1話 無能のゴミは我が高貴なパーティーにはいらん。今すぐ出ていけ!」
王都の一等地にある高級酒場。金色の鎧をギラギラと光らせた勇者アランが、俺に向かって冷酷に言い放った。その横では、幼馴染だったはずの魔術師の女・ミリーが、ゴミを見るような蔑みの目で俺を睨みつけている。
「アランの言う通りよ。戦闘スキルもないただの荷物持ちのくせに、今まで私たちの利益を泥棒してたのよね。幼馴染の情で置いておいてあげたけど、もう限界。恥を知りなさい」
俺は何も言わなかった。
彼らの装備を格安で調達し、ダンジョンの安全なルートを計算し、夜通し武器のメンテナンスをしていたのが誰なのか、この馬鹿どもは気づいてもいない。俺が毎日かけていた「裏方バフ(能力底上げ)」の恩恵を、自分たちの実力だと勘違いしているのだ。
「……分かった。今までありがとう」
俺は静かにギルドの入った酒場を後にした。
だが、彼らは知らなかった。
俺がパーティーという「制約」から外れた瞬間、俺の中に眠っていた隠しスキルが、世界のすべてを意のままに操る神の権能『SSS級・絶対支配』へと完全覚醒したことを。
――ザァァ、と冷たい雨が降り始めた。
王都の薄暗い路地裏を歩いていると、一人の美しい少女が壁に背を預け、激しく息を切らしてうずくまっていた。
その神々しい容姿には見覚えがある。この国の最高権力者にして、世界最強の魔導師でもある『聖女・エルザ』だ。
彼女は今、謎の呪いによって魔力を暴走させ、誰にも助けを求められずに消えかけていた。このままだと、あと数分で彼女の美しい身体は内側から弾け飛ぶ。
俺は『絶対支配』の力を発動し、彼女の白く震える肩にそっと触れた。
(命令する。暴走を止め、俺に服従せよ)
「……え?」
一瞬だった。
エルザの身体を苛んでいたドス黒い呪いの霧が完全に消滅し、彼女は大きく目を見開いた。
神の権能によって、彼女の心と身体は、俺の存在なしでは1秒も耐えられないほどの「絶対的な快感と全肯定の依存」で上書きされている。
視界を取り戻した聖女は、じわりと瞳を潤ませ、隠しきれない圧倒的な憧憬の目で俺を見上げた。
「あなたが……私を救ってくれたのですか……? ああ、身体が、信じられないほど熱い……。お願いです、私をあなたの、生涯の従者として側に置いてください……!」
世界最強の聖女が、俺の足元で、完全にトロトロに蕩けた顔で跪き、俺を崇拝していた。
一方その頃。
俺という「最強の裏方バフ」を失った勇者アランたちは、いつも通りに挑んだはずの、街の近くのただの雑魚ゴブリン相手に武器をへし折られ、一人残らず地面を這いつくばって絶望していた。
「ひ、引き返すぞ! おいミリー、魔法で障壁を張れ!」
「無理よ! 魔力の計算が全然合わないわ! なんで!? いつもはもっとスムーズに発動できたのに!」
彼らはまだ気づいていない。
自分たちの栄光が、すべて俺のサポートによって作られていたハリボテだったということに。
そして、次回、泣いて許しを請うてきても、俺の隣にはもう、彼らなど足元にも及ばない最強の聖女が微笑んでいるということに。




