彼らに会いたくて……私はアントワープを目指す 1
今回は通常よりも短めにアップして行きます。
「上野のパンダが無理なら、飛行機取れたら和歌山のパンダを見に行くか?」
「それでもいいけど……私はアドベンチャーランドの子達が見たいんじゃないの。私の心を鷲掴みした子はそこにはいないの」
「ってことは、なんだ?兵庫か?」
「いい。ねえ、私達ってさ、籍と教会式なだけで新婚旅行は行ってないよね?」
「そうだな。後で取得できるからってそのままだったな」
そう、私達は結婚式だけ済ませて新婚旅行はしていない。彼は新規事業部の立ち上げで殺人的スケジュールをこなしていたし、私もグループ秘書から専務秘書に変わったばかりだった。ようやく仕事が落ち着いてきたところではある。
「もしかして……」
「そうよ。あの子達に会いに行くの」
「それってもしかして海外……」
俺がポツリと呟くと、雅美は冷ややかな瞳をしている。マジで怖いって……奥さん。
「何?行ったらいけいないの?行き先等は私が全て決めます。あなたは休みを確実に確保して下さい。いいですね?」
「は……い。分かりました」
俺は力なく答えるしかなかった。
「とりあえず、あの子達の居場所は分かっているから、ついでに回れる場所を探せばいいわよね」
妙にうきうきしている妻に俺は恐る恐るせめて行く地方位は確認してもいいかなって思う。
あれがたくさんいる所って行ったら……普通はあの国だろうよ。
「お前……国はどこになるんだ?」
「うーん、ヨーロッパ?中国から旅に出た子たちだもの、中国には行かないわよ。私はあの子達に会いたいの」
「はいはい。それじゃあ全て任せるから頼むよ。それって個人ツアーか?」
「もちろん。あの国の言語圏は私ある程度はできるから」
「そうですか。カタコトなレベルだと何カ国はなせるんだよ?」
「苦労しないのは、英語とフランス語とドイツ語とスペイン語。後はイタリア語とオランダ語かな?頑張ればルーマニア語も分かるかもしれない」
「そうですか。ところで大学の専攻はなんだったんだ?」
「私?外国語学部のフランス語学科よ。折角だから独学でドイツ語とオランダ語から始めて徐々にエリアを広げたってだけよ?それに元々親の仕事でスペインで暮らした事もあったからね」
そうなのだ。妻は普段はのんびりとしているけれども、ヨーロッパ圏の語学はそんなに苦労はしない。最低限の会話程度ならロシア語だって多分使えるかもしれない。
そういう理由で、海外と飛び回る事が多い専務秘書になったのだろう。
今回行きたい国は彼女の語学力なら問題のない国なのだろう。だったら個人ツアーでも十分だ。変に口を出すよりは全てお任せにした方が早いだろう。
「それじゃあ、旅の方は雅美に任せるから。行くなら……いつがいい?」
「そうね、6月の梅雨時に日本を脱出したくない?」
「それでいいのかね?」
「いいじゃない?結婚したのも6月なんだから」
そうやって俺達の新婚旅行は着々と決まって行くのだが、肝心な行き先を妻は教えてはくれなかった。
俺……一体どこに行くんだろう?それともミステリーツアーのつもりなのか?
パンダと言えば、アドベンチャーワールドに王子動物園ですね。
まだ行ったことはありません。いつかは行ってみたいものです。
それと、パンダの聖地といえば、中国のパンダ保護区ですが、今回はそこでもありません。友好の証としてパンダ外交をしているパンダさんに会いに行くのです。なので、彼らがいない保護区には雅美には意味がありません。
それに絶対に抱っこしたいって訳でもないのです。
結局雅美はどこに行きたいの?




