔法。
自画自賛。
だって、この人たち、ボーゼンとしていて、褒めてくれない。
そりゃ、突然現れて、ちょっと暴言発したけど。
主に筋肉に。
でも、やっぱり。
ズルい、自分に同じ魔法かけても、私は剣をふれないし。
攻撃魔法は、使えないし。
私の弓なのに…そんなに、飛ばすこと、出来ないし。
依然ボーゼンとしている、彼らに向かって、苦笑して。
そのまま、私は森を去った。
あーあ、今日は、収穫無しか。
ウサギを狩り損ねてガッカリしていた私は。
この日限りだと思っていた、彼らとまた一年後に。
再会するとは、思わなかった。




