第2話「最強バグ魔法、村を救う
「……あれが、《断罪の獣》か」
村の門の外、森の奥から現れたのは、かつてのレイドボス《断罪の獣》。
その巨体は、まるで山のようにそびえ立ち、赤い眼光がこちらを睨んでいる。
「創造主様、どうかお逃げください! あれは我々では太刀打ちできません!」
ミリアが必死に叫ぶが、俺は首を横に振った。
「逃げるわけにはいかない。俺がこの世界に来た意味があるとすれば、今ここで、この村を守ることだ」
そう言って、俺は右手を掲げた。
「《システム・オーバーライト》」
かつて、ゲーム内で運営が使用していた最強のバグ魔法。
本来、プレイヤーが使うことはできなかったが、なぜか今の俺には使用可能になっていた。
空間が歪み、光が集まり、巨大な魔法陣が出現する。
「目標:断罪の獣。対象:完全消去」
魔法陣から放たれた光が、《断罪の獣》を包み込む。
次の瞬間、獣の姿は跡形もなく消え去っていた。
「……終わった、のか?」
村人たちは呆然とその光景を見つめていたが、やがて歓声が上がる。
「創造主様が……!」「神が、我々を救ってくださった!」
ミリアも涙を流しながら俺に跪いた。
「ありがとうございます、創造主様……!」
俺は戸惑いながらも、彼女の手を取った。
「……俺は、ただ、できることをしただけだ」
だが、この世界では、それが「神の行い」として受け取られるらしい。