一見は落着
あれから2週間。
表向き、なんの問題もなかったという形だけの解決に、やはりそれは無理があると言う貴族が出たが、俺とベルの大芝居を知っては声高になれず。それでも、と皇王様にすり寄ろうとしているらしいが、被害も出ていないのに問題になるわけもなく、何事もない日々が続いている。
広場の屋台や受付嬢たちから聞いた話じゃ、兵士の横暴な振る舞いも多少は鳴りを潜めたようで、くさい芝居だったが・・・やるだけの意味はあったってことだろう。
逆に、ジェイド達はあれから一度も見ていない。
立場的には被害者ということにはなったが、事件を起こしたことと命を危険にさらしたことに変わりはない。
その事実が本人を諦めさせたか、あるいは親の意見かは知らないが、冒険者パーティー”栄光ある騎士団”は今尚、ギルドに顔を出してはいない。
その冒険者ギルドだが・・・この2週間で一番忙しかったのは間違いなくここだ。
まぁ、当然だ。
ギルドの管理不足が露呈したわけだからな。
ギルド内の様々な情報の洗い出し、すり合わせ、引き継ぎ、調整、始末。それらは2週間で終わるような作業じゃないが、やらないわけにもいかない上、手を抜いているようにも見られてもいけない。必然、通常の業務も休むことなど出来ない。
そのせいで職員たち右へ左へてんてこ舞いだった。
傍から見ていた俺だったが、
「暇そうだね? お兄ちゃん?」
ゆかいな仲間に見つかって、幾つかの不良債権をつかまされることになった。
今回の問題になった調査依頼よろしく不審なものばかり、報酬が下限ギリギリのきつい依頼、内容が判然としない調査依頼、誰もやりたがらない下水道探索依頼などなど。
やってみりゃ全部どうってことはねぇ依頼ではあった。下水をたっぷり吸った汚物スライムの相手なんざ、誰もしたくねぇだろうがな。
駆け出しならともかく、C級パーティー2組でもこなせる程度のもの。ただし、全部単独依頼だったが・・・。
B級が受けるような内容でも金額でもなく、かといってC級パーティーが単独で受けるような依頼でもないってのが、誰かしらの意図を感じるところではあるんだが・・・。
その誰かしらに行きつくようなこともなく、ただの不釣り合いな依頼で終わった。
こっちも懐が寂しいってのに、実入りも寂しいとは笑えねぇ。
引退した時と比べりゃ手持ちは10分の1以下だ。
というのも、今回のギルド側の負債と人手不足解消の為に人員募集する時の運用資金を俺と教官の持ち金から穴埋めしたからだ。
ギルドにも運転資金ぐらいあるが、所属冒険者全員を招集する緊急依頼で、道具類まで全額負担したんだから、足りるはずもない。
素材全てを売り払って、冒険者全員に報酬を出して、道具類の買取費用を照らし合わせると・・・それはもう、生足魅惑のマーメイドだ。
「ゼネス・・・・・・頼みがある・・・」
世話になったいい年をしたむさくるしいおっさんに、今にも泣きそうな顔で言われちまったら、なぁ?
「はぁ・・・どうすっかな・・・」
ギルドのすぐそばの広場でベンチに座って空を仰ぐ。
給料が入っても金がねぇ。
仕事なんざやっても固定給だし・・・いっそ冒険にでも出るか? と思わなくもないが、引退したやつがしゃしゃり出てどうする? なにより、ヨハンとリミアを放っていくわけにもいかない。どうなるかわからんが、ジェイド達のことも。
そんなこと、わかっちゃいるんだが・・・。
「あいつら、どうしてんだろうなぁ・・・」
手元にあるのは二通の手紙。
教会と実家。
出来るだけ、どちらとも関わりたくなくて、旅に出たんだ。
だから、今は遠く、離れたパーティーを思う。
当てのない自由を。
とりあえずここまでが1章になります。
え? 長すぎ? 私もそう思います!




