ライド遊具の能力
はい、どーも私です。
そんじゃ【ライドン ワールドツアー】の能力お披露目と行きましょうね。
今回はねぇ〜!
制限キツいよ……。
【ライドン ワールドツアー】
『ライド遊具の能力』
私は牢屋の床に両手をつく。ヒヤリとした鉄の冷たさが手のひらに伝わる。ちょっとチベたい……。
「出でよ!! ライド遊具!」
別に叫ぶ必要はないけど雰囲気だ気にすんな!
「……おぉ」
手をついた牢屋の床が眩い光を放ち、それは姿を現した……。幼女ちゃんがその光景に感嘆の声をあげる。
そして収まった光の後に現れた物体。
幼女ちゃんは光の眩さに細めていた目を見開き……その視線を『床』に固定させた……。
「…………なにこれゴミ?」
「ちげぇし!」
でもうん……そう言われても仕方ねぇ光景だね。
床に現れたのは木材や金具などが無造作に散らばった光景……ぶっちゃけ廃材置き場かゴミ捨て場のような惨状だ。
「さ、作るよ幼女ちゃん……」
「……なにをッ!?」
● 制限 まずライド遊具を組み立てる。
そーだよ、この能力は制限としてライド遊具の『組み立て』から始めることになるんだ。
「ええっとぉ……最終的にAとBのパーツを組み立てて合体させることになるのね」
「……まって自分たちでつくるの? 乗り物を?」
私は廃材……もといバラバラのパーツと一緒に召喚された紙を手に取って呟く。図解にされた『組み立て説明書』だ。
「幼女ちゃんはコッチのパーツを作ってね。私はBのパーツを作るから」
「……すごい、今までで一番いみがわからない」
「大丈夫だよ。ほら図になってるから、そんなに複雑じゃないでしょ?」
「……そういう意味じゃねぇよ」
結局ただの制限だからさ、トンカチ使って釘をトンテンカンと大工さんするワケではない。
「……あ、いがいと軽い」
幼女ちゃんが材料を手に取って呟く。
アレだ、ブロック玩具を組み立てるのに近いよ。やったとあるでしょ? 色分けされててポコポコ嵌め込む感じだから難しくはないんだよ。
「んーと、取り敢えずパーツを私と幼女ちゃんに分けようかね」
揃えたパーツを図解に沿って組み立てる。
板に開いてる穴にブッ刺して板同士をくっ着ける。板に空いている穴にキャスターの車輪を嵌め込んでロックする。
おほっ、ポコポコ嵌め込む感じがクセになるね。意外と楽しいわ。
そうやって繰り返し――
「よっしゃ完成! 幼女ちゃん、ソッチはど〜お?」
「……こっちも出来たよ」
暫くしたら私の前には、不出来な木材の箱のような物が出来上がっていた。幼女ちゃんの前にも同じ物が存在している。
「お〜し、今度は二つを合体させるよ。幼女ちゃんはソッチ持って」
「……むぃ」
二つのパーツを押し込んで、ガチャリとロックする。
そうやって合わせた物がぁ〜〜〜〜コチラッ!
「……ごみ」
「トロッコだし……」
う、うん。トロッコって言うかキャスター付きの箱……。移動できる安っぽい小型収納にしか見えない。どう見たって乗り物じゃねぇわな。
ま、まぁまだ完成じゃないから!
「最後にこのエンブレムを前面にソイヤ!」
残ったパーツの蝙蝠翼のエンブレムをセット!
みすぼらしい木箱は光り輝き、その後に現れたのは幼女が座って乗れそうな小型の『金属トロッコ』。
「……待って、わたし達の生み出してしまったゴミはいずこ?」
組み立て時の心許ない感じは何処へやら。小さいがガッシリとして頑丈そうな箱型トロッコだ。
「これだよ?」
「……どーみてもちげぇよ」
何言ってんの幼女ちゃん、このトロッコを作ったのはキミじゃないか。はははっ!
まぁ大きさ的にトロッコのオモチャにしか見えんけどね。ほらあるじゃん、ペダルで自動走行する金持ちのガキが乗ってそうな車のオモチャ。アレっぽい。
そんな感じのミニチュア感が漂う箱形トロッコだね。かわいいじゃん。大人が入るには無理な大きさだ。
「……お前なんでもありか」
幼女ちゃんはゴミが重厚なトロッコに変わった光景を見て納得のいかない表情をしている。……納得しなよ、人はそうやって割り切れない想いを飲み込んで大人になっていくのさ……そう、何も考えねぇ大人になッ!
「……いきなり完成にすっ飛ぶのなんなん? 最初からコレでいいんじゃないの?」
「ちゃうから、あの過程が重要だから」
組み立てるっていう『制限』だからしゃーねぇだろ……。
ならお前なにか? この複雑でバリバリ金属とか使ってそうなトロッコを一から作れんのか? 溶接とかすんのか? 無理やろがぃ……だからお手軽に図工感覚で作れるようにしてんだよ。ノミもノコギリも釘さえいらんわ!
「……まぁいいや、オバケ姉ちゃんのやること気にしてたら、この世の法則が信用できなくなる」
「万物まで私のせいになるの罪が重くね? あと解の巫女がそれ言っちゃダメな気がするよ」
「……とうほう法則は無視しておりませんので……」
この世界の法則とかしらねぇよ。あとお前を筆頭に法則無視してそうなヤツいっぱいいるじゃねぇか。
「……まぁできたんならいいよ……組み立ても面倒だったけど一度つくっちゃえばもんだいないし」
あ、ごめん。一度じゃねぇんだわ……。
「悪いけど、明日も作るよ。というかこのライド遊具……作って一日しか持たないから」
「……つまり急に必要になってもすぐには使えないってことか」
勘がいいね。
● 制限 制作したライド遊具は一日しか持たない。次に作るときは設計図も微妙に違う。
「……ところでオバケ姉ちゃん。牢屋の中でこのトロッコを作ったのはいいけど、どうやって出すの? 私が壁に穴でも開ける?」
あ〜、そうね。工作トロッコならともかく、金属トロッコに変わった今、牢屋の出入り口の幅を微妙に超えちゃってんね。
まぁ、大丈夫よ。
私はしゃがんで金属トロッコを両手で挟むように掴む。そして――
「よっと」
軽々と持ち上げた。
うん、これ見た目よりずっと軽いからね。
そしてその金属トロッコを持ち上げたまま、私は牢屋の出入り口に近づけ、軽く両手に力を込める。
「ほい、ぐにゅぅぅうん……」
金属トロッコは、グニャリとゴムボートのように変形した。私はソレを出入り口に押し込む。
そして外に出して、手を離すと……ポンッと空気を急速に吹き込まれた浮き輪ように元の形へと戻った。
「おけ、外に出したよ」
「……ほらやった」
『ほらやった』ってなんだよ! 知らねぇよそんなん。これ金属で出来てるように見えるけど、結局は私の能力で出したもんやぞ。
マジもんの金属じゃねぇんだよ。能力を具現化したもんだ。なんなら邪魔になんねぇようにネックレスに変えることもできるんだぞ。駐禁取られないよ!
「ま、とりあえず乗り込んでみなよ。キミの為に作ったトロッコなんだから」
「……そだね」
私は幼女ちゃんにトロッコに乗り込むよう促すと、彼女はトロッコの箱の中に入り座り込む。
「……どう?」
「いいね! 似合うよ幼女ちゃん!」
やっべ……絵面が完全にダンボールに入った捨て猫だ。拾わねぇよ……なんなら元いた場所に捨てに行く途中だわ。
「ほら、箱の中にレバーハンドルがあるでしょ? それで操作するんだよ」
「……ほぅ」
お、幼女ちゃんの目が輝いた。
んふふふ、分かるよぉ……。こう言うの楽しいよね?
遊園地のゴーカートみたいでさぁ。
今回は遊びの能力じゃないんだけど、やっぱり楽しんでくれると私も嬉しい。
「……ぬ、いくぞ。ゴー!!」
私の目の前で、幼女ちゃんは元気よく発進した。
そんな姿を見てを私は、ニコニコ顔で幼女ちゃんの姿を追うように――
「……」
「…………」
――『僅か』に首の角度を変えた……。
おっせぇ……
「……」
「……」
幼女ちゃんはスッ……とトロッコから立ち上がる。
「走行中に立ち上がるのは危ないよ……」
彼女はトロッコの上から私に手を伸ばすと、胸ぐらを掴んで引き寄せてきた。眼前に迫った幼女ちゃんの目はギンギンに見開かれていた……。
「……危険なんてどこにもねぇわ」
「しゃーねぇーだろうがよぉ!! リソースが足んねぇーんだよ! 色々考えてんだよコッチもさぁ!」
この世界の法則とか知らんけど、私には私の法則があんの!! それに、ちょっと言い出しづらかっただけで、それが全速力じゃないから……。
「もともとねぇ、このライド遊具は『二人乗り』なんだよ。……だから」
私はトロッコの後ろに回り込んで鉄板を掴む。そしてソレを後ろに引っ張ると、トロッコの後部はグニョンと伸びた。
私は幼女一人分広くなったトロッコに乗って前を空ける。
「ほれ、運転しな」
――――――――――――――――――――――
「いえーい!」
「……ぬひひひ!」
大人のいない無人の会議室で、二人乗りのトロッコライドを走らせる、どーも私達です。
私を後ろに乗せたトロッコは、テーブルの足を縫うように慣性を付けてジグザグと滑る。その走りは軽快で遊園地のゴーカートを彷彿とさせた。
んふふ、少しは形になったろ?
● 制限 この能力は幼女ちゃんとの二人乗り。
ここに繋がってくんのよ。
二人乗りになればこれ位の動きはできるようになるね。つか結構楽しいわ……。
一通り走った後、幼女ちゃんはトロッコから出て考えるように顎に手を当てる。
「……すこし慣性があるけど小回りはきくね。壁にぶつかってもクッションみたいに弾いて衝撃がない」
「そやろ? その辺は能力やからね。同様に無茶しなければ床に跡も付かないから安心しな」
淡々とこの能力の使い心地を挙げていく幼女ちゃん。私はそれに答えていく。
曲がる時シュルシュルとドリフトしちゃうね。リソースとの兼ね合いで性能的にはその辺で妥協した。乗り物においてグリップが効きすぎるのも考えもんよ?
「……でも……まだ遅い」
「スピードねぇ、これに関しては私も頭を悩ませたよ……」
ハッキリ言って……このゴーカートモドキのトロッコのスピードってさ。幼女ちゃんの全力疾走の方が速いくらいだからね。
「……それに、二人じゃないとダメか……」
不満が止まんねぇなおい。
まぁ移動すんのにわざわざ私が後ろにいなきゃいけないの面倒だもんね。私も面倒だ。
でも現状、ちょっと無理だねぇ〜。
むしろ『二人乗り』というゲームに合った制限を付けることで出力を底上げしてるフシがあるから。
「スピードに関しちゃ一応の対策はとってあるよ」
そう、このライド遊具の能力にはスピードを増す為のギミックが用意されている。『エネルギー』を消費することでライド遊具の性能を向上させることができるのだ!
じゃあその『エネルギー』とやらはどうなっているのか? 元からある程度備わっているのか? ……否。
私はトロッコに手をかける。そして声を高らかにあげた。
「モードッチェンジ!! 『平型トロッコ』!」
『金属トロッコ』が光を放ち、その姿を変える。そして現れたのは箱型ではなく、展開され一枚の板となった平型トロッコだ。
そしてその中央には手で押すシーソーのような物が設置されてあり、高さ的には幼女が二人で上げ下げするのに適した高さだ。
それは【ライドン ワールドツアー】で男女が操作していた板型トロッコと同じ形をしている。
「……まさか」
「そのまさかだよ。チュートリアルはゲームで済ませたろ? ……ならば実践だ」
● 制限 性能を向上させる為のエネルギーは、レバーシーソーを二人で上げ下げする事で溜まる。




