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side-ギルドマスター

 やらかした。

 朝一番に緊急招集たぁどういう了見だと思ったが、部屋を出て階段を下りた先の扉を開いた時には、あぁ・・・それだけのことがあったんだなと、必死の形相で駆け回るギルドの連中を見て、腑に落ちた。

 ワシが下りてきたことに気付いたゼネスの奴に見せられた依頼書は、目ん玉飛び出るぐれぇのもんだった。

 とある商会からの調査依頼。調査対象は蟻。依頼日はなんと3か月前。

 ありえねぇ失態だ‼ こんなことはあっちゃならねぇ! だというのに! 現実にそんなことが起こってやがる!

 ワシが来るまでに調べておいてくれたんだろう報告書から、依頼を受けた奴は3か月前にやめた職員で、報酬なんかを決めたのもそいつだってことが分かった。つまりこいつぁ誰かが仕組んだってことだ。

 だが、今それについて詳しく調べてる暇はねぇ。


 ワシはすぐ、商会ギルドに向かった。商会ギルドにつくなりゼネスの名を出した。自分の名を使えと、奴がそぉ言ったからだ。そのおかげか、たいして待つことなくサンパダという男が出迎えてくれた。

 その男はマンサ商会とかいうところの商会長らしく、依頼を出してた商会の人間に手早く確認し、間違いねぇという確証と当時なにがあったのかっつー説明までしてくれた。

 その上で、

「それよりも、冒険者ギルドの貯蓄は大丈夫でしょうか?」

 などと、こっちの懐具合にも気を回す・・・相当できるぞこいつぁ。

 ゼネスの奴、いつの間にこんなんとパイプ作ってやがったんだ? そう思ったが、今はそれもありがたい。

「あまり言いたかねぇが・・・大丈夫ではねぇなぁ」

「そうですか。それでは私共に一任していただけるなら、色々とご協力させていただきますが・・・?」

 一任っつーのがどこまでなのかわからねぇが、協力ってのは補給のことだろう。支払いを安くするとか、ツケを利かせるとかしてくれるっつーこったろうが、そこまでさせるのは辺境伯の力か? それとも、ゼネス自身への貸しか? とはいえ、渡りに船には違ぇねぇ。ゼネスの奴もここまで見越して名を使えっつったんだろうしな。

「よろしく頼む」

 そう言って頭を下げると、お任せくださいと固い握手を交わした。

 最後に、依頼元を商会から冒険者ギルドへと改竄する手続きと口裏合わせを行って外に出た。こうしておけば、冒険者共が自分は関係ないと言って逃げるのを防げるだろう。小賢しいが仕方ねぇ。蟻掃除となりゃぁ人手が必要だからな。


 急いで冒険者ギルドに戻れってみりゃぁ、予想通りに逃げようとしてる奴がいやがった。いいタイミングだぁ。ワシは絶対に逃がさんぞ? 今回の任務は全員強制参加だ! そいつらの首根っこを引っ掴んで中へと割って入った。

 事情説明を終えて、作戦会議って時に・・・ゼネスの奴、口元に手を当てて足元ばっか見てやがる。ありゃぁ考え込んでる時の癖だな。昔っから変わりゃぁしねぇ・・・が、今はこっちが最優先だ!

「ゼネス‼ お前さんはどう思う⁉」

 声をかけて引っ張り戻す。

 作戦会議は悪くねぇ。最近A級に上がった”蒸気の騎乗者のリーダー・サンが活発に意見を出してるのがこれからを期待させてくれる。だが、ゼネスお前さんがそれじゃぁいかんだろぉが!

 包囲は確かに安全だ。手堅く、確実性がある。

 けどそれじゃぁ駆け出しパーティーの連中はどうする⁉ 話を聞く限り、心配しなくてもいい存在でもなければ、助かるかどうかも危ういんだろう⁉

 それでもお前さんがやると言わんなら、

「そんならゼネス。お前さんがやりゃぁいい」

 ワシが無理にでもやらせよう。

 模擬戦の時もそうだったが、お前さんに一体なにがあった? 皇都に戻ってから・・・ずっと様子がおかしいじゃねぇか! 昔はもっと! 出来る限りを精一杯やってたじゃねぇか!

 なにがあったんでも構わねぇ!

「お前さんなら出来る。そうだろう?」

 無理だなんて言わせねぇぞ⁉ 今まで色んな連中を見てきたが、お前さんの才能は圧倒的だ! 初めて会ったその日に、ワシは自分になにが出来るのか考えるようになった! それほどまでに魅せられた! だから今も信じてんだ‼

「お前さんの力を!」

 こんだけ言ってまだ、お前さんはそんな顔をするのか?

 そんなら、焚きつけてやらなきゃなるめぇよ! なぁに、難しいことじゃねぇ。なぜなら、お前さんは忘れちゃいねぇからだ。冒険者の在り方ってやつを。

「「冒険者にもしなんてもんはねぇんだよ‼」」

 そうだろ? なぁ、ゼネスよ。


 広場で補給品を配ってて思うのは、普段からその必死さを見せろってことだ。人から与えられるもんに必死になって、自分の手でもぎ取ることをしねぇからB級にもなれねぇんだ。

 サンパダと名乗った商会長が自らこの場にいるのが気になるが、提供されている道具類にはなんの問題もない。支払いについても、蟻の素材を売り払った後の納金で構わねぇらしい。豪気なもんだ。押し寄せる冒険者への対応に目を回してるみたいだが、掃けていく商品の数を考えると、今度はこっちの目の前が真っ暗になりそうだ。

 少し離れたところにゼネスと二人の駆け出し達がいた。

 立ち聞きするつもりはなかったが、どうやらゼネスの奴はあの二人を連れて行かない気らしい。そうは問屋が卸さんぞ!

 自分の教え子に自分の勇姿を見せんでどぉする⁉ それが教え子のためにもなるんだろぉが‼

 適当言って押し付けたが、話した感じにおかしなところはない。これなら大丈夫だろう。一応そのためにA級パーティーの監視もつけておいたんだしな。あいつらにとっても、ゼネスの強さは為になるだろ。どうせ、いつかはぶち当たる壁だからな。

 そうこうしているうちに”蒸気の騎乗者”が戻り、ゼネスもそちらに向かう。と、この隙に駆け出し二人に声をかける。あっちの話が終わればすぐにワシのもとに来るだろうからな。

「お前さんたち、あいつの戦いぶり・・・よぉく見とけよ?」

 二人はいきなりどうした? といった顔で・・・それでもすぐに、

「はい!」

「もちろんです!」

 と、意気込んで返してくれた。

 ゼネスを追うその背中を嬉しく思う。


 見せてくれるよな? お前さんの強さを!

 ワシは前線で、待っとるからな!

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― 新着の感想 ―
えええ……見習いが見物気分で着いて行って良い状況なのか…… もっと危機的状況かと思ってた。
[一言] いや、足を引っ張られるだろ、立ち回りも知らないのに
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