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どーも誘拐犯の一味です


「う〜ん、こりゃ本格的に何かあったねぇ」


 真夜中、私は牢屋を抜け出して、いつもの様に徘徊していた。

 異常はすぐに分かった。見回りの数が多い。最近、多かったけど更に多いんだ。しかも――


「見慣れない制服がいるね……」


 いつもの兵士や執事と合わせて、別の青っぽい制服を着た人たちがいる。


「恐らく、見慣れない制服を着ているほうが問題なんだろうね」


 いつもの豚貴族の部下、というか職員一人一人に青色制服の奴等が付いてる感じ……。まるで職員全員を監視しているような……。なんせ執事やメイドにすら青色制服が付いて回ってるんだ。


「う〜ん、これ……事情を知りたくないとか言ってる場合じゃないかも……」


 下手したら何も知らないまま、逃げられない状況に陥る可能性が出て来た。


「ダメ元で豚貴族に当たってみるか……」


 たぶんダメだろうなぁ。

 私は見つからないように豚貴族の寝室に向かった。

 

 元より夜中は豚貴族の寝室は近づけない。部屋の前に見張りがいるからね。忍び込むなら昼間なんだけど、昼間に行ったところで、豚貴族はいないっていうね。


 それでも念のために向かってみたわけだが……。


「こりゃダメだ……」


 いつもの倍の人数が、部屋の見張りについてる。

 あれは豚貴族の護衛と、あとはやっぱり青色制服か。


 一応、この時間に来た意味はある。豚貴族は夜中に徘徊癖があるからね。出て来たところを接触できればワンチャン……。


「お疲れ様ですお館様……」

「……うむ」


 ほら出て来た。でもなんか緊張感があると言うか……ピリピリしてる。


「閣下……どこへ行かれますか?」

「夜風に当たってくる」


「お供させて頂きます」

「チッ……」


 豚貴族に話しかけているのは、青色制服の男だ。制服の装飾的に上の人間だと思う。


「いらん。ワシ一人でいい」

「残念ですが許可できませんね」


 青色制服は一歩も引かない。このやり取り、似た様なことを前も見た気がするが、前回は豚貴族の事を考えて発言していたのに対して、今回は随分と高圧的と言うか、青色制服には敵意がみてとれる。


「現在、閣下には誘拐事件の嫌疑がかけられております。勝手な行動は謹んでもらいたい」


 おい豚貴族……やっぱり誘拐じゃねぇか! テメー私に誘拐事件の手伝いをさせてやがるな!

 ヤッベェェエエ! なんか事情があるのは分かってるけど、これバレる訳にはいかんぞ。


「ふん、誘拐なぞしとらんわ。……それとも何処にそんな証拠があるのだぁ?」


 いや誘拐してるわ! 証拠なら私の牢屋で寝てたけど!


 豚貴族はイライラしながらも、悪そうな笑みで青色制服を煽る。


「それはコレから探すのです。とにかく監視は付けさせて貰いますからね。急に街中に購入した複数の物件も合わせてね」

「ふん、勝手にすればいい……どうせ何も見つからんがな。精々、屋敷を無駄に壊して請求されんように気をつけろ」


 やめて……探せば見つかるから!

 

 でも街中の物件は知らないな……。たぶんダミーで購入したな? 怪しい所を複数作ることで、本命の私の牢屋を紛れ込ませているんだ。


「ええ、勝手にしますよ。令状はありますからね……」

「ふん、気分が悪い! 今日は部屋に戻る!」


 豚貴族は捨て台詞を吐いて、寝室に戻って行った。

 後に残されたのは、青色制服と気まずそうな顔の護衛兵士たち。


 ぐおおおお! 豚貴族! お前マジで私を何に巻き込みやがった!

 クソッ、メシが来ない訳が分かったよ。恐らく、屋敷の人間全員が見張られているんだ。給仕の兄ちゃんも見張られている事になるだろうから、メシが届けられないんだ。

 もれなく青色制服が付いて来てバレちまう。


 豚貴族は苦肉の策として選んだんだ。白髪親子を隠すため屋敷の中を自由に行動できて、豚貴族の部下として目をつけられていない便利屋さん。どーも私だ!


 はぁ……とんでもないもんに巻き込みやがって……。


 まぁ嘆いても仕方がない。

 白髪親子見つからないよう匿うしかないだろ……。


 私は手早く厨房から食べ物を拝借して牢屋に戻る。


「前に豚貴族が言ってたけど、この牢屋の守りはかなりの物らしいからね」


 ちょっとやそっとじゃ破られないはずだ。


 スキマを通って部屋に入ると、灯りが付いていた。


「んん? なんで灯りが付いてんの?」

「あ、お母さん……いたよ。オバケのお姉ちゃん……」


 白髪幼女が、私を探していたのか風呂場から顔を覗かせて来た。オバケのお姉ちゃんって……ちょっと驚かせすぎたか。


「何処に行っていたのですか?」

「あぁ……気にしなくていいですよ。ただの食料調達ッス」


 ソレを言うと、白髪ママは沈んだ顔をした。


「ごめんなさい……」

「あん?」


「娘と年の変わらないような子に、頼り切りにするなんて……それに危険な事も――」

「あぁ、ストップ。こっちは金の為にやってるんで謝る必要はないッスよ。それに危険はないよ」


 多分ね。


「……」


 悪いね。そっちの罪悪感も分かるけど、一々気にされるのは逆に迷惑だ。

 要らんのよ謝るとか。


 やる事は変わらんからね。謝って貰って得があるなら存分に謝ってほしいけどね。

 余計なやり取りが増えるだけだ。

 だから要らん。


「大丈夫だよお母さん。このお姉ちゃんオバケだから……」


 キミはキミで図太いね! もうちょっとお姉ちゃんを敬って!


「うぃ〜……と言う事で私は寝ます。今度から夜に私が居なくても探さないでね」


 そう言ってクローゼットに向かう。白髪幼女とすれ違う時に、何気なく身長を比べてみる。


 ふむ、私の方が少し大きいね。まぁ本来の身長じゃないから優越感も湧かんけど。


 ポケットに盗んできたばかりのお菓子を、ギュウギュウ詰め込んでやった。


 


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