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領域畑に足りないもの



「ん、ん〜……どうなんだ? ……これ」


 どーも私です。

 部屋のベッドに寝転びながら、空中に浮かべたモニターを眺める。

 もちろん、宝石店に設置した監視カメラの映像だよ。


 今は昼間なので、モニターに映る店内はお客さんがチラホラと見える。しかし――


「人が多くいれば良いってもんじゃあないのかな?」


 と言うのも、『領域畑』の話だよ。

 領域畑の中に入った知的生命から感情を収穫する……それは分かるんだけどねぇ。

 宝石店に領域畑を設置したんだけど、『収穫』がそれほど振るわないんだ。


「うぅ〜ん。感情を収穫すること自体は出来てるっぽいんだけどなぁ……あまりにも量が少なすぎる」


 何と言うか……漏れ出てるカスを集めてるような……。


 なんだろコレ? 根本的に何か間違ってんのか?


「……オバケ姉ちゃん……何それ?」

「おん? あぁ、幼女ちゃん。お店にカメラ仕掛けたんだよ。みる?」


 どうやら浮かべていたモニターが気になったらしい幼女ちゃんが話しかけてきた。


「……おぉ」

「面白いっすか?」


「……興味深し……不思議……」


 どうやら監視カメラをいたく気に入った様子。

 いやいや、幼女ちゃんよぉ。キミもよく分からん能力持ってるクセに、私の能力がそんなに不思議かな?


 ……そういやこの子、好奇心が旺盛だったね。前も怖いもの見たさで私の隠れてるクローゼットを覗き込んだ事があったし。


 あれ? 監視カメラに興味持つとかさぁ……。もしかして幼女ちゃん……覗き見の趣味とかないよね?


 白髪ママに変な性癖植え付けられたとか冤罪掛けられたら嫌だぞ……。そん時は正直に言うしかねぇよ。

 

 生まれつきの性格です。ママさんから生まれた時には彼女はそうだったんです。ママ産の性癖なんですってな……。


「これ……どちらにせよ怒られない?」


 なにが楽しいのか、幼女ちゃんは浮かべたモニターに手を伸ばして、触れられない事に感動している。3D映画を初めて見た子供かな?

 ……って待て待て。それで感動するのは、おかしくない?


「いやいや、パイプ端末だっけ? アレだって似たもんでしょ……」


 空中にモニターが浮かんでるのは、アレだって同じはずだ。むしろその光景を見たから監視カメラのモニターも同じように空中に浮かべる能力にしたんだよ。


「ハァ……全然違う」


 とか思ってたら肩を竦ませて、呆れ声で首を振る。

 え? なにその『コイツ分かってねぇな……』って態度……。普通に引っ叩きたいんだけど?


「……これには……魔力が通ってない……ここに『有る』のに『無い』……オバケ姉ちゃんと一緒」

「……」


 ふむ……ちょっと分かったぞ。

 幼女ちゃんは魔力を見ている。でも私の能力は、この世界に有るのであろう『魔力』とやらのエネルギーを介在していない。

 だから同じような見た目の能力でも、幼女ちゃんにとっては不思議に映るんだろう。


 恐らくだけど、この魔力っての。超越者の力を使えば、擬似的には発生させられるんだろうけどね。

 そんなのはリソースの無駄よ。


「……だからオバケ姉ちゃんのコレ……」


 そう言って幼女ちゃんは手首を見せてくる。そこには腕輪が嵌っていた。

 え〜と、パイプ端末でいいのかな?


 そして幼女ちゃんの手首からモニターが現れる。

 そのモニターに幼女ちゃんが手を伸ばすと――


「……わたしには解けない」


 パシュンという糸の切れたような音を立てて、幼女ちゃんのモニターは弾け飛んだ。


「なるほどね……」


 結局、パイプ端末のモニターも魔力依存だから幼女ちゃんには解けるけど、私の能力は魔力じゃないから無理だってことか。


 ところでさぁ……。


「……私のパイプ端末は?」

「……必要ない」


「そ、そっすか……」


 え? なんで一人でスマホ持っちゃってんの?

 ずるく無い!?

 



 ――――――――――――――――――――――


 


 私はスキマの中で横になって、意識を自分の中に沈める。

 何故、私の領域畑は上手く機能しないのか……。


 それを探るために『領域畑』の能力を探り続ける。


 よく分からない『領域畑』の事だけど、結局は私の能力だ。感情を収穫するという機能を、領域という区分に落とし込んだにすぎない。


 つまり、よくよく能力を探ってみれば私なりの答えが導き出せるはずなのだ。


 そして意識が浮上すると同時に目を開いた。


「……なるほどなるほど……私の領域畑に足りなかったものは……『種まき』だね」



 ピコンッ……

 スキマ空間の天井を眺めていたら突然、店に設置していた監視カメラのモニターがポップアップされる。


「んふふ。どうやら真夜中のお客さんのようだね」


 モニターには、ピエロ仮面の泥棒がコソコソと壁に機械のようなものを設置している光景が映し出されていた。


「ちょうどいいねぇ……。ちょっくら『種まき』でも始めてみようかな」



 ――――――――――――――――――――――



 と言う事で。

 真夜中の宝石店をジェットブーツで滑走中。


 どうやら仮面泥棒たちはカメラの設置していない場所に移動したようで、こうして私自らが出向く事になった。


 やっぱカメラの増設が欲しいところ。



 あぁそうそう。『種まき』の事なんだけどね。


 なんで人がたくさん領域畑にいるにも関わらず、上手くエネルギーが貯められなかったかなんだけど。


 それは私が介入していないから……だよ!


 つまりは、私が起こしたアクションにより発生した感情じゃないと上手くエネルギーを収穫出来ないんだ。


「……逆に言えば、私が間接的にでも関わってさえいれば、自動的にエネルギーを得る機構も作れるんじゃないかな?」


 まぁ今回は直接出向いて種まきしようかね?


「…………あ?」

「ッ!」


 あ〜……またやっちゃったよ……。


 久しぶりにジェットブーツで軽快に走ってたのがいけなかったのかな?


 曲がり角でバッタリと仮面泥棒と鉢合わせしちまったわ。


「……」

「……」


 仮面のせいで何処見てるか分からんけど……明らかに目が合っちゃってるね。

 

 まあまあしょうがない。よく有る事だ。

 幸いなことに、この宝石店はしばらくホームグランドにしてたからね。


「え、えへへ……どーぞごゆっくり……」


 ニュルン……


 スキマの設置はバッチリよ。


「ッ!! フッ!!」


 目の前で消えた私に、仮面泥棒の一人は可哀想なほど動揺してビクついてる。

 


「ま、まぁアレだ……結果的に『種まき』になったんじゃない?」



 はい、どうやら正しかったようだね。


 領域畑から『恐怖』という感情エネルギーが『収穫』されたようです……。



 大きく実ったぞー!

 

 

 

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