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予定変更

 本来なら痕跡の追い方から森の歩き方、獲物の狩り方や後始末のやり方まで一通り見せておきたかったんだが、

「仕切り直し・・・といきたかったが、今日はもう無理だな」

 少々やりすぎたか。

 ソロ組はそうでもないが、パーティー組は全員が暗い表情で、こっちの言葉も届いているのかいないのか、反応も疎らだ。

 なにより、さっき調子に乗ってぶっ放したせいで辺りからモンスターの気配がなくなってしまっている。

 ブロンソン教官に視線を送り、教官の頷きをもって撤収を決める。

 来た道を戻るように、今度はブロンソン教官を先頭に皇都を目指す。

 せめて、と森の歩き方を説明しながら実践するブロンソン教官の姿には、流石というほかなかった。

 獣道に入るときの注意、木の根を踏む歩き方と走る時のコツ、太陽が見えない場合でも年輪で方角を調べる方法など、俺達も昔教えられた。


 ほどなくして、朝の集合地点にまで帰り着き、そのまま二つ三つギルドマスターから注意が入り、解散となった。

 まだ日が沈むにも時間があるというのに、だ。


 三々五々に離れていく背中を見ながら、

「どうでした? 俺の指導ってやつは・・・」

(あせ)りすぎだバカタレ。まぁ仕方ねぇかもしれんがなぁ」

「そんなに焦って見えましたか?」

「指導してた頃を思い出したわ! 必死な顔ばっかりしおって・・・もっと余裕を見せろ!」

 思い切り駄目だしを頂く。

「どんな顔でした?」

「こんな顔だ!」

 苦し紛れに聞いてみれば、ちょっとだけキリっとして、しかしすぐにでも泣き出しそうな顔をしてくれる。なかなかの顔芸だ。

「そぉだよ。そうやって笑ってりゃぁいいもんを・・・・考えすぎなんだよ。まぁ分からんでもないがな」

 そう言って笑う。が、

「いってくれますねぇ。けど、こっちにだって言い分ってもんがありますよ。まさか生態調査報告書(ノート)すら読んでこねぇとは」

 責任でいうなら俺だけのせいではない。

「あー・・・んー・・・?」

「パーティー組はいいとしても、ソロがその存在すら知らねぇってのはどうなんですかねぇ?」

「いやぁ・・・ちょっと人手が、ねぇ?」

 白々しい態度を少々楽しみつつ、

「それにしても・・・面倒にもほどがあるでしょう。分かってはいましたがね」

「うむ。とはいえ、ワシが出来ることもない」

「丸投げですか? そっちでもやれることはやってもらいますよ?」

「それはもちろんだが・・・いかんせん他にも仕事が山積みでな」

「そんなもんは知ってんですよ。知ってていってんですよ!」

「無茶言うな! 本部からも皇国からも睨まれんのはごめんだ!」

 脅しをかけておかないと、本気で全部丸投げされそうだったので牽制(けんせい)すると、

「なにより、お前さんらの時と比べりゃまだましってもんだ!」

 ふざけたことを抜かす。

「俺達はあれよりひどかったって?」

「おうよ! あん時ゃひでぇもんだった‼ 他にも山ほど見なきゃならねぇ駆け出しがあふれてんのに、そこに皇族と上級貴族の御子息様だぞ⁉ 面倒なんてもんじゃねぇだろ⁉ 思い出すだけで死ねるね! あんなもん!」

「態度の話をしてんだよ! 俺達は可愛いもんだっただろ⁉」

「バッカおめぇ! どこが可愛いもんか‼ そこらの中堅よりよっぽどいい動きするくせに、毎日毎日飽きもせずにもっともっとってせがんできやがって‼ こちとらそんなたいしたことねぇんだよ‼ なんでもかんでもは教えてやれねぇんだよ‼」

「良い事じゃねぇか‼」

「そこに皇国のお偉いさんとかおめぇの親父殿から抗議やら手紙やら・・・あれのせいでワシ禿げたね‼ 間違いない‼」

「禿げは元々だろぉが‼ っていうか、手紙?」

 御父上のことだ。抗議なら直接乗り込んでるだろう。だとすれば・・・?

「ああ。なんてこたぁない。どうせ言うことなんぞ聞かんから、せめてすぐに死なないようにしばきあげてくれってよぉ」

 いや、しばきあげろは嘘だろう。

 だが・・・


「だからよぅ」


 考えていた。そのために下を向いていた。視線を上げた先には真面目な顔があり、

「とりあえずやってみろ。誰もが一度は通る道だ」

 過去、何度となく聞いた言葉を幾度(いくど)となく見た笑顔で言われては、ふざけている場合ではないだろう。

 これからなにが起ころうとしているのか、そんなことは分からない。それでも、なにかあった時、その責任をこの人だけに押し付ける・・・なんてのは、俺には出来そうもない。


「仕方ねぇんで、色々準備しときますよ」


 クソデカため息を一つ。

 そうして、話は終わりだとばかりに皇都へ歩き出す。

 俺の役目は駆け出しの教育だけではない。むしろ、もう一つの方が本命かもしれない。

 気合いを入れて、と思っていたらそこへ、

「ギルドに戻るならカードの更新をしておけ! ギルド職員になってるはずだからなぁ!」

 ブロンソン教官の声が届いた。

 俺は適当に手を挙げて、振り向きもせず皇都に向かう。

 やるべきことを考えながら。





 冒険者ギルドカード

 指導員:ゼネス

 個人等級:元A PT:元A

 ステータス:Lv99 筋力A- 魔力C+ 体力A 判断力S 想像力S 瞬発力A 運命力EX

 スキル:器用 危機回避 装備錬成 支援強化 (ギフト:加護の恩寵)

 加護:――

生態調査報告書の通称がノートになりました。なげぇから・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] 血筋と、育ちは良いのに、冒険者になろうとするお坊ちゃま(しかも、戦闘力だけはしっかりある)に教えるのか~ 確かに、ただ、鼻っ柱が強いだけのガキ大将より大変だな~ 真面目に学ぶし、覚え…
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