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誘拐先は…


「そろそろスキマの空間から排出された頃ッスかねぇ?」


 どーも私です。現在、白髪幼女の姿に化けて牢屋で移送中です。とことん牢屋と縁があるね……私もさ。


 いきなり押し入られて焦ったけど、まぁ上手く行ったんじゃない?


 やったことは単純だよ。トレイターの能力で幼女ちゃんに姿を変えて、スキマの中に白髪親子を押し込んだだけ。


 水滅玉と風滅玉で霧の突風を起こして目眩しをしたら、白髪幼女に化けた私が、「マッテーオカーサーン!」とでも言えば、母親は逃げたと思うだろ。

 そして私は捕まると……。


 こんだけすれば牢屋を詳しく探ることもないんじゃないかな? カケだけどね。


 スキマは解除しといたから、あとは豚貴族がなんとかするだろ。しばらく匿えとか言ってたけど、充分時間は稼げるんじゃない?

 私一人ならいくらでも脱出できるだろうしね。


「へへへ、豚貴族もこれなら文句あるまいて」


 帰ったら三十万ネルス寄越せよ。誤魔化そうとしたらテメーの枕元に毎晩、虫をばら撒くからな。


 さて、コレからどうしようかね。今すぐ脱出って訳にもいかんね。飛行船に乗せられたし、どっかに連れてかれてるっぽい。


「まぁ、例の如く様子見の情報収集かな? すぐに脱出したところで豚貴族の屋敷も何処か分からんし」


 牢屋に備え付けのベッドで横になると、サラリと白髪が揺れる。


「うん、化けてる化けてる。意外に使える能力じゃん」


 ひとり人狼ゲーム、トレイターの能力でも解説しようか? わかると思うけど、他人の姿に化ける能力だよ。


 制限としては、時間制限がある事かな。

 あと自分とかけ離れた姿であればあるほど、変身時間が短くなる。体のデカい豚貴族なんかは三秒も持たないよ。

 でも私と白髪幼女はほとんど同じ大きさだから、長持ちする。白髪ママじゃなくて、白髪幼女の姿に化けたのはその為でもある。インターバルは一日ってところ。


 あとは……。


「幼女ちゃんには悪いと思ったけど……」


 髪の毛を一房貰ったんだよね。化ける人の媒体となる物があれば、さらに長時間化けられるようにした。

 その気になれば一ヶ月は化けてられるんじゃない?


「髪は女の命……って言うけど別にいいよね!」


 だって髪の毛は命と等価じゃねぇよ。だったら美容師は毎日人殺しだわ。

 だから、こんくらい許してくれるだろ。


「今回は何日の船旅になるかな〜」


 ――――――――――――――――――――――――


 5日ってところかぁ〜。

 結構遠くまで来たんじゃない? こりゃ帰るの苦労しそうだなぁ〜。


 移送中の飛行船の中では、抜け出すことはしなかった。どうせ目的地に到着したら移動させられるしね。

 スキマを張り巡らせても無駄になる。


 それだったらいっそのこと、妖玉あやかしだまの生成をしてた方がいいだろう。だいぶ在庫は貯まったよ。

 攻撃力こそないけど、意外に役に立つんだよね。主に目眩しとして。


 そして、到着したのも束の間。飛行船から移動させられてます。おっと、あとで妖玉の能力を外してジェットブーツに戻しとかなきゃね。


 そして連れて来られたのは――


「このタイプの牢屋って、この世界で主流なのかな……」


 はい、部屋を鉄格子で区切った部屋に通されました。

 こう、……牢屋ってさ。半分地下に埋まってたり鉄の扉で区切られた部屋だったりしない?


「快適だからいいんだけどさ」


 むしろそんな所に閉じ込められたら、私は脱出したあと戻ってこないよ。


「しかし、メルヘ〜ンな部屋だこと……」


 天蓋ベッドなんて初めて見たよ。

 それになんと言うか……部屋全体が子供っぽいというか。たぶんだけど、白髪幼女の為に調度品が揃えられている感じ……。


「ふ〜む、扱いは悪くない。むしろ恵まれていると言ってもいいね」


 白髪幼女(私)を連れてきたヤツが誰かは知らんけど、ぞんざいな扱いはしないらしい。じゃ何で逃げて来たんだって話しだけど。


「考えても仕方ないね!」


 そんな事より、新しい部屋の確認だ。

 ふむふむ、豚貴族の牢屋が大人向けの部屋で、この牢屋が子供向けって所は問題ない。ピンクを基調とした部屋は好みじゃないけど、目が痛くなるほどの下品さもないからね。


 お、クローゼット完備! クローゼットはスキマを中に作るのに丁度いいからポイント高いよ。


 開いてみたら鏡が扉の裏についていた。姿見だね。

 そこには白髪幼女が太々しい顔で覗き込んでいる。


「ふふ、しばらくはこの姿だから慣れないとね」


 そして問題の鉄格子なんだけど……ちょっとよろしくない。なぜなら鉄格子の向こう側にスキマが見当たらないんだ。


 豚貴族は鉄格子の向こう側に、色々と物を置いていたから大丈夫だったんだけど……。なにも置いていないのはいただけない。私は向こう側が見えている鉄格子をスキマと認識できないんだよ。


「まぁなんとかなるか……」


 後で考えりゃいいでしょ、どうとでもなる。

 次だ次。

 えーっとカーテンを開いてみるか。窓があるなら外を見ておおよその現状を把握できるかもしれん。


 勢いよくソーレッ!


「……マジかぁ」


 窓はハメ殺しで開くことはできない。

 それはいい……。予想通りだからね。

 でもコレは――


「予想外にも程があるわ……」


 窓の外を見てみれば、高い位置から見渡す事となった。そして、その光景は目を疑う物だった。


「ここって遊園地じゃね?」


 いや、比喩とかそんなんじゃなくてね。デカい観覧車とかジェットコースターが見えるんですけど……。


 メリーゴーランドで回るよく分からない可愛らしいキャラクターたち。ランドは全体的にメルヘンな雰囲気を醸し出している。


 そして一際目を引くのが、ランドの象徴とも呼べる大きな城だ。

 湖の中央に聳え立つ城は、幻想的なランドにふさわしい西洋のお城。


「今まで見て来た建物より一番異世界要素が強いわ……」


 まさかの異世界要素がエンタメ用作り物の城だとは思わんかった。


 湖の上を、城から伸びる橋が通っているのが見える。


 なんかもう……遊園地だわ。


 鉱山みたいな山から伸びるレールの上をトロッコが走ってる遊具も見えるし。


 湖の上に立つ城……メルヘンな遊園地には持ってこいの施設だと思うよ。ワクワクするねぇ。

 この遊園地が誘拐先じゃなければな!


 

「この状況……全部、遊園地のイベントなんですよ〜……とか言わないよね?」


 



 

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