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エピローグ

●エピローグ(前編)


「どう?新専務。就任式は緊張した?」

「その呼ばれ方、慣れないと恥ずかしいもんですね。」

「もっと堂々としていいのよ。あなたは実力で抜擢されたんだから。」

「はい。」


俺は初夏のいる社長室に呼ばれていた。室内には二人だけ。秘書らしき人間もいない。

当然ながら初夏は社長の椅子に足を組んでどっかり座っている。

俺はその前にあるデスク越しに直立して彼女に対応していた。

「なかなかしっかりした挨拶だったわよ。」

「ありがとうございます。あまりオドオドしていては部下にナメられると思いましで。」

「だから毅然とした態度で臨んだわけね。」

「はい。見せ掛けだけでもw」

「さすがね。アタシの社長就任あいさつの方がすごく緊張したわ。」

「いえ、初夏さんのあいさつこそ堂々としてましたよ。」

「あのね・・悪いけど会社内ではアタシを社長って呼んでね。(^_^;)」 

「ハッ(゜〇゜;)!こ、これは失礼しました。申し訳ありません。(⌒-⌒;ヒヤリ」

「まぁ、まだお互い慣れないんだから仕方ないんだけどね。」


 初夏は自分の椅子から立ち上がり、そばにある来客用のロングソファに移動した。

「牛来専務もこっち来てくつろいで。疲れたでしょう?」

「え?社長のとなりにですか?」

「(ノ _ _)ノコケッ!!アタシの正面によっ!そんなボケかまさなくていいし。」

「アハハ(´▽`;)ゝ そうですよね。どうもすいません。」

 別にボケたわけではなかった。俺にとっては就任式が終わっても、この社長室に呼ばれている現在まで緊張が継続してるのだ。

その現れが今の行動に出てしまったにすぎない。

 

 俺はテーブルを挟んで初夏と差し向かえで座った。

 初夏が待ち構えたように話し出した。

「で、牛来専務はまず、何から手をつけるのかしら?」

「あ、はい。先ほど我が社のデータを見させて頂いたところ、まずは成績不振な外販部のたて直しですね。」

「やっぱりね。そこにすぐ目が行くなんてさすが牛来専務ね。あとは何かある?」

「それと・・言いにくいんですが、派閥の統一ですね。」

「田川本部長と弟の元秋のことでしょう?言いにくい割にはあっさり言ったわねw」

「ハハ;^_^A すいません。」

「いいのよ別に。アタシも信頼できる人をそばに置いて本音の意見を聞きたいんだから。」

「では僕を信頼して頂けると?」

「だから島から戻したのよ。あなたは島での功績も素晴らしかったしね。」

「感謝します。」

「派閥については心配いらないわ。田川本部長はもうすぐ中国支店に転勤させるから。」

「(・_・)エッ?これからですか?」

「引継ぎ作業が遅れててね。彼には通達してるから問題ないわ。アタシ、人を見てコロコロ態度が変わる人って大嫌いなの。さっさと行って欲しいわ。」

「(⌒-⌒;そ、そうですね。」


 初夏は一息ため息をついた。

「それから・・父の源次郎のこと許してね。普段は冷静な父だったのに感情に流されてあなたを5年間も島に追いやってしまって。」

「いえ、恨みなんて最初から全くありませんでしたよ。逆に僕自身の成長にもなりましたし、自分を見つめ直す時間にもなりました。これで良かったと思っています。」

「そんなこと言えるなんてすごい・・でもこれでアタシも安心したわ。ありがとう。」

「いえ。。」

「それにしても・・5年前に雪乃と結婚する選択もしなかったのには驚いたわよ。」

「あぁ・・あの時はすいません。。でも二人とも納得しての結論だったので。。」

「・・・そうね。それはそうなんだけど。。」

 このとき初夏の表情が一瞬だけ曇ったように感じた。

「雪乃は元気でやってるようですか?」

「・・・ええ、まあね。。」

「??連絡は取り合っているんでしょう?」

「ええ。雪乃が妹だとわかってからはね。アタシの実の父にも会えたし。」

「彼女は幸せ・・ですか?」

 初夏はすぐには返事をせずにじっと俺を見つめた。

 数秒の間のあと、初夏が言い始める。

「牛来さん、あなたは今現在、雪乃のことをどう思ってるの?」

 多分この質問はされると予想はしていた。実姉としても、または時空異動経験者としても当然気になるところだろう。

 

 俺の気持ちは決まっていた。仕事への意気込みももちろんだが、雪乃に対する気持ちもそうだ。問題は今までずっと彼女と連絡もせずに途絶えた関係であること。それに5年のブランクも大きい。その間、彼女ににどんなことがあったかわからないが、俺にはそのことも踏まえた上での心構えがあった。

「僕は・・雪乃を嫌いになって別れたわけではありません。彼女への思いはこの5年、ずっと抱いていました。」

「・・・・」

「以前の僕は目の前の状況に流される優柔不断な男でした。だからあのまま結婚したのでは雪乃に申し訳なかった。」

「・・・・」

「だから彼女に対して、どんなことがあっても揺るがない真の気持ちでいられるようになるまで会わないと誓ったんです。」

「で、今はどうなの?」

「そして今・・僕はその気持ちのレベルに達しました。何があっても動じない自信があります。」

「・・その気持ちはわかったわ。でもそれはあなただけの気持ちよね?雪乃がもしあなたに気持ちがなかったら?それにこの5年の間に雪乃が他の人と結婚してしまう可能性考えなかったの?」

「雪乃はもう・・結婚してるんですか?」

「たとえ話をしてるのよ。あなたの心理が知りたいの。」

「もちろん考えました。5年は長いですからね。その結果、雪乃が別な幸せをつかんでいたとしたら、それはそれで仕方がないと思っていました。彼女の幸せを邪魔するつもりもありませんし、それが僕の運なんだと思うだけです。」

「そう。。わかったわ。じゃあこれから具体的にどうするの?」

「まずは雪乃に直接会いに行きますよ。」

「ちょっと待って!えっと・・その前に先に電話で話してくれない?」

「(・_・)エッ......?」

「雪乃に会いに行っても留守かもしれないでしょ。」

「まぁそうですけど、あとでもいいですよ。」

「ダメ!今アタシの見てる前で話して。」

 そう言うと初夏は自分の携帯を取り出して雪乃にかけたようだった。


「あ、雪乃、今どこ?自宅?そう・・なら良かった。今ね、ここに牛来さんがいるの。話したいって。。うん・・・そのことはまだ何も言ってない。じゃ彼に変わるね。」

そう言って初夏は俺に携帯を手渡した。

「お久しぶり雪乃。」

「あ、ホントにヨシ君の声だ。なつかしい。お久しぶり。」

「元気だったか?」

「うん。。まぁまぁ。」

「今もピアノ教えてるのか?」

「・・いいえ、今はもう。。」

「そっか。何か事情があるなら会って話を聞くよ。」

「え?」

「会えない事情でもあるのか?」

「・・・その。。」

 何か最悪な予感がした。俺の思っていることが的中しているのだろうか?

 こんなこと聞きたくはないが、聞かないと先が進まない。

 俺は一呼吸して彼女に質問してみた。

「雪乃・・お前今、幸せなのか?」

「・・うん。。アタシ今幸せだよ。」

 返事に一瞬、間があったようにも感じたが、俺に対して言いにくかったのれもしれない。

「そっか。。幸せになってたのか。。そりゃそうだよな。。」

「。。。」

「雪乃に会いに行こうと思ってたんだけど、迷惑かけるな。」

「ヨシ君・・」

 こういう事情ではこれ以上の話も進まない。

「じゃあ俺はこれで。。雪乃との思い出は一生大切に胸にしまって封印するよ。俺はこれから熊野初夏社長の下でバリバリ働くからさ。雪乃もピアノ教室また始めるときがあったら頑張れよ!」

「うん。。」

 こうして俺は電話を切った。まさに俺が撃沈した瞬間だった。


 それを見ていた初夏が奇妙な面持ちで俺に問いかける。

「雪乃が一体何て言ってたの?」

「社長、雪乃はやっぱり結婚してたんですね。それで僕が彼女の口から直接確かめられるように電話して頂いたんですね。」

「え?雪乃がそんなこと言ったの?」

「今は幸せだって言ってましたよ。」

「雪乃があなたにそんなこと言ったの?結婚してるって?」

「幸せに暮らしてるってことですから、てっきりそうだと思いましたが・・?」

「バカね!あなたも雪乃も!」

「???」

「一緒に来なさい!早く!」

 そう言うと初夏は素早くソファから立ち上がり、出かける支度を始めた。

「どこ行くんですか?」と俺が尋ねる。

「雪乃のところよ。」

「でも・・」

「でももヘチマもないでしょ!」

「ヘチマとは言ってませんが・・(^_^;)」


 初夏が先に社長室から出ようとするのを俺が後ろから追う形だった。

急に初夏が俺に振り返って言う。

「牛来さん、さっき言ったことはウソじゃないわよね?」

「えっ?」

「雪乃に対する気持ちのことよ。」

「ええ。でもそれは・・」

「雪乃は結婚なんてしてないわ。あなたの早合点よ。」

「('◇'*エェッ!? じゃあなんで雪乃は。。」

「もう一度聞くわ。雪乃を幸せにする自信はあるのね?」

 俺はためらず、はっきりと返事をした。

「はいっ!あります!」

「・・・その自信に満ちた言葉が聞けて良かった。さ、行きましょ!」

「あの、説明は。。?」

「来りゃわかるわよ。」

「はぁ・・でもまだ勤務時間ですが・・」

「社長の特権よ。いつもこんなことしてるわけじゃないからいいでしょ!」

「そ、そうですね。。( ̄ー ̄; ヒヤリ」

 

 こうして俺と初夏は雪乃のいる自宅へと向かうことになった。

 初夏の苛立ちは一体何なのか?

 雪乃が俺に幸せだと言った意味はどういうことなのだろうか?



   ●エピローグ(後編)


 玄関に出てきたのは雪乃の父・瀬尾哲五郎だった。

「おう、初夏か。社長就任で忙しいのにどうかしたか?」

「お父さん、雪乃は部屋?」

「あ、あぁ。。」

「雪乃に大事な用なの。お邪魔するね。」

「それはかまわんが・・こっちの男は・・ん?見覚えがあるな。」

「お久しぶりです。牛来義竜です。5年前、雪乃と付き合ってたときに何度かお邪魔しました。」

「あー、あの時の青二才かぁ!」

「そ、そう見えましたか?( ̄Д ̄;;」

「君は・・今の雪乃のことを知って来たのか?」

「えっ?」

 初夏がすかざず言葉を挟む。

「お父さん、まだ彼は何も知らないの。」

「あぁ、そうだったのか。。じゃあ、まぁその・・雪乃に知らせて来るか。」

「ううん。このまま彼と直接部屋に行くから。」

「そうか。初夏がそう言うなら・・まぁ会ってやってくれ。」

「は、はぁ。。」


 明らかに雪乃の父の口調には元気がなかったし、俺に言いづらいことがあるようだ。

それにかなりの疲労感が表情に出ているように思える。

 かつてはおどけたキャラと天然ボケ的な発言が面白い人だったのにまるで人が変わったようだ。


 部屋に行くまでの短い廊下に手すりがついている。

そういえば玄関の端にもゆるやかなスロープが取り付けられていた。


  ・・・・まさか・・・・


「じゃあワシは自分の部屋で少し休むから3人で話しなさい。」

 そう言って瀬尾哲五郎はこの場を去った。

「雪乃、入るわよ。」初夏が部屋のドア越しに言う。

「どうぞ。。」中から弱弱しい声で返事がした。雪乃の声だ。

そして俺が部屋に入るなり見た雪乃は、そのまさかの通りの姿だった。


  車椅子。。。


「初夏姉さんいらっしゃい。そしてヨシ君・・ご無沙汰です。」

雪乃は俺の目を見ずにややうつむき加減で微笑んだ。

でもそれは明らかに無理して作った微笑みにしか見えなかった。

「ヨシ君にこんな姿見せたくなかったんだけど。。」

ここで俺が返答に間をあけたら雪乃は余計に悲観する。

だからすぐ様言葉を返す。

「何言ってんだよ。そんなの関係ない。雪乃に会えて本当に嬉しいと思ってるだけだ。」

「でも・・恥ずかしいよ。。」

「そんなのいすれ治るだろう?リハビリはしてるのか?」

「。。。」

俺の問いかけに返事はなく、代わりに初夏が代返した。

「雪乃は・・下半身不随なの。。去年交通事故に遭って。。」

「そうだったのか。。で、でもリハビリは続けないと。。」

「牛来さん、口では簡単に言うけどね、雪乃の立場になってみて。ショックの方が大きいわ。」

「そうでしょうけど。。。」

「ヨシ君、もういいの。アタシが悪かったの。横断歩道を走って飛び出したのがいけなかったんだから。」

「雪乃、過去の話はもういい。これから先の幸せを考えよう。」

「アタシに幸せがあるはずないもん。。」

「さっきの電話で俺に幸せだって言ってたじゃないか?あれがウソだったとは思えなかったぞ!」

「あれは・・ヨシ君の声が聞けたから・・あの瞬間が幸せだと思ったから。。」

「!!!」

「ヨシ君、アタシの顔をよく見て。。」

「じゃあもう少し顔あげろよ。」

 雪乃は一瞬ためらいはしたが、ゆっくりうつむき加減の顔を正面に起こした。


    ん??俺と目線が合わない・・・


「わかったでしょ?ヨシ君。アタシ・・目も弱視になってしまったの。。」

「でも全然見えないわけじゃないだろ?」

「今はね・・でもいずれ失明するみたい。。」

「そんなことって。。」

「だからもういいの。ヨシ君アタシのことはほっといて、もっと素敵な彼女見つけて。」

 初夏が割って会話に入る。

「雪乃、ホントにそれでいいの?それがあなたの望みじゃないでしょ?」

「初夏姉さん、アタシは人に迷惑かけてばっかり。今もお父ちゃんがそばでヘルプしてくれないと何もできない。そのお父ちゃんでさえ、アタシの介護でぎっくり腰になったり大変な思いしてるのに、もうこれ以上、他の人に迷惑かけられないよ。アタシなんか家でひっそりと一生を終わった方がいいのよ!」

「雪乃、アタシはね、あなたにそんな思いをさせるつもりで牛来さんを連れて来たわけじゃないの。言ってる意味わかるでしょ?」

「でも・・でもヨシ君だって今のアタシを見てはっきりわかったはずだわ。アタシは身体障害者!歩けないし目もろくに見えない廃人同様。。街で一緒に歩けないしごはんも作ってあげれない。人にお世話になることしかできないの!人に尽くしてあげることがもうできないのよ!仮にそんなアタシと一緒にいたって何が楽しいの?疲れるだけだわ。だからもう・・もう・・ヨシ君とは永遠に会わない方がいいのよ!」

 雪乃の心の傷は相当深いようだ。無理もない。同じ立場になったら誰でもそうだと思う。

 だが今の俺には不思議なほど迷いがなかった。この5年間、どんなことがあっても雪乃に対する揺るぎない気持ちを培ってきたつもりだ。

たとえこんな状況であってもだ。


「雪乃、言いたいことはそれだけか?」

「???」

「もう言い残すことはないか?なかったら次は俺がしゃべる番だ。」

「うん。。いいよ。。」

「よしわかった。じゃあ、まわりくどいことは後回しにして結論から言おう。」

「。。。」

「雪乃、俺と結婚しよう。」

「えっ・・?」

「お前はお父さんに負担をかけ過ぎている。失礼だがお父さんはもう年だ。だからぎっくり腰にもなる。俺にその負担を譲ってくれないか?もちろん俺は負担だなんて思わない。」

「そんなこと・・・できないよ。。ヨシ君にまでそんな。。」

「俺は平気だ。」

「同情はいいのヨシ君。。身障者と向き合うには相当な覚悟がいるのよ!最初は我慢できるかもしれないけど、月日が経てば絶対心が変わるものよ。必ず重荷になるものなの。」

「雪乃、これは同情なんかじゃない。ずっと前からお前が好きだった。それは今でも全く変わらない。俺のわがままで5年間のブランクが空いたのは本当にすまないと思ってる。」

「・・・・・」

「そう考えればお前の交通事故も俺に責任がある。」

「そんなことないよ。。」

「いやある!俺が優柔不断でなかったら、とっくの5年前に雪乃と結婚しているはずだ!でもそれができなかった。。そしてお前は事故に遭った。。俺の責任に他ならない。」

「そんな責任背負うことないよ。責任はアタシ。最初に次元をいじったのはアタシなんだから。それでもヨシ君が責任を感じてるんなら、許すからヨシ君は自由になって。」

「そうじゃない。俺は雪乃と一緒にいたいんだ。」

「 そんなのウソ。誰が好き好んで身障者と結婚したがるのよ!一時的な同情と哀れみはやめて!」


「雪乃!それは違うわ。」

今まで成り行きを観察していた初夏が口を出した。

「彼は本気で言ってるわ。一時的な同情でも何でもない。さっきこの部屋で雪乃を最初に見た瞬間から彼は全く動じなかった。そんな体のあなたを見てもね。なぜだがわかる?」

「・・・・」

「あなたがどんな状況であろうと彼にはとっくに決心はできていたの。この5年間、島でめざましい成績を上げたのは雪乃のことを思うあまりによ。あなたに島の生活で苦労させたくなくて必死で単身頑張って、島帰りのチャンスを決して諦めずに願っていた。そうよね?」

「社長・・僕の心をお見通しなんですね。。(⌒-⌒;」

「今は初夏って呼んでいいのよ。プライベートなんだから。」

「あ、はい(^_^;)」

「だからアタシは就任式の後、彼にその覚悟を2度聞いて決意の固さを確かめた。これなら雪乃の事故のことは言わなくてもいいと思った。これで迷いが生じるようならまた島に追い返す覚悟で連れて来たのよ。」

「アハハ・・それは手厳しいな(^□^;A」

「雪乃、もっと気を楽になさい。あなたにはこんなに真剣に思ってくれる人がいるのよ。最高に幸せなことじゃない?」

 うつむき加減の雪乃の目に涙が浮かんでいた。

 俺は彼女を今、心からいとおしいと思った。こんな体になっても人を気遣うなんて。。


「雪乃、これから俺はお前の足になるよ。そして目にもなる。俺とお前は一心同体なんだよ。」

「ヨシ君・・ごめんなさい。。ごめんなさい(・T_T)うぅぅ・・」

「あやまるなって!お前といることが俺の幸せでもあるんだよ。」

「ヨシ君。。大好き。。もう離れたくないよ〜。(T○T)えぇぇぇぇぇん!!」

「やっと正直になったわね。雪乃ったら。」

 そう言って初夏は部屋から出て行った。

さすが初夏。俺たちに二人だけの時間を与えてくれる粋な計らいだ。


 俺は車椅子に座っている雪乃の肩をそっと抱いて唇に軽いキスをした。

「もう一度言うよ。雪乃・・結婚しよう。」

「はい。。」

「二人で長生きしような。」

「うん。。」

「それと・・悪いけど俺は雪乃より少しだけ長く生きるからな。」

「??」

「お前をひとり残して先には逝けない。辛い思いは絶対させないよ。俺がお前をちゃんと見届けてからさ。」

「ヨシ君。。」

 今、俺たちはこの至福のひとときを心から噛み締めていた。。



 雪乃の部屋から出ると、初夏と父親が廊下で笑いながら話していた。

「どうしたんですか?」と俺が問いかける。

「あのね、例の力を使った後は必ずファイナライズしなきゃなんないでしょ?」

「ええ。そう聞きましたけど。。それが何か?」

「それなのに別な次元の野望を持ったアタシはなぜ、この世界に戻って来たときにすぐファイナライズで時空道を閉じなかったのか?ってこと。」

「あぁ・・そういえばそうですね。」

「それをされたらこのアタシはこの世界に来れなかったはずでしょ?」

「たしかにそうですけど・・なんで笑ってるんですか?」

「お父さんと勝手に結論つけちゃったのよw」

「(・。・) ほー。どんなふうに?」

「ワシもバカじゃない。次元の違う世界にいるワシも悪いことに力を使おうとしている人間には肝心なことは教えないはずだ。」

「まぁ・・そうですよね。そう思うしかありませんよね。」

「いいえ、まだ別な解釈があるのよ。」

「??それは何ですか?」

「ワシが教えるのを忘れとっただけかもしれん。よくやるんだ。」

「(ノ _ _)ノコケッ!!・・・でも充分あり得ますよね(^□^;A」

「でしょ?だから笑ってたのw」

「それで済んだから良かったですよねw」

「もうアタシもこの力は封印するわ。人の歴史を狂わしてしまうもの。」

「そう・・ですよね。。」

「ていうかもう2回使っちゃったしね。」

「Σ('◇'*エェッ!?いつですか?」

「1年前くらいかな。大きな商談の失敗をやり直したの。」

「そ、そうだったんですか。。」

「うん。でも運悪く何も知らない義父がアタシの力を使うところを目撃しちゃってね。」

「・・・じゃあもしや。。」

「そう、父が亡くなった原因は急性骨髄性白血病だったの。。」

「そんな・・・時空異動と関係がありそうですね。。」

「いいのもう。全て終わったことだから。。それよりも。。」

「それよりも?」

「決まってるじゃない。次はあなたたちのイベントをしなくちゃね!」



  その年が明けて2月16日。

  俺と雪乃の結婚式当日。時は披露宴の真っ最中。。。


「牛来義竜君は昔からスケベでロリコンなので、雪乃ゆきのちゃんは彼にもってこいのお嫁さんだと思います。」

『・・・( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)あのバカ、友人代表にするんじゃなかった。。』

 中学時代からの腐れ縁でもある悪友の前迫が、案の定ひとこと多いコメントを言い放った。

あれほど余計なことは言うなと念を押したのにあの野郎。。


 時代は新しい変革を遂げながらも、不規則なローテーションの元に流れてゆく。。

                      (完)


 長いお話を最後までお読みいただいてありがとうございました。

 できればほんの一言でも感想をいただけたら嬉しく思います。

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