11話 領地が豊かになった途端、隣領の強欲な大貴族が「そのミスリル鉱山は我が家のものだ」と難癖をつけてきたが、腐った騎士団長が一瞬で更迭されたニュースが届いた瞬間の顔が傑作だった
腐った騎士団長を更迭し、規律を正した『辺境駐留騎士団』が街の治安を完全に掌握した数日後のことだ。
領内の復興がいよいよ完成に近づき、領民たちが「レイ様こそが真の救世主だ!」と我が事のように歓喜に沸く中、領主館の謁見の間に、連絡もなしに傲慢な足音を響かせて入ってきた男がいた。
この領地と隣接する、国内最大級の領地を持つ権力者――バルトフェルト侯爵だった。
「ハッ! 噂を聞けば、王都を追われた荷物持ちのガキが運よく辺境伯になったと聞いたが、随分と生意気な真真真真真をしてくれているようだな。おい若造、お前がドワーフどもを脅して掘り出させたあの『ミスリル鉱山』だがな……あそこは元々、我が侯爵家の領土の一部だ。本日をもって、鉱山の全権利を我が家に引き渡してもらおうか」
侯爵は豪華な毛皮の外套をなびかせ、俺を見下して下品に鼻で笑った。
どうやら、不毛だった鉱山がミスリルの大豊作によって莫大な富を生み出し始めたのを見て、強欲な本性を剥き出しにして横取りにやってきたらしい。
俺の『SSS級・絶対支配』の権能が、目の前の侯爵が持ってきた「領土の境界線を示す古い地図」に仕込まれた偽装の不具合(明らかな改ざんの跡)を瞬時にすべて検知する。
「偽物の地図で領土をだまし取ろうとは、大貴族のやることは汚いな。断る」
「んだとテメェ……! 侯爵である私に刃向かうか! 私のバックには王都の防衛騎士団の一部もついているんだぞ! 生意気なガキは今すぐここで――」
その時、謁見の間の重厚な扉がガシャーン!!!と勢いよく開き、侯爵の直属の執事が、髪を振り乱して顔面を蒼白にしながら転がり込んできた。
「こ、侯爵様! 止めてください! 今すぐその御方から離れてくださいッ!!」
「あぁ!? うるせえ、今この無礼なガキを叩き潰してやるところだ!」
「違うんです! たった今、この領地の騎士団から緊急の伝報が入りました! あの凶暴なバルトス騎士団長が、昨日、このレイ様の指先一つで完全に籍を剥奪され、横領の罪で地下牢へブチ込まれました! さらに、レイ様の放った一瞥だけで騎士団全体の武装が一瞬で木っ端微塵に粉砕され、完全に服従させられたのです!!」
「……は? バルトスが更迭……? 騎士団が、一瞬で……?」
バルトフェルト侯爵の顔から、一瞬にして血の気が引いた。
バルトスといえば、荒くれ者ぞろいの辺境騎士団を力でねじ伏せていた男だ。さらに侯爵は、王都で数千のゴブリンを消滅させ、街道でボルドー男爵を潰し、隣国の将軍を敗走させた化け物の正体がいま目の前にいる少年であることの恐怖にようやく直面し、全身から冷や汗を滝のように流し始めた。
「鉱山を横取りする、だったか。じゃあ俺のルールを教えてやる」
俺が静かに右手を前に突き出し、パチンと指先を一つ鳴らした。
ドンッッッッッ!!!!
『SSS級・絶対支配』の波動が室内を駆け抜け、侯爵が懐に持っていた偽造地図と、連れてきた護衛たちの高級な鎧が一瞬にしてサラサラとした灰へと変わって床に崩れ落ちた。あまりの絶対的なプレッシャーに、侯爵は豪華な外套を泥まみれにしながら、その場に無様に膝を突いてガタガタと震え出す。
「命令する。バルトフェルト侯爵、お前が裏で画策してきた不法占拠と脱税の罪、すべて国王陛下に報告する。お前の領地の一半分を、我が領の賠償金として没収する。逆らうなら、お前の家系ごとこの国から消去してやる」
「ひ、ひぃぃぃっ! 従います! 領地でも財産でも何でも差し上げます! だから命だけは、命だけはお助けくださいレイ様ぁーっ!!」
かつての傲慢な態度など微塵もなく、床に何度も額を打ち付けて命乞いをする大貴族。
俺はその醜態を一瞥すら動じず、エルザと共に謁見の間を後にした。
「ふふ、レイ様。これで周囲の羽虫どもも、完全に貴方様の恐ろしさを骨の髄まで理解したでしょうね」
エルザが至福の表情で俺の腕に強く抱きつき、その熱く重い愛の瞳で俺を見つめてくる。
王都の元仲間を潰し、悪徳貴族を潰し、悪徳商会を潰し、隣国の将軍を潰し、傲慢な職人を潰し、腐った騎士団長を潰し、今度は強欲な大貴族を完璧にひれ伏させた。
俺を無能と見くびった世界が、俺の圧倒的な力の前にひざまずいていく悲鳴を心地よいBGMにしながら、俺とエルザの、この『エデン(絶対支配の領域)』は、どこまでも、どこまでも拡大していくのだった。




