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98 それは驚いてるの?

 着替え終わったネロは寝室の入り口で覗いていた俺の手を引いてソファに移動していく。先にネロを座らせて、ネロの乱れた髪を軽く撫でつけてあげる。


 髪を整えている間もネロは目を合わせてくれない。ネロの隣に腰を下ろすと、ネロも俺の髪を撫でてくれる。肩を抱くようにして、後ろに回した腕で俺の頭を抱える撫で方だ。


 ネロは無言で俺の方を見ないままに、俺の髪に優しく指を滑らせてくる。俺を落ち着かせる為にも、自分を落ち着かせる為にも思える撫で方だ。


 後ろに回した腕で俺の頭を抱えてくれるネロの腕の中は安心する。顔を上げて、髪を梳くように指を滑らすネロの横顔を見つめる。


「俺は迷惑だった?」


 黙ったままのネロとさっきの消耗したアルさんの姿で理解できた。俺はいらない事を提案してしまったらしい、と。恐る恐る、ネロに質問してみる。ネロが俺と目を合わせてくれた。


「いや、琥珀に傷がついた過程を見られてしまったな、と。怖くはなかったか?」


 でも、そうじゃなかったらしい。ネロ的には、俺が怖がってる事の方が心配だったみたいだ。視線を俺に向けてくれたネロの眉は心配そうに寄っていて、ネロが黙ったままだった理由が分かった。


「怖くはなかった、っていうと嘘になるけど平気だった。でも、少しグロかった。っていうか。過程ってどういう事なの?」


 俺が心配していたのと、ネロが心配していたのはベクトルの方向性が違ったらしい。ネロの心配を聞いて、首を振って平気って伝える。でも、ネロの言葉の中の一言が気になって、聞き返してしまった。


「族長が施したのは回復魔法ではない。時の魔法。時間を遡ってその原点に戻す。」


 返してくれたネロの話を聞いて目が丸くなってしまった。時間を遡るって、何ソレ。魔法じゃん。いや、魔法だけど、魔法みたいな魔法じゃん。


「壁を直した魔法の上位版。修練を積んだ先の〈時間回帰〉。」


「えっと。」


「だから傷がない。傷ができるまでの過程を遡って原点で止めた。」


 言葉を挟みたくても単語しか出てこない。目を細めたネロは淡々と説明を続けてくれる。成る程、傷ができるまでを巻き戻していく魔法だったんだね。


 巻き戻していたから、傷が開いて血が滲んでいたんだね。って、巻き戻すって。もう一度、傷がつく過程を踏まされたって事だよね。


「それって、超痛くなかったの?」


「少し、痛い。」


 素朴な疑問に、ネロは困ったように口の端を上げて答えてくれた。それを見て悟ってしまった。めっちゃ痛かったんだろうな。だからこその、アルさんの警告だったのか。


「ごめん。知らないとはいえ、突っ走っちゃった。」


「いや、問題無い。それに、琥珀はこの顔の方が好みなのだろう?」


 マジでごめん。重ね重ね謝る事しかできない。ネロは目を細めて俺の髪を優しく撫でてくれる。続いて聞いてきたネロの言葉に、そうじゃないって首を振る。確かに傷一つない綺麗なネロに戻ってくれて嬉しいよ。でも、そういう事じゃないんだよ。


「好きとか嫌いとかじゃなくて。ネロがそんなに傷だらけなのが悲しい。」


「そうか。今回のだけでも消してくれた族長に感謝しないと、だな。」


 眉を寄せて思いを伝えてみると、ネロが嬉しそうに頬を緩めて頷いてくれた。アルさんへの感謝の言葉を出すネロに、大きく頷いて同意してしまう。


 傷を治す魔法ってもっと簡単だと思ってた。普通に、イメージの中の回復魔法は楽に魔法でしゅっと回復すると思ってた。


 でも、実際は凄く大変な魔法だったらしくて、凄く消耗する魔法を使ってくれたアルさんの姿が思い出されてしまう。アルさんにはマジで感謝しかない。


「うん。凄い感謝しないとだね。」


「そうだな。では、感謝を込めて書類を片付ける。」


 あぁ、それがあったんだ。ネロは凄く痛いのを再度経験させられた上に、アルさんのお仕事を持ち帰ってきたんだ。マジでごめんなさい。


「あ、それも俺が突っ走った結果だ。ごめん。」


「族長のサボりは常習。遅かれ早かれ俺の元に回ってきた仕事。気にするな。」


 また謝ってしまうと、ネロは謝る事はないって片眉を上げて微笑んでくれた。そして、溜息を小さく吐いて、何れはネロがやる事だったって言ってくれる。


 溜息交じりのネロの様子からは、俺への慰めというより、アルさんへの疲れが見て取れる。多分、ネロの言ってる事は真実なんだと思う。アルさんはおさぼり常習犯で確定だったらしい。それはそれで可愛い。


 俺の髪に絡ませていた手を離したネロは、丁寧に整えるように撫でつけてくれる。それから、自分のカップを持ってテーブルに移動していってしまった。


 ネロを目で追いかけて視界に入れながらも、さっきのアルさんの魔法を使う光景を思い出してしまった。凄い魔法だった。アルさんはやっぱ凄いと思ってしまう程、圧倒的な魔法だった。


 アルさんは魔法が凄いから、魔法特化な人なのかもしれない。それにしては、ネロが強いっていうくらいだし、戦闘能力も高いんだろうな。どっちにしてもアルさんは凄い人で確定だ。


 アルさんはいつも柔らかな笑顔で、優しくて穏やかな綺麗な人にしか見えなかった。でも、やっぱり1つの種族を率いる族長さんなんだね。凄いな。


 ネロの淹れてくれたお茶を飲みながら、ぼんやりとネロの様子を眺める。あらら、アルさんと同じ険しい顔をしている。珍しい表情のネロは難問に直面してるのかな。アルさんも難しい顔してたし、ネロも険しい顔になっちゃったし、どんだけの難問なんだろ。


 その書類はアルさんから引き継いだ重要事項だろうからね。俺に手伝える事はない。お茶を飲みながらネロの様子でも見守る事にしよう。


 真剣に書類に目を通していたネロが立ち上がり、棚から木の箱を取り出してテーブルに置いた。箱の中から筆を取り出して何かを書き始めたネロの手の動きに沿って、筆が滑らかに動いている。


 ネロが書き付けている字が見てみたい誘惑に駆られる。でも、これはお仕事のだから見るのはダメ。今度ネロに何か書いて貰おう。


 程なく書き終ったネロが書き付けた紙を畳んで小さな筒に収めた。入り口を開けて、ネロが口笛を小さく吹くと、少しして風が動いた。風と共に出現した小さな焦げ茶色の猛禽がネロの肩に留まっている。


「ソラス。」


 思わず名前を呼んでしまうと、猛禽がこっちを見てくれた。ネロの肩からフワッと飛び降りて、床の上に降り立ったソラスがトコトコと俺の方に近付いてきてくれる。


 ソファから下りて床に座り、屈み込んでソラスと目線を合わせてみる。俺の前まで来たソラスは可愛らしく首を傾げてくれた。俺の髪を優しく啄んでくれるソラスがメッチャ可愛い。


 お返しにソラスの頭の後ろに手を伸ばしてみた。俺の手がソラスの頭に到達する前に、自分から頭を摺り寄せてキュイキュイと可愛く鳴いてくれるソラスは超可愛い。


 雨で少し濡れてるけど、そんなにびっしょりでもない。適度に水を弾いているみたいで、羽根の表面の水も直ぐに滑り落ちていく。


 少しの間ソラスと戯れていると、ネロがソラスを呼んで手を前に突き出した。顔だけはネロに向けたけど、ソラスは俺の手に頭を擦り付けて離れる気配がない。


 めっちゃ甘えてくれるのが分かる。鳥ってこんなに甘えてくるんだ。キュイキュイ鳴いて、体を摺り寄せてくれるソラスの余りの可愛さに頬が緩んでしまう。


 ネロが再度ソラスを呼んだ。今度のソラスはネロに顔を向ける事もしない。困ったように片眉を上げるネロが見える。これ以上はお仕事の邪魔になってしまいそうだ。


 もう一回だけ屈んで、ソラスと視線を合わせて頭の後ろを撫でてあげる。ソラスも俺の髪を嘴でハムハムっとお礼のように啄んでくれた。


 別れの挨拶でソラスは満足してくれたらしい。ソラスはちょんちょんと早足でネロに駆け寄りながら翼を広げた。スッと軽快に跳び上がって、ネロの腕に留まったソラスは超かっこいい。


 ネロがソラスに筒を見せる。少しの間、ネロの持つ筒を見ていたソラスが分かったって感じで顔を動かした。ソラスの足に小さな筒を固定したネロが入り口を開け放つ。


 俺に顔を向けたソラスがキュイキュイ鳴いてお別れの言葉を伝えてくれる。ばいばいっと手を振ると、ソラスは翼を広げてあっという間に外に消えていってしまった。


 ネロはソラスを見送るように外を見ている。俺もネロの隣に移動して、外を見てみる。でも、雨で霞んでいる空には、もうソラスの姿は見えない。ネロには見えてるのかな、と顔をネロに向けてみる。ちらっと俺を見たネロは入り口を閉じてしまった。


「ごめん。邪魔しちゃったね。でも、ソラスと会えて嬉しかった。めっちゃ可愛い。」


 入り口を閉じたネロが俺をじっと見つめてくる。そうでした、お仕事の邪魔をしてました。反省してます。でも、ソラスと遊べて嬉しかったです。反省を伝えると見せかけて、嬉しかった事を伝えてみた。


「問題無い。それにしても、ソラスのあの反応は余りある事ではない。前も思ったが、凄いな。」


「それは驚いてるの?」


 俺の方が驚いてしまう程に無表情な顔をしたネロが、言葉で聞く限りでは驚いた反応を伝えてきた。俺を静かに見下ろしてくるネロが本当に驚いてるのか確信が持てずに、確認を取ってみた。


「ああ、驚いている。あんなに優しく髪を啄むのは、余り見ない。」


「ネロにはやってくれないの?」


 入り口で話し込んでいたら、ネロがソファに誘導するように手を引いてくれる。ネロに手を引かれてソファに移動した後で、テーブルに戻ろうとするネロの手を引っぱってみた。


 隣に座ってもうちょっと相手をして、って無言の要求をしてみる。手を離さず掴んで引っ張っていたら、少し考えた様子のネロだったけど、結局は俺の隣に腰を下ろしてくれた。


「髪を引っ張られた事はある。」


「超可愛いじゃん。」


「可愛いか?」


 真顔のままで俺の質問に答えてくれたネロに、ふふっとなってしまった。ソラスに髪を引っ張られるネロの光景か。戯れてる感じが可愛いと思う。思い浮かんだ光景そのままに言葉に出したら、ネロが聞き返してきた。そりゃ可愛いでしょ。


「うん、想像できる。ソラスが髪を引っ張ってネロが顔を顰めるの。両方可愛い。」


「可愛いには俺も含まれるのか?」


 真顔のままのネロに、ニコニコと答えたら、ネロが困惑の表情になってしまった。ソラスが戯れてネロが相手してるその空気全体が可愛いんだよ。


「うん。可愛い。猫耳が後ろにきゅってなって、ネロが顔を顰めるの。きっと可愛いよ。」


「そう、なのか。それに、この前も少し聞いたがあんな甘えた声を出すのも余りない。」


 微笑ましいネロとソラスの戯れてる光景を思い描いて、大きく頷いてしまう。困惑を継続中のネロは、ソラスの甘えた声も話題に出してきた。キュイキュイ甘えるのが可愛かったけど、珍しいんだ。


「そうなんだ。ソラスは俺の事を気に入ってくれたのかな?」


「そうだな。俺より琥珀の方に懐いたようだ。」


 俺にも懐いてくれたって言ってくれるネロの言葉が嬉しい。あんな可愛い子が俺も気に入ってくれて懐いてくれたなら嬉し過ぎる。


「まじで。嬉しい。また会いたい。」


「直ぐ帰ってくる。」


「そっか。今度は晴れてる時に会えたらいいね。こんな雨だと、ソラスも風邪ひいちゃいそう。」


「ソラスの羽根は水を弾く、問題無い。あと少しで書類も片付く。そうしたら食事にしよう。」


「分かった。寂しいけど大人しく待ってる。」


 話の区切りがついた、と、ネロが立ち上がってしまった。ネロに構って欲しくて、悪戯っぽく牽制してみる。真顔のネロは視線をテーブルに向けたままで、俺の頭を撫でてテーブルに戻ってしまった。あらら、何の反応もないと寂しい。


 冷えてしまったお茶を飲みながら、のんびりとネロを見守る。表情はなく淡々と書類を読んでいるネロは時々何かしらを書き留めている。


 ぼんやりとお茶を飲んでいる間にネロの仕事は終わったらしい。書類を纏めて木の箱を棚に仕舞ったネロが俺に顔を向けた。ぼーっとネロの動きを追っていたから、ネロと目が合った。


「夜は一人で注文に行ってくる。」


 決定事項を通達されて頷くしかできない。目を細めたネロが書類を抱えて外に出て行ってしまった。そっか、アルさんに書類一式を返さないとだったんだ。しかし、アルさんは凄い魔法を使えるんだな。しかも、あれだけ消耗するって事は、相当な魔法なんだろうね。


(はい。時属性の魔法、〈時間回帰〉をランク50まで上げると物質にしか作用しなかった魔法が生体にも作用するようになります。生体に使用する場合は消費MPが増大し、全気力を消費します。MPが不足している場合は気力だけ消費して発動には至りません。使用時の残存気力が一定量以下の場合、発動はしますが効果が著しく下がります。)


 気力?そんなステータスなんてあったっけ。それも隠しステなのかな。


(はい。)


 まじか。ってか、隠しステは結構多いんだね。なんだっけ、えっと、運と持久力と理解力と気力があるのは分かった。まだ他にもあるの?


(はい、御座います。)


 そうなんだね、〈ステータス可視化〉のランクを上げないと確認はできないんだったよね。その為には死ななきゃなのか。


(はい。獲得できるかどうかは、ランダムですが。)


 何だよ、このクソゲー感。改めてのクソゲー仕様に諦めの境地に陥りそうだよ。


(『くそげー』では御座いません。現実です。)


 分かってる。ただの愚痴なんです。ごめんね、スツィの言ってる事が正しいよね。


(理解しました。)


 背もたれに寄りかかって、ぼんやりと天井を見上げる。ってか、この数日間の間でも知らない知識がどんどん増えていた。俺がこの世界を完全に把握できる日は来るのだろうか。


 ホント、スツィの言う通り現実なんだな。そこが問題なんだよ。俺は一体どうすればいいんだろう。いじいじと悩んでいると、俺を見下ろしてくる金色の瞳に焦点が合ってネロの存在を認識した。


「あ、お帰り。早かったね。そして、やっぱり濡れてる。」


 びしょ濡れを指摘する俺の言葉に応えるように、ネロが近くで最大出力の〈乾燥〉を発動させた。微妙に俺の前髪も暖かくて強い風に煽られている気がする。


 この角度だとネロの猫耳のパタパタは見えない。ただ、股の間に見える尻尾が強風に煽られて、ばっさばさになってくのが可愛い。


 ネロの尻尾を凝視していたら、風が止んだ途端にネロがしゃがんで覗き込んできた。あ、尻尾を凝視してたのがばれちゃったみたいだ。


 ってか、尻尾を凝視って、ネロの股の間を凝視してたって事じゃん。俺はネロの中で変態扱いになってる、とかはないよね。平気だよね。心の中で違うんだよ、と言い訳っぽいモノを羅列しながら目を逸らしてしまった。


 何も言わずに、ただ、俺の前でしゃがみ込むネロをちらっと見て髪に視線を合わせた。そうだよね、ぼさぼさな髪を整えてあげましょうね。手を伸ばしてネロの髪を整えてあげる。


 そうじゃん、尻尾もバサバサになってるからね、整えてあげた方がいいと思うんだ。髪と一緒だよね。目を合わせてニコっとしたら、ネロの片眉がぴくっと反応した。俺の企みに気付いてしまったのか。


「ネロ、尻尾もバサバサだよ。俺が直していいの?」


「いや、いい。」


 立ち上がったネロは自分で尻尾の根元を持って、先までシュッと手を滑らせる。ネロの手の動きに合わせて綺麗に整う尻尾が見える。


 あぁ、羨ましい。俺に尻尾があったら同じようにできるのに、俺もシュッてしてみたい。恨めしい顔でネロを見上げると苦笑されてしまった。


 隣に座ったネロの尻尾は反対側で遠い。そう、尻尾が遠いんです。俺の手の届かない場所にある尻尾。もぅいいよ。 


 改めてネロの顔を見ると本当に傷がない。ネロの顎を持って左右に動かしてみる。顎を上げて首の傷のあった所を指で触ってみた。手を離してネロの顔を眺める。


「ほんっとに傷がない。アルさんは凄いね。」


「そうだな。」


 思わずアルさんの凄さを声に出してみたら、ネロが目を細めて同意してくれた。アルさんは凄いけど、ネロも同じ魔法を持ってるじゃん。ネロも修練を積めば、同じ様に傷を治せるようになるんだよね。そう考えるとネロも凄いって事だ。


「ネロもいつかアルさんみたいに、どんな傷も消せるようになるんだね。凄いな。」


「だといいな。」


「ネロならできる気がする。」


「そうか。」


 ネロの頬を触ったり、首を撫でたり、上着を捲ってお腹を触ったりしていたら、ユリアさんの元気な声が聞こえてきた。俺にされるがまま触らせてくれていたネロが立ちあがって上着を直して、ユリアさんを出迎える。


 ユリアさんが元気に飛び込んできて、ニコっとしてくれた。そのままテーブルに食事を並べるユリアさんの後ろ姿をぼーっと眺める。尻尾は見るのやめよう。尻尾はお尻に近いから、女の子の尻尾はダメだ。


 あれだ、猫耳を見ようか。ユリアさんの耳も尻尾と同じで少し小さ目だよな。髪の隙間から小さく飛び出てるのが可愛い。


 見比べてみようかなっと、ネロの耳に視線を移してみた。俺を見ていたらしいネロと目が合ってしまう。あ、もしかして俺もネロに観察されてたのかもしれない。


 うん、猫耳観察とかそんな事はしてないからね。すすっとネロから目を逸らして天井を見上げる。やっぱり、ネロに変態扱いされてるのかな。悲しい。


 少し物思いに耽って、顔を前に向けてみる。ネロはテーブルの上を眺めていた。よし、タイミングはばっちりだ。ネロの耳を観察するか。ネロの耳は大きいね。レオさんも大きかったけど、ネロの耳は大きくてもふもふだ。いい耳だね。


 じっと観察を続けていたらネロの顔がゆっくりとこちらに向けられる。慌ててユリアさんの後頭部に視線を移してみた。


 ユリアさんの耳は髪と同じ柔らかそうなクリーム色で可愛い。後ろからだと髪に埋もれて余計小さく見える気がする。ネロの耳も今度後ろからじっくりと見てみよう。


 振り返ったユリアさんと目が合ってしまった。にっこりとしてくれたユリアさんに、ニコっと笑顔を返してみる。ネロに片付けを言付けたユリアさんは俺に手を振って帰っていった。

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