プロローグ
――ああ、そっか。
あたしは、負けたのね。
……みんなを最後まで守れなかった。
もう一度やり直せるなら、次こそは――。
……そのまま、意識はゆっくりと沈んでいった。
…………
……
…
。
『なんとか魂だけは保護できたわ。……これぐらいしかできない私を許して、シャルロット』
…………
……
…
。
――またこの夢か……。
物心ついた頃から、繰り返し見ている夢だ。
荒れ果てた荒野を駆け回り、悪魔と呼ばれる存在と戦っていた。
身の丈ほどの剣を振り回し、敵をバッタバッタと倒していた。
それは夢のはずなのに、匂いや手への感触も生々しかった。
目を覚ますと、見たものを大概忘れてるんだが、頬にはいつも涙の跡があったんだ。
そして覚えていることは、『悪魔』と『身の丈ほどの大剣』、そして――。
俺が『シャルロット』と呼ばれていたことだ。
…………
……
…
《生体認証。――完了》
暗闇の中、頭に無機質なシステム音声が流れる。
《登録者【ホシカワ・ヒロキ】――認証》
《ゲーム選択【ASO】が選択されました》
《新規アバターの作成へ移ります。あなたの名前を教えてください》
「シャルロット、っと……」
《あなたの身体データを元にアバターを生成します》
《次はキャラクターの髪色、瞳の設定をしてください』
「んなもん意味ないんだから、パスだパス」
《アバターの生成が完了しました。ゲームを起動します。急な発光に、ご注意ください》
次の瞬間、まぶたの裏で光が弾け、視界がまばゆい白に塗り替わる。
この瞬間、俺の運命が再び動き出した。
そして、あの夢を見ることはなくなった。




