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最果てのホライズン  作者: 椎名乃奈
第三章 かくれんぼ
26/60

【026】


「レイくーん、リナちゃーん。どこですかー?」


 声を出し、呼び掛けながら二人を探すが、その声に対する返事は無かった。返事をすれば、自分はここに居るよと言っているのと同じだからだ。


 ただ。


 スゥは、かくれんぼが得意だった。


 隠れるのはあまり得意ではないが、隠れている人を探すのがとても得意だった。それは、スゥのコンプレックスでもあった獣耳のおかげだ。スゥの獣耳は、些細な音も聞き分けることが出来る。


 なので。


 本当はレイもリナもどこにいるのか既にスゥには分かっていた。


 けれど。


 直ぐに見つけてしまっては、見つかるか見つからないかと言った緊張感を味わうことも無く、互いにつまらなく終わってしまう。


 だから。


 スゥは、敢えてどこにいるのか全然分からないような素振りを見せ、隠れている直ぐその近くを探すことで、隠れている人にその緊張感を演出していた。


 そして。


 頃合いを見て二人を見つけてあげる。


「見いつけた」


「うわあ、見つかった」


「見つかっちゃいました」


 別に。


 スゥが、誰かとかくれんぼをしたことがあって、得意気である訳では無かった。仲間に入れて貰えなかったスゥは、遠目に人間がかくれんぼをやっているのを見ながら、どこに誰が隠れていると言うのを、一人でやっていただけだった。


「スゥは、鬼ごっこはへたっぴなのに、かくれんぼは強いな」


「スゥちゃん、強いですね」


「えへへ、偶々ですよ」


 スゥは、照れ臭そうに頭を掻いていた。


 懐中時計に目をやると、もう直ぐ三時になろうとしていた。


「そろそろ、おやつの時間なのでニナさんの家に帰りましょう」


「よっし、おやつ先に頂き」


「あ、ズルい。待ってよ、お兄ちゃん」


 駆け足で帰るレイを追うようにリナも帰って行った。


 あれだけ遊んでも、おやつを食べる為に慌てて走って帰るその後ろ姿は、スゥの瞳に少し面白く映っていた。小さく笑みを溢し、自分も帰るべき場所へ帰ろうと一歩踏み出したその時だった。


「私のことも見つけてよ――スゥちゃん」


 どこからかそう聞こえて来たのだ。


 どんな些細な声も聞き逃さない、獣耳だ。だから、今し方聞こえて来た声が、自分の聞き違いだったとは考えにくかった。しかし、辺りをどんなに見回してもその姿はどこにもなかった。


「どこにいるんですか?」


「私はここだよ――見つけられるかな。スゥちゃん」


 その声の主は、スゥのことを知っていた。


 確かに聞こえて来る声には、スゥも覚えがあった。けれど、どこの誰の声だったか、それだけが頭の中に靄が掛かかり、それを思い出させるのを邪魔しているようだった。思い出せないのなら、獣耳を駆使し、探してしまう方が早かった。


 スゥは、聞こえてくる声に聞き耳を立てた。


「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」


 そう言い、パチパチと手を鳴らす音が聞こえて来た。


 どうやら。


 その声は中央広場内から聞こえて来る声と手を鳴らす音では無かった。もっと遠く、下の方から聞こえて来るような――そう言えば、ホライズンへ来てから一ヶ月と言う月日が流れていたにも関わらず、まだ下側を見に行ったことが無かった。


 それを理由にする訳では無いが、偶然その声と手を鳴らす音が下から聞こえて来るのだから、下へ行かない理由が無かった。だから、その声と手を鳴らす音に釣られるかのように、下へ下へと降りて行き、上下を分ける所にある駅まで降りて来た。


「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」


 しかし。


 まだ、その声と手を鳴らす音には、辿り着かなかった。ここよりも、もっと下へと降りる必要があった。けれど、ここから先への道をスゥは知らなかった。辺りを見回すと、駅から少し離れた所に暗いトンネルがあるのが見えた。


 どうやら。


 そのトンネルの先から聞こえて来るようだった。


 スゥは、その声と手を鳴らす音の方へゆっくりと向かって行った。


 今にして思えば、そのトンネルは可笑しかった。


 そのトンネルは、空間そのモノが螺子曲がり、歪んでいるような――そんな、違和感を覚えるトンネルだった。けれど、スゥはこのトンネルはそう言うトンネルなのだろう、そう思った。


 それは。


 スゥが、少しばかり不思議なことに慣れてしまった性なのかもしれない。


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