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最果てのホライズン  作者: 椎名乃奈
第四章 やくそく
39/60

【039】


「そう言えば、この街の広場を見たかい?」


「はい、獣耳を持つ少女がこの街の豊穣を司る神だと――」


「あれは、スゥちゃんだよ」


「わ、私ですかッ⁉」


「驚いたかい?」


「驚いた、と言うより恥ずかしいです……」


 スゥは、照れながら下を向いた。


 照れるスゥに、街の人達は笑っていた。


 しかし。


 カレンのおかげで助かったのかもしれない。もしも、獣耳を持つ少女がこの街の神として祀られていなかったとしたら、街の人達をむやみに驚かせ、騒ぎになっていたかもしれなかったからだ。


「あれ?」


 約束の三十分が近くなって来たのか、スゥの体が光り始めていた。すると、ちょうど使いに走った若者が間に合い、スゥはなんとかホライズンの明暗を分けるおつかいを終えることが出来そうだった。


「ありがとうございます」


「いえ、神様のおつかいに行けるだなんて光栄です」


 若者はそう言い、買い物袋を手渡した。


「もう、時間みたいですね」


 スゥはそう言った。


「スゥちゃん。ホライズンで別れ際に、僕が言ったことを覚えているかい?」


「はい」


 スゥは、勿論覚えていた。


 むしろ。


 忘れられるはずが無かった。


 それは。


 スゥにとって生まれて初めてのことだったのだから。


「その返事をきかせてくれないかい?」


 カレンがそう聞いたと同時に、その輝きが増した。


「私も、カレン君のことが――大好きですッ!」


 スゥは、笑顔で言った。


 今まで言いたくても言えなかったその思いを――時を越え、あの時の約束を果たし、その返事をカレンに伝えることが出来たのだ。スゥからすれば、たった一ヶ月程度のことだ。けれど、カレンからすれば見て取れる程の年月が流れていた。


 それは。


 まさに、時を越えた思いに違いないのだろう。


 次の瞬間。


 そこは、見慣れたアンリエッタの本に塗れた仕事場だった。


 カレンへ転送される前に言えたのかどうか、ちゃんとカレンに伝わったのかどうか――それらは分からなかったけれど、スゥは何故か嬉しいはずなのに涙を流していた。いつだったか、似たような涙を流したことがあるのを思い出した。


 あれは。


 ホライズンに来たばかりの頃に、ニナの家でカレーライスを食べていた時、家族だと言って貰えたその時にも、嬉しいはずなのに涙を流した。スゥは、それを思い出していた。


 けれど。


 この涙は、似ているけれど違う――スゥは、何となくそう思った。この擽ったいような、切ないような、もどかしいようなこの感情が一体何なのか、今のスゥにはまだ難しかった。


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