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第10話:血の惨劇



砕け散った檻の残骸が、赤い火花を散らして消えていく。

俺の身体は黒い靄に包まれ、爪は刃のように伸びていた。

視界が赤黒く滲み、管理局の隊員たちの姿が獲物の影にしか見えない。


「……っ! 制御不能だ!」

「撃て――!」


光弾が飛ぶ。

だが、その瞬間にはもう、俺の身体は動いていた。

自分の意思ではない。

影の衝動に操られるように、刃を振るっていた。


――ズシャッ。


悲鳴が夜に響く。

血が飛び散り、地面に崩れ落ちる影。

俺はただ呆然と、その手を見つめていた。


「……俺が……やったのか……?」


《当然だ。これはお前の力だ》


頭の奥に響く声。

だが、それを否定したくて仕方なかった。


「違う……違うんだ! 俺は、殺すつもりなんて――!」


しかし、身体は止まらなかった。

影の笑い声に引きずられるように、次の標的へと向かってしまう。

叫んでも、抵抗しても、衝動が勝る。


「やめろ……! もうやめろおおおっ!」


最後の叫びと共に、視界が完全に赤黒く塗りつぶされた。


気づけば周囲は、静寂だけが支配していた。

血の匂いが濃く漂い、瓦礫と化した路地に、管理局の隊員たちの姿はなかった。


俺の手は、鮮血に濡れていた。


《どうだ? これが本当のお前だ》


「……俺は……化け物だ……」


その言葉が漏れた瞬間、胸の奥に冷たい穴が開いたように感じた。

人間としての境界線を、とうとう越えてしまったのだ。




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