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彼らに会いたくて……私はアントワープを目指す 12

帰国当日ですが……オランダの国際空港には変わったものがあるのです。

「おはよう」

「うん、ランドリーの洗濯ものどうなっているかしら?」

「ってか、帰ってから纏めて洗うのかと思っていた」

「そうね、でもこのホテルは駅の側とセルフランドリーがあるのが売りだもの」

「あの本にはそうは書いていないぞ」

「でも、あるとないとじゃ違ったでしょう?衣類は増やしたくなかったし」

「まあな、でもこの大きなトランク一つって言った時はびっくりしたぞ」

「ベルギーさえ乗り切れば問題ないと思っていたからね」

「このホテル……高いだろう?」

「そう思うだろうけど、そんなでもないわよ。ヒルトンよりは安いもの。それに新婚旅行なのだから多少はハイクラスでもいいんじゃないの?でも、ホテルと直接交渉したからお得にはなっているわよ」

「なっ、なんだよ……それ?」

「だからね、ホテルにオンラインで日本から直接予約したからね。最初から確実に行く予定だった博物館も同時に予約依頼をしていた位だもの。とにかく移動手段で辛い思いをしたくなかったから、今回はここを選んだって事。これでも、来月になると予約も大変だと思ったわよ」

「来月……ヨーロッパはバカンスか」

「そう言う事。せめてジューンブライドなハネムーンをしたかったのよ」

「ごめんな。そんな事に気がつかなくて」

「いいのよ。こうして、この国でのんびりとは言い難いけど二人でゆっくりできたし」

「そうだな。ところで空港で何を買うつもりだ?」

「それもあるけど、国立ミュージアムの別館があるのよ。それも出国エリアなの」

「それは知らなかったな。別館でもいいか」

「それに最初に着いた時……覚えている?」

「ああ、ショッピングエリアがあったな」

「別館を見てから、ショッピングエリアで買い物をしてから帰ってもいいかなってね」

「成程。だから街で買い物をしなかったのか」

「そう言う事。でもこのショップングエリアは免税店じゃないけど。荷物を最小限に抑えられるでしょう?」

私が答えると、彼はにっこりと微笑んでくれる。

「こんなにしっかりとした奥さんで俺は本当に助かっているよ。ありがとうな。英語しかできない俺でも個人旅行で楽しめたからな」

「ねえ、結婚したこと……後悔していない?」

「してないさ。毎日が幸せだよ。もう少し二人の時間が普段も欲しいよな。それは帰ってからまた考えよう」

「うん。まだ二人でいたいよ。いろんなところに旅行に行こう?秋になるとヨーロッパは大分やすくなるし、新年とこっちで過ごすってのもいいかもしれないわ」

私が答えると、彼の腕の中に囚われてしまう。

「だめよ。これから朝食でしょう?」

「そうだよ?こうやってくっついていたいだけ。今日は帰るだけなんだな」

「そうだね、空港で搭乗手続きが始まるまではね」

「成田に着くのは何時だったっけ?」

「成田は明日の8時には着くわよ」

「成程な。それなら日本時間に時計を直してその時間帯で飛行機の中を過ごせばいいか?」

「そこはなる様になるわよ。行く時だってそうだったでしょう?」

「そうだったな。まずはご飯を食べよう。その後に洗濯ものを取り込もうか」

「そうね」

私達は最低限の貴重品をもってレストランにモーニングを食べに行くことにした。

オランダのモーニングは朝食が豪華な事が多い。しかもビュッフェなのでお腹一杯にする事が出来る。

「俺さ……アレ食べたかったな」

「あれ?何?」

「あの魚の屋台あっただろ?」

「ああ。分かった。そうしたらホテルの側にあるかどうか聞いてみようか?」

「大丈夫なのか?時間……」

「お魚だけじゃなくてもいいのなら、ちょっと当てがあるの。朝食が終わったら確認してみるわ」

彼が食べたがっていたのは、ハーリングの屋台だ。魚料理も食べるオランダの人達は生魚を塩漬けにしたものを玉ねぎのみじん切りを載せて食べる事が多い。有名なのはニシンだけども屋台によっては、魚の種類が違うからそれを楽しむのもまた楽しいのだ。

食事が終わった私は、フロントに行って、屋台の事について尋ねる。搭乗手続きだけなら間に合うが、空港で過ごしたいのなら、駅の中にブローチェで扱っている店があるという。店の名前と場所を教えて貰い、私は彼に伝えることにした。

「ハーリングだけだと空港の中にはないだろうけど、ブローチェなら駅の中に店があるからそこで食べたらいいって」

「ベルギーみたいなサンドイッチってことか?」

「あら?説明しようと思ったのに、残念。それでも構わない?」

「いつでも食べれるように、朝食は控えたからな」

そう言うと彼はお腹を軽く叩いた。

「分かったわ、それじゃあ荷物を纏めてチェックアウトしましょう」

「お前は何か食べたいものはないのか?」

「うーん、パネクック?」

「ナニソレ?」

パネクックはオランダのパンケーキとも言えるけれども、見た目はどう見てもクレープにしか見えない。それにお菓子として食べたり、ハムやチーズをのせて、軽食として食べる事もある。

「簡単にいうと、クレープみたいなオランダのパンケーキよ」

「ふうん、それって空港にあるのか?」

「あるわよ、多分ね」

「それならいいか。支度を始めるか」

私達はスーツケースに出したままになっていた荷物をパッキングし始めた。


無事にチェックアウトして私達はすぐにアムステルダム中央駅に向かう。チケットを購入してから、ホームに向かう前にフロントで聞いたブローチェの店を探すことにした。

「あっ……ちょっと待って、この店ハーリングあるよ」

「本当か?魚は何でもいいや。買って貰えないか?」

「はいはい。ハーリング二つ貰えますか?」

私も食べたいので二人分購入することにする。やがて入れ物に入ったニシンのハーリングを彼に手渡した。

「おおっ。これだよ。ありがとうな」

そう言うと彼は早速口にする。かなり嬉しそうにしているから味覚的には問題ないみたいだ。

「平気そう?」

「平気だけど、意外に辛いのな」

「そうね。後でアイスコーヒーでもいいんじゃないかな」

「そうだな。まずは食べてしまうか」

彼が先に食べているのは、置き引きがいないとも限らないから。

私が食べる前に、一度アイスコーヒーを購入して彼に渡す。無事にハーリングもアイスコーヒーでお腹を満たしたので、私達は空港へ向かう電車に乗り込む為ホームへと移動する。


無事に空港に着いた私達は、最初に国立美術館の別館の前に手荷物預かり所で荷物を預かって貰って、貴重品だけ身につける。

そして、別館に着くと人は思った割に少なくて、私達が歩く音も響いて反響している。

この別館展示は凄く少ないけど、入館料が掛からないんだよね。だからここに立ち寄りたいくなる。最後に博物館の売店に寄ってうさこちゃんのマグカップを四つ買った。

「どうして四つなの?」

「子供が二人欲しいのって意思表示のつもりです。いずれは頑張りましょう」

「それはそれで……大変だ」

彼はそう言うと私のウエストを引き寄せた。

「ちょっと、何?」

「ん?俺の意思表示。仲良くしましょうかね?これからも今以上に」

言われている訳が分かり、私は小さく返事を返すだけだった。


搭乗手続きをするにはまだ早いので、入国エリアの先のショッピングセンターで買い物をする事にした。オランダだけども売っているゴディバのチョコレート。日本で売っていないものだけをピンポイントに選んで買いこんでいく。それとジンの前進と言われているジュネヴァの瓶を2本購入する。これは免税の範囲内だ。ジュネヴァは元々は薬用酒が起源と言われている。若い人のジュネヴァを飲まなくなったというけれども、今では再び見直されているという。

かなり買いものを楽しんだところで、搭乗手続きの為に上のフロアーに向かう。それでもまだ時間が早いようだったので、私達は散歩がてら歩くことにした。

すると、パネクックが食べられる店が見えた。

「雅美、今度はお前の番な?」

「えっ?」

「まだ時間あるから食べられるさ。行こう」

私達は今度はパネクックを食べることにした。空港では英語でも十分会話が成立できるので彼がやり取りをしてくれる。

「ほらっ、お前はどれにするんだ?」

「それじゃあ……甘いタイプのものが欲しいけどお勧めってあるのかしら?」

彼も何を選んでいいのか分からなかったらしくて、甘いものとハムを使ったものを持って来て欲しいと英語で話したとか。

「分かってくれたかな?」

「ここは、国際空港だから英語はある程度分かっていると思うわよ。アムステルダムのレストランだって、英語は通じるのよ。店によってはワザとオランダ語でしかやり取りしてくれなかったり、分からないふりをしたりするの。今回はそう言う店には一切行かなかったけど」

「そうなんだ。何か足元見られているんだな」

「それは日本にいてもそうでしょう?日本の国内で英語を日常的に使える人って少ないわよ。うちの会社が英語に力を入れているから出来ないって人でも商社レベルじゃない」

「そうだな。二年に一度は抜き打ちテストあるものな。今回の旅行で少し考えたわ」

「もうベネルクス地域に旅行に来るの……嫌?」

「そんなことない。気に行ったよ。今度はゆっくりとベルギーだけを旅行しよう」

「いいの?大丈夫?」

「まずはフランス語を覚えておこうかな。お前が出来ると言っても出来た方がいいだろう?」

「そうね、来年の夏休みは遅く取って来られるように仕事頑張ろうか」

「そうだな。まずは帰ってから頑張って仕事するか」

「その通り、今度は贅沢旅行じゃないから、シンプルなホテルになったりするわよ」

「別にいいさ。雅美と一緒だからな」

「ご馳走様。あなた、いつもより積極的なのに?」

「気のせいだろう。ほらっ、搭乗手続きに行くぞ」

ちょっとだけ耳が赤くて、乱暴な彼に後をのんびりと歩いて着いて行った。


ベルギー・オランダ旅行は今回で終了。次話はエピローグになります。

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