side-ヨハン
活動報告にも書いたけど、まだ二章が始まるとは言っていないぜ!
ということで総集編のような ヨハン視点をどうぞ。
初めは・・・不安で仕方なかった。不安しかなかった。
僕はいらないんだと言われた。
使えないと捨てられた。
それでも、最低限貴族の体面として貴族学園に入れられた。
なにも知らないまま、なにも分からないまま、学園に通った。
けど・・・家にいるよりはよかったなって、今なら思える。
卒業の日。
家族は来なかった。
ただ、使用人だけが来て手紙を渡されたんだ。
後は好きに生きろ。
それだけが書かれた手紙を。
僕にはどうすることも出来ないまま、漫然と冒険者になった。
他にお前のようなガキを受け入れるところなんかない。
そう言われたからだ。
冒険者のことは知っていた。
時間ばかり持て余していた僕に夢を見せてくれたのが、図書館にあった冒険譚を基にした書籍だったからだ。
だから、指導を受けられると言われたときにはすごくドキドキした。
そうして出会ったその人は・・・怖かった。
隙がない様に思った。
それでいて、他の大人たちと同じように、つまらない顔をしていたから。
その日はその人を怒らせて終わってしまった。
まだわからないことばかりなのに・・・。
そう思ったのは僕だけじゃなかったみたいで、同級生のリミアと一緒に次の日、会いに行ったんだ。
僕たちは街の外に連れ出されて、そこで色んなことを教えてもらった。
これから必要になること、それと・・・僕自身のこと。
家のことで泣いちゃったのはいつ以来だったかな・・・? 学園ではなんでもない振りをしてたから、なんにもないことにしてたから・・・。
ううん、違う。
本当になんにもなかったんだった。
そんな僕を見て、言ったんだ。
誰にも文句を言わせない生き方を教えてやるって。
その日から僕に先生が出来た。
それから・・・急にいっぱいの出来事が起こった。
戦い方を決めて、装備をもらって、事件が起こった。
大勢の冒険者の人が集まっていて、どこにいればいいのかもわからなかった。
しばらく広場にいると先生が来て、無理せず誰かの後ろで邪魔にならないようにしていればいい、と言ってくれたんだけど・・・ギルドマスターさんとなにか話したあと、僕たちは誰かの後ろじゃなくて、先生の後ろにいることになった。
先生ともう一人、A級パーティーのリーダーという人と一緒に行くことになった。
木から木に飛び移って移動するのは怖かったし、難しかったけど、慣れたら結構楽しかった。先生の魔法のおかげだ。
目的地に着いてからは先生のことを見ているだけだった。
遠くで戦ってる先生は・・・たぶんすごいんだと思った。
なぜかと言えば、周りのA級パーティーの人達が驚いたり、感心したりで声を上げていたからだ。
僕から見たら・・・なにをやってるのか全然わからなかった。
遠くてよく見えないし・・・あぁでも、模擬戦の時は近くにいたけどなにしてたのかわからなかったから、そういうものなのかもしれない。
最後も周りを驚かせ、それでいて先生自身は何事もなかったようにジェイドさん達を連れ戻した。
最初の指導の日に先生を怒らせた人で、学園でもあまりいい噂を聞かない人だったけど、怪我がなくてよかった。
先生とサンさん・・・でいいのかな? A級リーダーの人が話し合って、また僕たち4人で行動することになった。
ギルドマスターさんのところにつくまでに僕たちを鍛えると言われた。
ついで・・・なんだって。
モンスターと戦ったのは初めてだった。
大きな蟻。
確かにその通りなんだけど・・・そうじゃなかった。
遠くから魔法で攻撃しているリミアが羨ましかった。
だって、近付くとこっちを見るんだ。
当たり前だけど・・・敵だと認識されるだけでこんなに怖いんだと知った。その視線だけで体が震えるなんて・・・考えたこともなかった。
でも、何度か繰り返していくうちに体の震えは止まった。怖いのは変わらなかったけど・・・。
ギルドマスターさんのところまでやってきて、驚いた。それはもう、すっごく。
だって、女王蟻が大きいっていうのは聞いてたけど・・・そんな小さめの建物みたいな大きさだなんて思わないよ。
どうしよう? なんて言う暇なかった。
周りの蟻を掃除しろと先生は言った。
ここに来るまでにやっていたことなら出来るだろ? と、そういうことだ。
だけど、リミアが抗議した。
それだけじゃ嫌だって、そんなんじゃ足りないって、僕には考えられないことだけど・・・先生が僕に聞いた。
お前はどう思う?
あの一際大きな女王が怖い。
僕なんかに出来ることはないんじゃないかって・・・でも! それでも! リミアがそう言うんだったら、僕だって行かなきゃ! 仲間なんだから!
それで作戦はすぐに決まった。
結局、女王に直接攻撃したりはしないことになった。
僕としては一安心だったけど、リミアはどう思ったんだろう?
ただ、遠く離れてじゃなくて女王が指示を出す無数の蟻と戦うみたいで、すごいと思うし羨ましくもあるけど、大丈夫かな? とも思った。
A級リーダーさんが守ることになってるし、心配するのは失礼かもしれないけど、知っている人でもないから・・・。
僕は先生と一緒に女王に近付く。
先生の魔法と僕のギフトでなら見つからずに近付けるかもしれないって言うからだ。もちろん僕は近付くだけ。
これは、先生の戦いを近くで見たいといったからでもある。特等席だね。
確認が済んだらそのまま作戦が始まった。
二人が攻撃を仕掛けると同時に、僕と先生は走り出す。
女王までもう少し、というところで・・・まだ蟻がいた!
ここで戦っていいのかな⁉ そう思って、先生を呼ぶと、
雑魚は任せるぞ!
返ってきたのはまさかの言葉。
期待なんて、されないと思ってた。
信頼なんて、失くしたと思ってた。
要らないと捨てられた僕が‼ 今‼ 必要とされたんだ‼
真正面から攻撃した。
先生の邪魔はさせないと。
けれど、違った。
格が違った。
蟻は目の前で攻撃を仕掛けた僕なんかには目もくれず、走り抜けようとする先生だけを敵として認識していた。
とっさに罠を起動して投げ、動きを止める。止まらなかった蟻を先生から近い順に魔法で撃っていった。
先生の強化魔法のおかげだと思う。
速く強く鋭い魔法が突き刺さっていく。
なのに・・・その瞳に映っていたのは、先生だけだった。
駆け抜け、女王の懐に飛び込んだ先生は一言、なにかこぼして右腕を構え・・・、次の瞬間には光を放っていた。
空に溶けるような青白い光が全てを貫き、やがて音と風が訪れる。
力強く吹き荒れるそれが、僕にはあまりにも衝撃的だった。
桁違いだと思い知らされた気分だった。そうはなれないと。
でも、そんな人が僕の先生なんだと気付かされて・・・そうなりたいと、思った。
次はリミア視点の予定です。




