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タッパでお持ち帰り

本日二話更新 こっちは一話目


「そうだ、明日仕事が休みになったんだ。だから前に言ってた近くの公園にピクニックに行こうか」

「あら〜、いいわね〜」


 夕食時パピィ〜が、さもいい事を思いついたぞとばかりに口を開けば、マミィ〜が両手を合わせて花の咲くような声で同意する。


 ほ? ピクニックとな?

 前にも言ってたって……あ〜、言ってたわ。


 近くつっても、外に出るのはなるべく避けたいから私と幼女ちゃんは行かねぇけどな。

 そろそろ、ほとぼりもさめた頃だろうから、気にしすぎっちゃあ気にしすぎなんだろうけどね。念の為よ。


「え!? そんな急に困るよ!」


 そこに驚き待ったを掛けたのが、我らがおねぇちゃんである、この家の正式なガキ……三つ編みちゃんだ。

 お、どしたん? キミ、ピクニックに乗り気だったじゃん。


「明日はティミットちゃんと遊ぶ約束してたんだよ!」


 ふむふむ、お友達と遊ぶ約束してたのかな?

 んで急にお父さんがピクニックとか言い出したからブッキングしちゃったんだね。そりゃ唐突なこと言うパピィ〜が悪ぃわ。

 でも、そう言うってことは三つ編みちゃんもピクニックには行きたいと。


「じゃあティミットちゃんも一緒にピクニックに行けばいいよ。ついでにお泊りでもどうかな?」

「え? いいの?」


「もちろんさ。相手の親御さんにも連絡入れとこうね」

「やった! 久しぶりにティミットちゃんがお泊りだ」


 三つ編みちゃんは飛び上がるほど喜んで、パタパタと走って行った。どうやらお友達の家に連絡をしに行ったようだね。

 お友達とお泊りってワクワクするもんね。


 まぁアレよ。私と幼女ちゃんの分まで楽しんでらっしゃいな。


「ふふふ〜」

「おやマミィ〜も楽しそうね」


 花畑マミィ〜は柔らかい笑みを浮かべながら、自分の指に触れて懐かしそうな顔をする。


「あら〜ふふふ、分かっちゃった? 明日行く公園ってね〜、お父さんが私にプロポーズした場所なのよ」

「はっはっは、恥ずかしいよ母さん。子供に何聞かせてるのさ」


 仲のいい夫婦やね……。


「懐かしいわね〜、公園の湖の畔だったわね〜。あの時のアナタったら随分と緊張しちゃって」

「そ、そうだったかな? 恥ずかしいなぁもう」


 パピィ〜は照れたように頭を掻いてソッポを向く。


 どうやら公園って言っても、私の想像している遊具とかある公園じゃないんだろうね。ピクニックができるとか湖があるっていうんだから、自然公園みたいな広い敷地なんじゃないかな?


 惚気ている夫婦を見て、私は心の中で軽いため息を吐く。


「……こりゃ……奪えそうもないね……」



 前に言ってたろ? この家の中に『収穫物』があるってさ。それね……マミィ〜が身につけてる指輪だよ。

 プロポーズの時にパピィ〜が渡したんだろうね。


 結婚指輪ってこった。


 流石にあんな大事にしてるもん盗めねぇし、盗んだら騒ぎになる。

 そもそも収穫物ってのは、ただ私の手に入ればいいってもんじゃねぇしな。所有権が私に移らないとダメなんだよ。

 この場合はマミィ〜から正式に、私にあげるという意思表示が必要なワケでぇ……。


「……子供だろうが結婚指輪をあげる親はいねぇな」


 結婚指輪を盗むとか寝覚め悪いうえにバレたらシャレにならん。


「……今回は諦めるしかねぇな」


 まぁ、しかたねぇしかたねぇ。そもそも、収穫物の定義も分からんしな。

 前はダンジョンから出土したテーブルだった。

 んで今回が夫の送った指輪ね。


 幼女ちゃんの話ではテーブルは何の変哲もない物だったらしいし、私だけが領域畑内に収穫物として認識できるって感じだ。


「ん〜……感情と関係があるのか……それとも全く関連性なんてない適当な物って可能性も……」


 明らかに魔力的に特級っぽい、幼女ちゃんの『天然コア』ですら私にとっちゃ石ころだしね。

 これ以上考えても分からんか。


「ご馳走様ッス」

「……おそまつ」


 晩飯を食べ終わった私達は椅子から降りる。


「ティミットちゃんに連絡してきたよ! 向こうの親御さんもいいってさ。よろしくお願いしますって伝えてって言われた!」

「はっはっは、よかったねアムネシア」


「うん、楽しみだな〜。ティミットちゃんと何して遊ぼうかな!」


 一足先にご飯を食べ終わっていた三つ編みちゃんは、私達が部屋に戻るのと合わせて歩き出す。

 鼻歌なんか歌っちゃって上機嫌だ。


 そして階段を上がる私達の後ろでニコニコしながらスキップでもするように駆け上がってくる。


「ティミットちゃんが泊まりに来たらお部屋で、一緒にパイプモニター見てから」


 そして、私達と一緒に部屋に入ると……

 


「コイツらどーしよッ!!」


 床に手をついて項垂れた……。


「忘れてたッ!! 部屋に妖怪が住み着いてたの忘れてたよ!! なんて説明すればいいのさ!!」

「お、おう……」


 な、なんかスマンね。

 床に蹲ったまま絶叫する三つ編みちゃんに私達はドン引きしてしまう。


「どうしよ!? キミたちの存在ってどーなってんの? 家族以外にはどー見えるワケ!? 不自然に増えた妹をどう説明すればいいの!?」

「え、え〜っと……」


 私の服に縋り付いて目を血走らせる三つ編みちゃんの疑問に困って、幼女ちゃんに視線を向ける。

 そ、そこんとこどーなってんすかね? 幼女博士ぇ……。


 幼女ちゃんは『……ん〜』と考えて首を捻ったあと、両手広げて――


「……ん!!」


 バッテンを作った。


「それどう言う反応なの!? ダメってこと!? ダメなら何が駄目なのか説明して欲しいんだけど!」

「……定員オーバーです」


「何が!?」


 ま、そうよね。

 三つ編みちゃん的には、居ないはずの妹の説明なんてできない。すっごく困るよね。


 対して私達は、両親みたいに催眠術で誤魔化すことも出来ない。なぜなら両親二人の催眠術で定員オーバーだから。

 つってもね。対処は簡単!

 というかソレしかない。


「安心してくださいよ。明日になったら私達は隠れてますんで、お友達と存分に楽しめばヨロシかと?」

「え? 隠れてるの? ピクニックには?」


「参加しませんよ。予想はしてたでしょ?」

「まぁ……そうだけど……」


 何故か不満気な三つ編みちゃん。

 ん〜……私達を置いてピクニックに行ったりするのが後ろめたいのかな? だとしたら純粋で優しい子だね。

 でも、そんなもんは子供の理屈だよ。


 ピクニック、そりゃ楽しそうだね。

 でも、私達は外に出るという状況が安心できないんだよ。

 楽しむどころじゃねぇのよ。ま、行ったら行ったで楽しむけどね。

 だからキミは自称妹のインベーダーの事は放っておいて楽しんできなよ。


「んぅ……分かった」


 それとなく伝えれば、渋々でも納得したようで頷く。


「お父さん達は二人が居なくても、不審に思わないかな?」

「……もんだいない。前にもいったが、居ない物が居なくても気にしない。食事の時に、わたし達が居なくても気にしないのといっしょ」


 らしいッスよ。

 まぁ気にしなくても私達は明日はクローゼットに引っ込んでますんで。


「つーことで、コレ渡しときますね」

「……何コレ?」


 私はまだ後ろめたそうな三つ編みちゃんに、ある物を渡す。


「タッパですね! 弁当の残り詰め込んどいて下さいな!」

「タッパ!?」


 晩飯にすっから。

 たぶん今頃マミィ〜がオードブルでも注文してるよ。


 私達はタッパを手に持って、微妙な顔をしている三つ編みちゃんを尻目にクローゼットへ消えていった。

 

 


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