ライドン ワールドツアー
どーも私です。
現在の滞在場所である人工ダンジョンさん。非常に範囲が広く、行動するのにも一苦労です。
私はまだジェットブーツがあるのでいいのですがぁ……。
「まぁ幼女ちゃんには大変よな……」
人工ダンジョンは土地自体を活用した施設だよね。んで私達がいる場所は、その従業員通路にあたるワケだ。
必然こうなるんだろうけど……。
「何もない直線の通路が多いんだよね」
たまに部屋があったりするんだけどさぁ……。
いや、この会議室の近くはまだいいんだ。重要な場所っぽいから部屋が近くに密集している。倉庫だとか休憩室みたいな場所とかね。
つまりこの辺りは迷路みたいになってるクセに、他のところに行くとなると長い長い直線の通路が待ち構えている……と。
この間、幼女ちゃんが開拓してきた立体マップで確認した限り、下手すりゃ何もない直線の通路が数キロ続いてた。そりゃ彼女が扉だけ確認して引き返してくるワケだよ。
「おそらく、スタッフルームってのは場所ごとに点在していて、それを長い通路で繋いでる……」
幼女ちゃんが若造からコピーした地図あるじゃん。一応範囲や区分けなんかはザッと分かったんだけど、配管みたいに張り巡らされた表記がよく分からない。
地図はコピーしたけど地図の見方がよく分からないという状況のようだ。
「一応幼女ちゃんが、私の立体マップと照らし合わせて通路を読み取ろうとしてるみたいやね」
まぁいい、重要なことは他の場所を探索するなら足の問題が出てくるってことだ。
そこで幼女ちゃんが私に『なんとかしろ』と言ってきた。まぁ乗り物でも用意しろって話なんだろうけどさぁ……。
「難しい……ねぇ……」
何となく分かる。幼女ちゃんの言ってる事って私には難易度が高いんだよ。
たぶん引っかかっているのは、『他人を運べる能力』という部分かな?
「私の能力って基本、私一人で完結する物ばかりなんだよね……」
そこに他人を運ぶってなるとゲームリソースが高くなる気がする。
「下手すりゃ台車に乗せた幼女ちゃんを、ジェットブーツで押す方が効率がいい可能性もあるね」
制限を強くするしかねぇか?
「ま、とりあえずゲームを探してみるか……」
う、う〜ん。
幼女ちゃんを運ぶかぁ……。レースゲームで乗り物でも出す?
いやいや、厳しい! 乗り物の召喚とかゲームリソースがヤバそう! ゲーム的に乗り物を召喚するゲーム性ならともかくね。
う〜ん、ネット検索で『ゲーム』『乗り物』と検索……。
「…………ほぅ」
これは、どうだ? いや、有りだ。
乗り物の召喚は難しくても、ゲーム的に『有る物』ならリソースの節約になる。
「んふふ、何とかなりそうやね。探すのは『ライド筐体』」
飛行機作った人物じゃないよ。
「あとはまぁ、幼女ちゃんにも手伝わせる事で親和性を高められるかな?」
――――――――――――――――――――――
「幼ぉ〜女ちゃん、ゲームしましょ?」
「……」
私の領域から出て彼女にニコニコ顔で話しかければ、幼女ちゃんは立体マップと若造マップを見比べていた目を私に向けた。
「……ゲーム?」
「うん、ゲームだよ。一緒にやろうぜ!」
幼女ちゃんは軽く目を天井に向ける。そして頷く。
「……わかった」
「おや、素直やね」
いつもなら何言ってんだって顔すんのにね。
……
……まぁ、理由は何となく分かる。
キミ、ちょっと私に後めたいでしょ?
今回キミは私に――
【踏み込んだね?】
私に『移動できる乗り物』を用意しろと言った時、少し迷ったような顔したよね。こうなる事を予想したんじゃない?
そう、キミは私の手の内を一つ、明かさせたんだ。
出来ると思ったから言ったんじゃない、出来るのか分からない事を頼んでしまった。
そして私は、その会話の後に『ゲームをしよう』と誘ってきた……。
キミは気づいたね?
私の『ゲーム』と『能力』に関係があることを……。
私が明かすんじゃない……キミの指示で隠していた事を明かさせたんだ。今まではよく分からないけど『ゲームが出来る能力』となっていたはずだ。
だからキミは後ろめたかった。
んふふ、本当にキミは頭がいい……。手の内は隠す、警戒するなら当たり前のことだね。
だから私はこう言おう。
『だからどーした?』
明かしたくないなら明かさないんだよコッチも。そもそも、これに関しては明かしたところでデメリットもない。
「君が勝手に気にしてるだけだよ」
「……そう」
軽くそう言ってやれば、彼女は言葉少なめに目を逸らした。おっと、言葉にして私が気づいているのを示すのは無粋だったかな?
「……わざわざ口に出すのがいじわるい」
「無粋だったね!」
まぁ今回は幼女ちゃんも、私のことに関して下手なツッコミは入れてこないだろう。借りがあるからね!
「つーことで、今回の携帯ゲームは……」
外で幼女ちゃんと一緒のゲームをする。
今回の制限だ。幼女ちゃんとゲームをする事で、幼女ちゃんをゲームの一部と関連付ける。
「そりゃ!」
【ライドン ワールドツアー】
牢屋の中に、ツーシートの座席とモニターが現れる。
「……携帯っていわなかった?」
「ツッコんでんじゃねぇよ。後めたいならスルーしな」
携帯ゲームと言っているのに出てきたのは、私たちの乗り込めそうな大型機械。
ダメだ! そんな気はしてたけどやっぱり幼女ちゃんにツッコまれたわ!
私の携帯ゲーム化は、領域の外にゲームを持ち出す意味であって、別に本当に手で持つ携帯ゲームじゃないんだよ。
まぁいい、口をモゴモゴさせる無粋幼女は放っておいて説明していくよ!
『ライド筐体』
まぁ簡単に言えばアーケードゲームの一種だね。
ゲームセンターで一度は見たことあるよね? 車のシートがあるレースゲーム。
そう、ライド筐体とはプレイヤーが『乗り込む』タイプのアーケードゲームなんだ。
今回はコレにした。
元々筐体という存在する物体に乗り込むのだから、無から召喚するよりゲームリソースの節約になると踏んだんだよ!
「ほれ、乗って乗って!」
「……この席に座ればいいの?」
私に促されて、私の横のシートに座る幼女ちゃん。
そう、このライド筐体【ライドン ワールドツアー】はね。『二人プレイ』ゲームなんだ!
もちろん幼女用に小さくしてるよ!
しかし、小さくするとアレみたいだね……子供向けのキッズライド……。ショッピングモールの子供コーナーにあるヤツ……。
まぁ【ライドン ワールドツアー】はゲーセンのちゃんとした筐体なんだけどね。
「さぁゲームスタート!」
「……どーするの?」
「よくは知らん! 見てれば分かる!」
ゲームを起動すると、座席がグラリと気持ち悪い揺れを起こす。
目の前の画面では、二人の男女がギコギコと手でシーソーのような物を上げ下げするムービーが流れていた。
「……ふむ」
それを見て幼女ちゃんは、目の前のハンドルを握って納得したような声を上げる。
はい、この【ライドン ワールドツアー】は、ライド筐体の中でも一風変わったゲームである! シートの前にはハンドルがあるんだけど、そのハンドルが特殊なのだ。
「いうならば、自転車の空気入れハンドル?」
丸型の車用ハンドルではなく、T字の持ち手が付いている。そして、足元には自転車のような漕ぎペダル……。
「うをッ!」
「……ぬ」
ガタンと座席が揺れれば、モニターの中では木の板のようなトロッコに乗った男女が、手でシーソーを漕ぎながら洞窟の線路を滑走していた。
「……なるほど」
「へ〜、交互にハンドルを上下することでスピードが上がるワケだ」
どうやらムービーを見る限り、ゲームの男女は悪者から逃げているらしく、捕まったらゲームオーバーらしい。
「じゃ幼女ちゃん! 行くぜ!」
「……おうとも」
「フンッ!」
「……せッ!」
「フンッ!」
「……セッ!」
タイミングよく交互にハンドルを上げ下げすると、画面の男女もそれに合わせてトロッコを漕ぐ。
「おぉ! いいね! なんか自分で漕いでる感覚あるよ!」
ガタガタと線路を進むたびに揺れる座席が、没入感を高める。この臨場感がライド筐体の醍醐味だな!
「フンッ!」
「……せッ!」
「フンッ!」
「「フンッ……セッ!」」
軽快にスピードを上げていた私達だが、タイミングをミスったようでモニターに危険マークが出る。
ギギギィイイイ!! という音が鳴り響く。
「うわわわわ!!」
「……むびびびび!!」
ガタガタと揺れるシートが私達を揺らす。
「……オバケ姉ちゃん! 今ミスったでしょ!」
「そっちが遅せぇんだろ!」
「……後ろきてる!!」
「うわー!! 漕げ!! 速く立て直せ!!」
「フンッ!」「……セッ!」
「フンッ!」「……セッ!」
お互いにレバーを上下させスピードを上げるトロッコ。
いや、結構疲れるんだけど!! アーケードゲームってたまに運動能力を試されることあるよね!
「前方急カーブ!!」
しばらく進んでいると、画面に危険マークが出てきて指示がされる。今回の指示は――。
「わ、私がペダルを漕ぐのか!!」
ギィイイイ!! と急カーブに差し掛かると、座席シートが横に傾く。その間にやることは――
「フンフンフンフン!!」
足元にある自転車のペダルのような物を漕ぐようだ。
今回は私が漕ぐようで、左右のカーブで漕ぐ人物が入れ替わるらしい。
暫くするとジャンプ台のような線路があり、座席シートが後ろに傾く。
「え、どうすんのコレ!!」
「……ふ、二人で漕ぐんだって!!」
「「うおおおお!!」」
ガチャンと揺れるシート。どうやらペダルの回転数が足りないと着地に失敗するようだね。
凄まじいスピード感とガタガタと揺れる筐体にテンションが上がる。
「うひゃひぃいいい!! 揺れる揺れる!!」
「……ぬひひひ…………おのれメガネ」
「あかん!! この子トロッコのゲームに変なスイッチ入ってる!!」
そういや遊園地でハイスピードトロッコに乗ったトラウマががが……。
暫く進むとどうやら一面をクリアしたようだ。
悪者を振り切ったようだね。画面にはクリアタイムが表示されている。
「ふむ、二面は……選べるのか?」
一つはトロッコの洞窟が続いている。もう一つは……何だコレ? 渓流コース?
男女がボートに乗って川を下っている面ね。
「幼女ちゃん、どっち行く?」
「……こっち」
幼女ちゃんは、ガコンと自分の方のレバーを下ろすと、線路の分岐が右に動いて分かれる。
ガッタンガッタンと洞窟を進んだ先に見える光を抜けると、急にガタンと振動がシートに伝わり。トロッコが落下する。
「あれ、これどーなんの?」
そして空中でトロッコが光ると、そのトロッコはゴムボートへと姿を変えた。
「あ、そんな感じ?」
バシャーン! と水飛沫を上げるモニター。
座席シートは今までのガタガタではなく、グワングワンという上下左右にゆっくり揺れる動きへと変わった。
「……ぬ、ボートか……おもしろい」
「今度はオールみたいにレバーを回すのね」
いいじゃない。協力型ライド筐体【ライドン ワールドツアー】。
なるほどワールドツアーってくらいだから色んな場所に行くんだね。
……面白れぇじゃん
――――――――――――――――――――――
クイック ウィンテッド……若造はため息を吐いて無機質な金属通路を進む。
向かうのは会議室。
別に会議があるワケではない。
昼ごはんを『小悪魔』たちに届けた後、作業をしていた若造は、次の会議の準備のために再び会議室に向っていた。
「……はぁ」
会議が憂鬱でため息を吐いているのではない……会議室にいる『小悪魔』に会うのが怖いのだ。
ただの子供にしか見えない……だが、決してそんなはずないのだ。
冷静になって考えれば分かる。
こんな会議室に軟禁されているのにも関わらず、彼女達は非常にリラックスして寛いでいる。
異常だ……自分たちが捕まっていることに危機感を覚えていないようだ。
そして、それを誰も疑問に感じていないのが恐ろしい……。油断している……ダン長も向こうの班ダン長も誰も彼も、『ただの子供』だとしか思っていない。
厄介な存在とは思っていても、あの子供たち自体が危険な存在だとは考えていないんだ。
そして……ふと気づくと、そんな自分でさえ『ただの子供』と思っていることに気づいて恐怖する。
だが、あまり考えすぎるのは良くないとも思っている。油断はしてはいけないが、あの二人は大人しいものだ。
下手に突かなければ何もしない……そんな感じは確かにある。居ないものとして扱うのが正しい気はしてくるのだ。
自分も何も考えずに過ごせばいい……と。
「……そう言えば……牢屋に物が増えていましたね」
考えない方がいい……。恐らく向こうのダンジョン側が用意したのだ。そう言い聞かせる。
たとえ、知らない家具が牢屋に増えていたとしても……なにも突かないほうが身の為なのだ。
深呼吸をしてガチャリと会議室の扉を開ける。
「フンッ!」
「……せッ!」
「フンッ!」
「……セッ!」
「…………」
なんか変な機械が牢屋の中にある……。
「フンッ!」「……せッ!」「フンッ!」「……セッ!」
そして、それに乗った小悪魔がすごい勢いで、レバーを上げ下げしている……。
「……」
気にしてはいけない……アレは、そう。向こうのダンジョン側が用意した……そう、何かだ。
若造は何も見えていないように、会議室のテーブルにプロジェクター用の機械を置く。
「……」
そして、椅子に座って頭を抱えた。
「……それは駄目でしょう……」
向こうのダンジョンが用意した家具。
「……」
「フンッ!」「……せッ!」「フンッ!」「……セッ!」
向こうのダンジョンが用意した家具?
「それは駄目でしょう!!」
いや、ムリあるわ。
家具じゃないもん。
何ですかソレ!




