第二話 天使の潜在能力
「わかりました。ありがとうございます。あなたを採用させて頂きますね。遅れましたが、私はこのユメノプロダクション、社長兼総マネージャーの夢野 昇です」
「昇さんですね。よろしくお願いします」
「一応、ここの社員としては私一人です。あとは外部協力者が数人いますが」
「そうなんですねー。大変ですねー」
そういって少女は全然大変そうには感じている様子はなかった。
「さっそくですが、まず、芸名ですが、どうしますか?名前みたいなのはないんですか?」
少女は少し考える素振りを見せて、
「一応、呼び名といいますか、L738って言われてます」
「L738、名前なんですか?」
少女は少し慌てて
「いえいえ、識別番号みたいなものです。上位の天使様しか名前は頂けない決まりなので」
「そうなんですね。そしたら、それはあとで考えましょうか。ダンスとかできますか?もちろん、飛ぶのはなしで」
「多少なら同僚の天使たちと踊ってました」
少女は立ち上がり、その場のクルクル回ったり、左右に揺れるような動きを見せた。
ダンスというものではなかったが、天使が舞っているような(実際天使なんだが)不思議な魅力があった。
「ありがとうございます。では、歌はどうですか?」
「歌は大好きで、良く歌ってました。」
「なにか一曲聞かせていただけますか?」
「はい!もちろん」
そう言って少女は姿勢正し、手を胸の前で揃えて息を吸った。
「ねーんねん、ころーりーよー♪。おこーろーりーよー♫」
最初はなんだ、童謡かと思って聞いていた。
しかし、その歌声を聞いていると心が揺さぶられるような、温かくなるような感覚に陥っていた。
「ありがとうございます。ちょっと待ってて下さい」
俺はすぐに歌を止めて、協力者の一人に電話かけた。
プルルル、ガチャ
「もしもし、すまない。大至急の依頼だ!今すぐ曲の依頼をしたい。作詞作曲両方だ。頼む」
「あぁそうだ。逸材だ、わかった。すぐに来てくれ。」
そう言って俺は携帯を切った。
「すみません。協力者があなたの歌を聞きたいとのことですぐいますので少しお待ち下さい」
俺は少女に説明し、椅子にかけてもらった。
数分後
バターン。
会議室の扉が勢いよく開き、金髪にサングラスをかけ、チンピラ風の男が入って来た。
「昇!なんか逸材見つけたって本当か?ん?この子?」
この男は見た目はアレだが、ウチの会社の協力者で作詞作曲を依頼している。ウチ以外に大手や有名歌手からも依頼される程の実力者だが、幼なじみというのもあり、格安で仕事を引き受けてくれるいい奴なのだ。
「おい!入ってきていきなりそれは失礼だろ。ちゃんと自己紹介しろよ」
俺は幼なじみに注意し、自己紹介を促した。
「おー、わりーわりー。俺は昇の幼なじみで作詞作曲の仕事を引き受けてる川部 篤ってもんだ。よろしくな嬢ちゃん」
篤は少女に笑いかけるとこちらに来て置いてあった椅子に座った。
「とりあえず、嬢ちゃんの歌声聞かせてくれるか。話はそれからだ」
「わかりました。歌いますねー」
少女はもう一度歌い始めた。
篤の反応は俺と同じく最初は少しがっかりした様子だったが、だんだんと目の色が変わっていったのがわかった。
「おい、昇。こいつは当たりだぜ。やべーな。インスピレーションがどんどん湧いてきやがるぜ」
「篤、任せていいか?」
答えのわかっている質問を俺はあえて聞いてみた。
「当然だろ、むしろ俺様以外に嬢ちゃんの曲は書けねぇぜ。待ってろすぐに仕上げてやる」
そう言って篤は部屋を出て行った。おそらく自宅で仕事にかかるのだろう。あいつはそういうやつだ。
「ありがとうございます。ところで、名前なんですが、」
俺はそこで区切り、歌を聞いた時のイメージからある名前が浮かんでいた。
「月夜 エルシィはどうですか?」
「月夜エルシィ?とっても素敵です!ありがとうございます」
少女もとい、エルシィはキラキラの笑顔を見せてくれた。
つづく




