閑話 雪の感情
私はいつものように古書店で荷物の梱包をしています。
「今日は祐樹さんに問い詰めないといけませんね。どうして私の下着の色がどうしてわかったのでしょうか」
祐樹さんもそのような年齢ですからしょうがないですが、それでもそういうデリケートな話はダメです。ただ、私もいつかそのようなエッチなことをするのでしょうか?彼氏が初めてできたので分かりませんが、祐樹さんも男の子でしょうから。
「いえ。今は梱包作業に集中です。祐樹さんが来てから考えることですから」
そうして私は黙々と梱包作業をします。本を傷つけないようにビニールで包み、箱の周りにはスポンジを置き、本はスポンジに囲まれるように置いて箱をガムテープで留めて完成です。
「いつの間にか夕方ですね。もうすぐ祐樹さんも来ますからカウンターで一息つきましょうか」
私はそう思い立ち上がった時にスマホが鳴りました。
「誰からでしょうか?」
画面に表示されていたのは日向さんからです。それなら出ないといけませんね。
「はい。雪です」
『雪か。繋がって良かった』
「どうしたのですか?」
『気を強く持って聞いてほしい』
「何でしょうか?」
『祐樹が車に轢かれて意識がないらしい。私もまだ状況を詳しく把握できていないのだが、先ほど病院から連絡があって知ったのだ』
私は目の前が真っ暗になるような感じがしました。嘘であってほしい。祐樹さんでなくてほしい。そんな思いが駆け巡ります。
「ほ、本当なのですか・・・?嘘ですよね・・・?」
『私も嘘だと言いたいが全て事実だ。今、詩乃をそっちへ向かわせている。詩乃の車で病院に行くといい』
「わかりました・・・」
私は急いで古書店を閉めて必要な荷物を持ち、詩乃さんの車が来るのを焦る気持ちを抑えながら待った。
「・・・ごめん。待たせた」
「大丈夫です。それより行きましょう」
「・・・わかった」
私は車に乗り、詩乃さんからも話を聞く。
「祐樹さんは大丈夫でしょうか?」
「・・・わからない。だけど信じる」
そうですね・・・。なんか私が一番落ち着きがないですね。焦っても仕方ないのに、この感情を抑えることは簡単ではなさそうですね。
「・・・私も落ち着いていない。内心焦ってる」
「さすがですね。私の気持ちを読み取りましたね」
「・・・カウンセラーだから。みんな不安だから」
出会ってまだ時はそんなに経っていないのですが、こうも簡単に気持ちを読み取るのですね。そして私の気持ちも少しは収まりました。
「・・・もうすぐ着く」
「わかりました。すぅー・・・はぁー・・・」
深呼吸して覚悟を決めます。どのような結果だとしても最後まで祐樹さんの隣にいるということを。
「・・・着いた」
「では、行きましょう」
私と詩乃さんは、走りながら病院に入る。そして看護師さんに祐樹さんの場所を聞き、その場所へ走って向かいます。
そして祐樹さんがいる部屋の目の前に来ました。
「失礼します」
私は部屋に入り祐樹さんの姿を見て息をのみます。
「っ!?これは・・・」
「来たようだね」
「日向さん・・・」
日向さんの方を見て、私はどういう状態なのかを聞きたいのですが、あまりにもショックで声が出ません。
「祐樹の状態は、左腕の骨折。肋も一本折れていて肺に損傷があるらしい。頭部からは出血があった。今は適切な治療で命に別状はないらしいが、全部完治するのはかなり先らしい」
「そうですか・・・」
私はどう反応していいか分かりません。命が助かったということを喜んでいいのでしょうか。それとも・・・。
「ごめんなさい・・・」
「え・・・?」
そこで私は初めて、椅子に座って俯いている女の子に目がとまりました。
「この子は?」
「ふむ。少し長くなるが、祐樹の事故の状況を話そうか」
「お願いします」
そうして私は、日向さんから話を聞き全てが分かりました。
祐樹さんはここで俯いている女の子を助けて轢かれたらしいです。女の子の名前は霧島香織さんです。
霧島さんは信号無視の車に気付かなかったらしく、祐樹さんに突き飛ばされた後に気づいたそうです。
事故の直後、車は逃げたらしいですが目撃者がいっぱいいたらしく、犯人逮捕まではそれほど時間がかからないらしいです。
「そうですか。霧島さんが無事で良かったです」
「だけど、香織は・・・」
「大丈夫ですから」
霧島さんは何も悪くありませんから。私は霧島さんをそっと抱きしめてあげます。この子を祐樹さんを轢かせてしまったという責任に押しつぶされないように。
「香織は・・・香織は・・・」
「がんばりましたね。もう大丈夫ですから」
優しく頭をポンポンします。
「ごめ゛んなさぁぁぁぁぁぁい。うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私の胸の中で霧島さんが大泣きしますが、私は気にせず優しく抱きしめたままでいます。きっとここまで泣かずにずっと我慢していたでしょうから。
「大丈夫です。よしよし・・・」
しばらくすると、泣き止みましたがどうやら眠ってしまったようです。随分と可愛らしい子ですね。祐樹さんはこんな風に、素直に感情を向けてこないですからね。
「日向さん、そっちの椅子を持ってきてくれませんか?私も中腰で抱きしめたままはきついですから」
「了解した」
日向さんは私の近くに椅子を持ってきてくれたので、私も座り霧島さんを膝枕で寝かしてあげます。
「すまないな、雪」
「なにがでしょうか?」
「霧島香織を任せてしまったことを」
「いえいえ。この子はとっても良い子ですから大丈夫です」
私はそっと霧島さんの髪を直してあげます。
「・・・これからどうする?」
「そうですね。祐樹さんも無事だと分かったので、交代で面倒みましょうか」
「そこは雪に任せる。私と詩乃は学校に報告しに行く」
「わかりました」
詩乃さんと日向さんは病室を出ていき、残ったのは私と眠っている霧島さんです。
「祐樹さん・・・女の子を泣かせた責任は重いですから」
私は二人が目を覚ますまでのんびりと待った。
お久しぶりです。なんか急に評価が上がってきていてビックリの今日この頃です。さらにお気に入り200件突破です!本当にありがとうございます!!
今回は雪の視点で書かせてもらいました。上手く書けているかはわかりませんが・・・。
みなさん評価ありがとうございます。
感想・評価お待ちしております。お読みいただきありがとうございます。




