ボッチのバイト
俺はバイト先でもある古書店に来た。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
挨拶をしてくれたのが、古書店の店主である白石 雪さんだな。この人は優しくてお淑やかで世話好き、さらには美人。ただ結婚出来ていないのは、超が付くほどのマイペースだからな。見た目は泣きぼくろと後ろで一つに髪を括っていることぐらいだな。
「今日はどんな感じですか?」
「いつも通りです。古書の梱包も終わっていますのであとは、宅配の人待ちです」
「分かましたよ。なら俺はネットで注文された古書と引き取った古書の確認してきますね」
「えぇ、お願いします」
相変わらず、本からは目を離さずに会話をしているが、毎度のことだしそれが雪さんらしいからな。
さてと俺も自分の仕事をはじめますか。まずはパソコンでネット注文の確認と昨日の売り上げの表を作らないとな。
「今日は注文は68件か。いつも通りって感じだな」
数は少ないが、古書だけあって1つの価格が基本的に高いからな。それに、ここはネット注文で儲かっているようなものだしな。来店する人は一日に10人ぐらいしな。しかも9割が古書を売るための来店だしな。
俺は注文された古書のリスト作りをしないとな。こうやって一人で黙々と作業するのは好きな方だし、苦痛には感じないんだよな。なにより、ボッチの俺には最高の環境なんだよな。まず同級生は絶対に来ないし、教師もこんな所にはこないしな。そして休憩のときにはパソコンを自由に使えるんだぞ!しかも最新のパソコンだから、スペックも全く問題なし!最高だな。
「祐樹さん、そろそろお昼ごはんですから一緒に食べませんか?」
どうやら、表作りに熱中しすぎてお昼の時間になっていたらしいな。
「はい、自分も頂きますね」
「えぇ、ではリビングで待っていてください、準備しますから」
「すいませんがお願いします」
古書店兼雪さんの家だから、扉一つで区切られているだけだしな。だから、土日や学校が昼前で終わった日は、雪さんがお昼ごはんを作ってくれたりする。美人の手作り料理は最高だな。しかも美味しいし。
さて、リビングに着いたしいつもの場所に座り雪さんを待った。この待つ時間も好きな方だしな。
「祐樹さんお待たせしました」
「全然待ってないですから、大丈夫ですよ」
そうして、雪さんは持ってきたお盆から、ご飯、味噌汁、漬物、卵焼き、焼き鮭がテーブルに並んだ。
「今日は和食ですね。とっても美味しそうですよ」
「ありがとうございます。どうぞ食べてください。頑張りましたので」
「いただきます」
俺は最初に焼き鮭を一口食べた。
「どうですか?」
「良い感じの塩加減でとっても美味しいですよ」
俺がそう言うと、雪さんの顔は華が咲いたような笑顔で喜んでいる。美人の笑顔は何度見ても飽きないからな。
「祐樹さんは3日間何をされましたか?」
「基本的に家でゴロゴロって感じですね。課題も終わっていましたし、特にやることもなかったので。強いて言えばクッキーを作ったぐらいですね」
そう、昨日までの3日間は古書店自体が休業だったから、自然と俺のバイトも休みになったんだよな。やることがなさ過ぎて死にそうだったな。まぁー2日目にクッキーを作ったぐらいかな。ボッチの俺に休日があっても、遊ぶ人がいないから出かけることもない。寂しいとは思わないぞ!
「どんなクッキーを作ったんですか?」
「普通のチョコチップクッキーですよ」
「食べてみたいです」
そんな風に笑顔で見つめられて言われると、ふつうの男なら気があるんじゃないかって勘違いすると思うぞ?俺はボッチなので、こういうのでは騙されません。
「じゃあ今度作ったら持ってきますよ。いつもお昼ごはん作ってもらっていますから」
「楽しみにしてますね」
そういわれたら、こっちも気合を入れて作るしかないだろうな。まぁーいつも世話になってばかりいるし、こんな時ぐらいは真面目にお返しをしないといけないだろうな。
「楽しみにしていてください。頑張って作ってきますから」
「はい。では、作業に戻りましょか」
「そうですね。では、表を作ってきますね」
「はい、お願いします」
楽しい昼食も終わり、また俺は自分の作業に戻った。
しばらく作業していると、新たな注文が入った。現在は14時59分で、注文受付終了が15時までだしな。
「ん?えらいギリギリだな。まぁ問題ないし、内容だけ確認だな」
俺は注文の内容を見てみると、目を見開くほど驚いた。
「名前は東條咲良か・・・って東條咲良!?生徒会長じゃねぇかよ!なんで、金持ちお嬢様が古書を求めてんだ?」
俺は疑問に思って注文された本を見てみた。
「『偉人から聞く。同性愛』ってどんな古書だよ!?こんなん古書がこの店にあるのかよ!?」
いやもうどこからツッコんでいいのか分からんぞ!生徒会長は同性愛なの!?これは古書になるの!?
「どうしましたか?祐樹さん」
どうやら驚きすぎて、大きな声を出し過ぎたようだな。雪さんに気付かれてしまったしな。
「あ・・・いえなんでもないです。ちょっと驚いただけですから」
「そうですか。それで表は作り終わりそうですか?」
「もうこれを入力したら終わりなので、もう完成しますよ。一緒に売上表も渡せると思いますので」
「では、向こうで待っています。焦らなくていいですから」
「ありがとうございます」
どうやら、内容までは知られていないし問題ないな。それにしても生徒会長の闇の部分を見てしまったな・・・。まだ同性愛とは決まったわけではないからな!うん!そうだな!無理やり納得させるしかないってな・・・。
「いいや。さっさと仕事終わらせてのんびりしよ」
なんかもう疲れたし、これだけ終わらせて雪さんの隣で読書でもして、時間を潰すしかないな。
俺はさっさと終わらして、表を印刷して雪さんに渡しに行った。
「雪さん、出来ましたよ。こっちが先週の売り上げ、こっちが今日注文された古書リストです」
「ありがとうございます。では、今日はもうやることがありませんね」
「そうですね。今日は自分ものんびり読書しようと思うので、隣に座りますね」
「えぇ、どうぞ」
俺は雪さんの隣に座り読書を始めた。
「「・・・・・・」」
しばらくすると、猛烈な睡魔が襲ってきたが、我慢しないとな。まだ一時間以上あるのに・・・ダメだ・・・眠い・・・。
「祐樹さん?」
「・・・」
「寝てしまいましたか。ならこうすればゆっくり寝られますか?」
「んぅ・・・あれ・・・?」
目を開けると俺は横になっていた。どういうことだ?とりあえず周りを見渡してみて、上を向くと雪さんと目があった。
「祐樹さんゆっくり寝られましたか?」
まさか!?俺は瞬時に状況を理解してしまった。雪さんの膝枕で寝ていたということに。
「雪さんすいません!!」
俺は急いで飛び起きて、雪さんに謝った。それにしてもめっちゃ恥ずかしんだけど!?ボッチにはこういう耐性はないので、心臓が飛び出しそうだぞ。
「気にしないでください。祐樹さんもお疲れでしょうから。もうお店も閉める時間ですから、祐樹さんも今日は家でのんびりしてください。明日から学校が本格的に始まりますから」
おう・・・。無駄に気を使わせちゃったぞ。本当に世話になりっぱなしだな・・・。これは真面目に本気でクッキーを作らないと。
「本当にすいません。じゃあ今日はこれで上がらせてもらいます。また明日来ますね」
「はい。ゆっくり休んでください」
「はい!お疲れ様です」
「お疲れ様」
俺は荷物をまとめて、古書店を出て帰宅を始めた。
雪さんみたいな美人で世話好きで、優しい人はこの世にいるんですかね?幻想の塊のような気がしてきます。
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