第9話:檻の中の覚醒
赤い光の檻に閉じ込められ、全身が焼けるような痛みに襲われる。
力を抑え込まれ、呼吸すらまともにできない。
「……っ、ぐ……!」
視界の端で、管理局の隊員たちが冷徹に端末を操作している。
まるで人間ではなく、ただの“試料”を扱うように。
「対象、拘束完了。搬送準備に入れ」
「待て……俺は……人間だ……!」
叫んでも、誰一人として耳を貸さなかった。
その瞬間、頭の奥で低く笑う声が響いた。
《見ただろう? 人間はお前を受け入れない》
「黙れ……!」
《抗うな。檻を破る力なら、もうお前の中にある》
胸の奥に熱が集まり、全身を駆け巡る。
心臓が激しく脈打ち、血が沸き立つ。
爪が再び伸び、檻を引き裂こうと突き上げる。
「……やめろ……俺は……!」
《解き放て。そうすれば、奴らを塵にできる》
耳を塞いでも、声は消えない。
いや、それどころか、脳に直接焼き付くように強まっていく。
「やめろおおおっ!!」
次の瞬間、全身から黒い波動が爆ぜた。
赤い檻がひび割れ、空気が震える。
管理局の隊員たちが驚愕の声を上げた。
「異常反応! 制御が……!」
「下がれ、暴走するぞ!」
だが、俺の意識もまた、揺らぎ始めていた。
視界が赤黒く染まり、思考が濁る。
人を斬り裂きたい衝動が、喉の奥でうごめいていた。
――違う。俺はそんなこと望んでいない。
「……俺は……人間だ……!」
必死に叫ぶ。
その声がどこまで届いたのか分からない。
ただ、檻が粉々に砕け散った瞬間、俺は完全に“解き放たれて”しまっていた。