準備はいいか?
「二人とも、準備は出来たか?」
「た、たぶん、大丈夫です!」
「とりあえずは・・・でしょうか?」
広場にいたヨハン、リミアと合流し最終確認を行う。
「正直に言えば、いきなりすぎます。準備と言われてもなにが必要なのか・・・」
「そうだなお前なら魔力回復用のポーションだけでもいいんじゃないか? あとは怪我した時用に救急キットがあれば慌てずに済む」
「それだけでいいのですか? 他の方達はもっと色々なものを集めていたと思うのですが?」
広場で見た光景を思い出しているんだろうが、
「今回は道具類の金をギルドが出しただろ? だから普段、金のねぇ奴らがこぞってガメてんだよ」
あれは例外だ。
「それっていいんですか・・・? 怒られません?」
ヨハンが心配そうに未だに騒がしい広場の方を見るが、問題ない。
「悪かねぇさ。格好はよくないがな」
「なるほど。あれは必要以上に集めていただけなのですね」
「そういうことだ。まぁ・・・あれだけ集めたところで、使う機会もないだろうがな」
「どういうことでしょう?」
「相手が蟻だからな」
首を傾げたままのリミア。
「危険が少ないということでしょうか?」
「逆だ。今回の敵は”致命的な蟻”。しかも大軍勢だ。回復にアイテムなんざ使ってる暇はねぇだろうな」
足でも食われれば群がられ、アイテムを取り出すことも出来ないだろう。
「お前らは前には出るなよ? 後ろから魔法での援護にしておけ。ヨハンも、その籠手で闇魔法に限定すれば大丈夫だろ。罠の設置も忘れるなよ?」
「わかりました! さっき言われた通りにやってみます!」
ヨハンに渡した籠手は魔法射撃を目的に作ってある。最悪、闇魔法が中で暴発しても、魔力は銃口から直線にしか出ないようになっている。これで、周りへの被害は出さずに済むはずだ。流石に射線に被ってくる奴はいないだろうしな。
そこへ、
「なぁにいってやがる! その二人はお前さんが面倒みるにきまってんだろぉが!」
近くで聞いていたのか教官が口を挟んでくる。
「なに言ってんですか! 俺の方に連れてってもやることないでしょうよ! それなら、ちょっとでも戦闘に関わらせる方がいい」
「それをお前が見てやらねぇとって話だろぉ! 最初の頃は教育係が依頼に同行する。それが決まりだ!」
「緊急でも?」
「緊急でも、だ。お前さんらが駆け出しの頃はワシが付いてってやったろう?」
「んなこた一回もなかったと思うんですがね?」
「だとしたらそいつぁ思い違いだ!」
「よく言うぜ」
俺達の最初の討伐依頼は街道に出たモンスターの掃除だぞ? 隠れるところなんざなかったはずだ。
「とにかく! お前さんがちゃんと戦ってるところを見せてやれ。あんな模擬戦だけじゃぁ話にならんだろ。お前さんらの時は心配なんざしてやるまでもなかったが、この二人はどうだ? 心配ないと言えるのか?」
やっぱ同行してなかったんじゃねぇか・・・
とはいえ、心配いらないほど鍛えられているか? と聞かれれば、そんなわけはない。それはまだこれからなのだから。
「・・・わかりましたよ。連れてきゃいいんでしょ」
「おーし! わかりゃぁいいんだよ!」
いや、なに一つわかっちゃいないが、言ってる場合でもない。
なぜなら、
「偵察が戻ってきたぞー‼」
そんな声が、広場の向こう側から聞こえて来るからだ。
急に寒くなるのやめてほしい。




