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日常の変化

 ギルドカードを更新して、相も変わらないステータスやレベルを(なが)めながら、変わった箇所を確かめる。

 登録名となっていたのが指導員になり、名前の後ろにあった日付がなくなっている。引退した日付を付けたままだとなにか問題でもあるのか? 単純にややこしいからかもしれないが・・・。

 ざっと見てみたが、他に見た目の変更点はなさそうだった。

 機能面では職員用のものが追加されている。

 書類処理の認可と依頼受注および発注の認可証。職員同士のメッセージ連絡。冒険者登録管理権。施設貸し出し許可権。この辺りがおそらく受付と同じ権限に当たるんだろう。

 認可証については言うまでもないが、メッセージについても元から個人間で出来ることだし、残りの二つに至っては使う機会がないだろう。皇都支部に施設はないし、受付を受け持つこともないはずだ。

 それ以外では、支部内全体アナウンス。依頼破棄(はき)の認可証。A級以下昇級試験官。所在感知。本部直訴(じきそ)権。などがあった。

 依頼破棄やA級以下~は冒険者としての活動内容から与えられたっぽいな。本部直訴権も、もしかしたら同じ理由かもしれない。

 支部内全体アナウンスは職員だけでなく、そのギルドに入った全員のカードに発信されるらしい。使いどころが思いつかないんだが、必要なんだろうか?

 そして、所在感知。

 なにこれ? と受付で聞いたら、

「今ギルド内にいるかどうかが受付側で確認できる機能だよ。これでいつでも見てるからね!」

 だそうだ。ギルドマスターとかにもついているらしく、受付には好評なようだが、こちらとしては監視されている気分だ。

 なにせ、自分の部屋のソファーで寝っ転がっている今もまさに、所在が感知されているわけだからな。自宅なのに居心地が悪いとは・・・そのうちなれるもんなんかね?

 それにしても、

「どうすっかなぁ・・・」

 他には誰もいない部屋でわざわざ口に出すぐらいには行き詰っていた。


 圧力の存在、その真意を確かめる。


 言葉にするだけならなんてことはないんだが・・・。

 裏に貴族がいるとなれば、一筋縄ではいかないのが必定。

 にもかかわらず、俺はと言えば・・・十数年ぶりの皇都であるから昨今の情勢なんぞ知るはずもなく、使えそうなツテすらパッと出ない。

 一応、母方の従兄妹(いとこ)にあたる一家がここ皇都で暮らしているはずだが、正直頼りにはならない。なぜかといえば、そういう一族なのか、母も含めて全員が気分屋だからだ。

 気の向くまま(おも)くままに、興味のあることには飛びつくが、そうでないものには毛ほども興味を示さない。そんな人間が長丁場(ながちょうば)の裏工作なんか知ったことじゃないだろうからな。

 ぐるぐると、思考を巡らせてはみても一向に良くならないまま、気付けば日も落ちて、いい時間になっていた。

「はぁ・・・飯でも食いに行くか」

 腹の虫が騒ぎ出す予感を抱えて、気分転換よろしく街に出た。




 夜の街をゆく。というと、どこかアウトローな、いかがわしい感じを受けるが、今の俺には荷が重いか。

 十数年ぶりに訪れた皇都は・・・あの頃とはずいぶん違っていた。

 表通りのようにいかないのは分かっていたが、こうして目にすると・・・やはりどこか物悲しい気持ちになる。

 昔通った店も、なじみの顔も、どうにも見つけられず、行き場を失った足はそれでも、ふらふらと街を彷徨(さまよ)う。

 賑わいは変わらない、人の多さも大差はない。

 ただ、気になるとすれば、

「なにかあったのか?」

 そう、つい口に出してしまうほど兵士が目に付く。

 昔はむしろ兵士の数が少ないといわれていたはずだが・・・。

 気になって表通りも(のぞ)いてみたが、そちらは目を引く程ではないし、昔と変わらない配置といっていい。

 局所的なものかと皇都内をグルっと一周してみた結果、表通りや市場は昔と変わらず、裏通りや路地には必ずと言っていいほど兵士の姿があった。

 これも圧力と関係があるのか・・・? それとも、単純に都民からの要望に答えたのか?

 こんなことならもう少しブロンソン教官に詳しく聞いておけばよかったか。教官から、別の角度から情報が欲しいと言われ、それならと0から調べることにしたのが(あだ)になった。

 外食のつもりだったが、仕方がない。

 この間の露店でサイコロ串肉サラダパンでも買って帰るか。

 そう思い、広場へと急いだ。




 店仕舞いしてたらどうしようかと思ったが、そんなことはなく、この間と変わらない親父が(むか)えてくれた。

「サイコロ串肉サラダパン4つ」

「あいよ。ちょっと待ちなよ」

 買い物ついでに世間話として、さっきの疑問を投げる。

「親父。皇都に兵士の数が多いと思うんだが、なにかあったのか?」

「兄ちゃんおのぼりさんかい? いや・・・出戻りか。だったら気になるのも仕方ないかもねぇ。ここ最近はあんな感じよ。だいたい2年前ぐらいか? その頃から段々数が増えてきてなぁ・・・」

 案外、露店の親父が話してくれるので、適当に相槌を入れつつ聞く。

「最初はみんな喜んだもんさ。兄ちゃんも知ってるだろうが、昔は兵士が少なかったから、問題が起きた時には困ってたからねぇ。けど・・・」

 親父がスッと視線を逸らす。その先には、兵士が二人。露店の前に立っている。

 ここからじゃなにをやってるのかはさっぱりだが、

「今じゃぁ問題を起こすのはあちらさんだ」

 親父の言葉と周りの反応から、おそらくは店主が困っているのだろう。

「誰も何も言わないのか?」

「言っても無駄さ。あれでお貴族様らしくてなぁ。せいぜい目を付けられんようにするぐらいさ」

 確かに、周りはどうしたものかといった様子ではあるが、一人として動こうというものはいない。むしろ、店仕舞いを始めている奴がいるほどだ。

 そこへ、

「なにをやっている‼」

 ド派手なマントを付けた上司と(おぼ)しき兵士がやってきた。

 二人の兵士となにかしらのやり取りの後、

「ここに問題はない‼ 行け‼」

 追い払うようにして、振り返る。

「ッ⁉」


 そこにはよくよく見知った顔があった。

 いや、見覚えのある顔、か。


 パンの袋を手早く受け取り、口から()れた笑いを噛み殺して、件の店主に感謝され、周囲から称賛を受け取る背中めがけて走り出した。

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