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白髪ママは教育ママ


 白髪親子が同居人になって数日が経った。

 当初落ち着かない様子だった二人も、なんだかんだ牢屋での生活に慣れてきたようだ。

 たまに瞑想だか、お祈りだかを二人でやっているのを見かける。


 基本的に牢屋での生活は、ヒマが一番の敵だったりする。不安で押しつぶされそうな時は、その余った時間が精神を蝕んでしまうのだろうが、適応してしまった白髪親子は存外逞しいようだ。


「うぃ〜っす……洗濯物はカゴに入れといて下さいねぇ」


 いやね、白髪親子を匿うって目的で行動した時、一番厄介なのは食事だと思ってたんだけどさ……違ったわ。


 まさかの衣類の問題だったよ……。流石にずっと同じ服を着てる訳にも行かなくてさぁ。

 でも今まで洗濯物を回収してくれたメイドさんも来れなくなった訳じゃん? 溜まっちゃったんだよね……。


 最初は白髪ママが、風呂場で洗濯しようとしてたんだけど……窓が全部シャッターで閉じちゃったもんだから陽の光が入って来なくて干せなかったんだよ。


「おし、誰も居ませんねぇ……」


 そんな訳で、私は洗濯物が集められる場所まで来て、密かに私たちの服を紛れ込ませてるんだよ。

 そして新しい服を回収っと……。


 洗濯場のシステムは何となく把握している。カゴごとに洗濯した物を番号の棚で管理しているようだ。


 夜中も普通に洗濯場には人が来るんだけど、誰も居ない時間を見計らって――。


「棚にカゴごとぶち込む! ……いつもすんませんね。洗濯の職員さん」


 最初に洗濯物をどうしたもんか考えてた時に、コレを思いついた。しばらくスキマに潜んで洗濯物の流れを覚えてやったんだ。


 洗濯物を管理しているメイドさんがやって来て、カゴごと回収していった。


 そして次の日には同じ棚に洗濯された服が置いてあるので私が回収っと……。


 後ろに着いている青色制服は疑問に思う事はないようだ。まぁ洗濯物の内容物まで把握するとは思わんわな。

 それに一般の職員についている青色制服も、ガチガチの性格という訳ではなさそう。恐らく白髪親子を見つけるために全員の職員に青色制服をつけたものの、敵意剥き出しではないので事情をあまり知らない下っ端だろう。


 もちろん豚貴族に付いていた青色制服は上の人間のようだが、ぜってぇに見つけてやるって感じ出してたもんな。


 牢屋に戻ってきたら、冷蔵庫に食材を補充。メシは白髪ママが料理をしてくれる。何気に配給されていた食事よりグレードが上がってるのは嬉しい誤算だ。


「オバケ姉ちゃん、ご飯だよ」

「お、いつも悪いッスねぇ」


 スキマの空間で食べることもあるけど、たまに白髪親子と食卓を共にすることがある。


「テレサ、背筋を伸ばしなさい」


 テーブル低くてスマンね。

 白髪ママは食事マナーを娘に叩き込んでいるようだが、私には別に強要してこない。程よい距離感は同じスペースで過ごすマナーだよね。


「だから私は横になってパンを食べます」

「流石にそれは認められないわ……」


 ダメだった……。どの位許されるか試した私も悪かったよ。白髪幼女ちゃんの教育にも良くないと判断されたのかもしれん。


「あ、今日は幼女ちゃんにお土産あるんスよ」

「……お菓子ならもぅ貰ったよ」


「いやいや、紙と書く物ッスよ。ここはヒマだからね。コレでお絵描きでもするといいよ」


 コレくらいならいくらでも領主館に転がってるからね。絵本じゃなくてスマンけど。

 

「ありがとうございます。これで娘のお勉強をさせて貰います」


 白髪ママの言葉に白髪幼女はショックを受けたような顔をして、私を恨みがましい目で見てきた……。


「おのれ……」


 ちゃうねん……。そんなつもりじゃなかったんよ。

 だからその目をやめて下さい。

 なんか白髪幼女から要らん恨みを買った気がするけど、私のせいじゃないよね?


「そ、そう言う事で……私はこれで」


 視線から逃れるように私は、クローゼットに逃げ込んだ。



 ――――――――――――――――――――――――



「まさか、この世界がコンピュータの中だったとは!」


 TRAITOR 〜トレイター〜の物語も佳境に差し掛かっている。


「何度も同じ人狼ゲームを繰り返すのにも理由があったんだね」


 世界の秘密を知った主人公は、このゲーム世界から抜け出す方法を他のキャラクターたちと模索する。


 そして無事にゲーム世界から脱出してエンディングに辿り着いた。


「うぉ〜、面白かった〜」


 サウンドノベルとしても、人狼ゲームとしても抜群に楽しいゲームだったよ。

 エンディングでは、それぞれのキャラクターたちによるその後が一枚絵で表示される。


「ははは、エロシスターの現実の姿は保育士さんだったのか」


 領域に入ってから割と早い時間にエンディングを迎えてしまったせいで、時間がだいぶ余ってるね。

 どうしようか……。


 私の超越者としてのパワーアップの事なんだけど。外に携帯ゲームを持ち出すか、セットできる能力を増やすかで悩んでたよね。

 あれ、本来なら携帯ゲームに心が寄ってたんだけどね。


 今はセットできるスロットの増築の方に心が寄っている。と言うのも今の状況が厄介だからだよ。

 不測の事態が起きた時、使える能力は多いほうがいいからね。


 今、三つの能力がセット出来るんだけど、新しく能力をセットできる余裕がないんだ。

 

 slitースリットー

 スキマの能力だね。この能力を外すなんてとんでもない。私の生命線だよ。

 

 探偵ファーマル

 外したら会話が出来なくなりますけど?


 コメット☆キングダムコンペ

 ジェットブーツは逃げるのに欠かせないねぇ……。


 ね? 余裕ないでしょ?

 娯楽の為に携帯ゲーム持ち出すとか言ってる場合じゃ無かったわ。


「むむむ、仕方がない……能力の増築にしよ」


 はい、そうと決まったら増築の開始。

 そして完了。別に時間が掛かる訳じゃないから一瞬よ。


 と言う事で、私のセットできる能力は四つになりました。コレで他の能力を使う余裕も出来るはず……。

 携帯ゲームは……また今度で……。


 新しいゲームでも探すか……。クヨクヨしてもしょうがない。


「そうだ……暇つぶしになる能力を作れば良いんだ」


 ふふふ、閃いたよ。使える能力になるかは微妙だけど、


「さっきは白髪幼女ちゃんに悪いことしちゃったからね」


 あの子の牢屋生活が、少しでも楽しいものになる様な能力を作ってやろうじゃないの。


 

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