第一話:焔女を探して
第一話
人によって幸せを感じるラインが違う。これは明確に線引きされていない事だろうし、誰も口に出したりしない。その時の心境、立場、事情で変わるもんだ。
たとえば、金持ちは何をもって自分が幸せだと思うのだろう?前よりお金が多く手に入った?それとも素晴らしい調度品が手に入った?
俺は金持ちではない。どちらかと言う貧乏だ。では不幸せか?そうでもないだろう。人は自分の立ち位置にプラスマイナスして物事を考える。自分が損をしても心が満たされれば幸せを感じる生き物だ。つまり、痛みをもってしても幸福に感じる人間が居てもおかしくない。
「……あちー…」
前置きなんてもう止そうと思う。
現実逃避なんて俺じゃ逃げきれてない。現状、水分が圧倒的に不足している。助けを呼ぶための携帯電話は修理中。
そろそろやばいかもしれない。でも、やばいと思っているうちはまだセーフだとかなんとか聞いた気もする。
「思えばサークル活動なんかするんじゃなかったかと…」
大学生活二年目。大学に慣れ、友人はあまりできずとも楽しい日々を送っていた。いや、それなりに楽しい日々か。そういえば昨日は酒飲んで『明日は妖怪探しじゃー』とか騒いでたっけなぁ…。
サークルは三年から強制的に入れさせられるが、基本二年から誰もがこの大学では入っている。面倒事を先延ばししてしまう俺はごまかしごまかししてきたが六月に入りとうとう一人の教授につかまり名前貸しの幽霊で構わないからと捕らえられてしまった。
「……ふたりしかいねーじゃねーかと思ったなー」
夜な夜な飲み会を想像していた俺は年齢関係なくサークルをしているところだと思っていた。それは間違いで、俺と同じ哀れな二年生が一人いただけだった。
まぁ、それはいい。
初のサークル活動、現地集合で来てみれば俺と教授だけ。もう一人は風邪で来てない。教授は連絡が入ってすぐに何処かに行ってしまった。
何のために穴を掘ったのか、もうどうでもよくなった。ここらは鍛冶が盛んだったとかで火の神をあがめていたとかなんたらこうたら…しかし、刀は戦を呼び寄せ村は壊滅。神から零落したと言う事で妖怪扱いされたとか…。
その『焔女』という妖怪の資料がこの近くに埋まっているから適当に探して来るようにと言われたのだ。まぁ、この話は実際無かったらしくすぐに有力武将の土地として年貢をきりきり納めていたらしいけどな。
「んな物知るかと逃げればよかった……」
近くからはかーんかーんという鉄か何か…とりあえず鉄分含んだ何かを打つ音。心に余裕があれば聞き入っていただろう。今ではぼーっとしている為その音が死神の足音か何かに聞こえる。
適当に穴を掘ったらいきなり足元が無くなり、気付けばガラス職人がいそうな炉が近くにあったのだ。俺の体調はと言えばすでに水分が体に行きとどいていない状態だ。いつのまにか真上にはお月さまが輝いている。
「出来た―っ」
「……」
髪はぼさぼさ、服はすれた麻のような布を纏っているだけ、そして燃えるような目…俺の両肩に手を置き、前後に揺さぶってくる。
「君は、客か?いやー、運がいい。君は運がいいよーうん。師匠に封印してもらって何せ時を超えた焔女の作品を拝めるんだからな。ここに最初にやってきた奴にこの渾身のひと振りを授けるって決めてたんだ。ほら、持っていってくれ」
「……」
「おーい、どしたー?」
「み、水…」
「水?水ならほれ、ここに…おわっ」
女を押しのけて水を口にする。
「ぐはっ…」
「あ、そ、そうだったー…それ人間が飲むと体に悪い奴だったんだっ。水神様に依頼した水だった」
「ぐぬぬ……ぬぉーっ」
水を飲むだけでも一苦労。何やら丸っこい異物のようなもの…たとえるならスライムを一気飲みしているかのような感じだ。
「よーし、行った」
窒息の危機を乗り越え、何とか飲み干す。先ほどと違ってある程度余裕が持てる。
「そこまでして君はあたしのこれが欲しかったのか」
「あ、いや…俺は別に…」
「うんうん、皆まで言うな。ほれ、持って行って」
「え、あー…」
渾身の一振りとか言いながらぞんざいに投げつけられる。仕方なく受け取るとそれは恐ろしく手になじみ、何かを切りたくなってくるほど切れ味よさそうな代物だった。
「銘を気焔、焔女・気焔が鍛えた一振りっ」
「……」
「いやー、これで戦乱の世も泰平だわ」
「え…ああ、そうか」
こいつが妖怪らしい。焔女、とか自分で言っていたようだ。いまいち実感がわかないけれども…今手に持っているこの刀を見れば不思議と人が鍛えたものではないと思わされるのだ。
まるで幻のような刀身、ずっと眺めていれば刃に吸い寄せられて自分を切ってしまいそう。そして、どこまでも曇りのない刃紋…すっと指で撫でてみたくもあり、鎬も言葉足らずだが素晴らしいの一言だった。
途中で我に帰り、咳払いをする。
「簡単に言うけどその泰平の世なんだ」
「……は」
「つまり、こう言ったものはもう芸術品とかそう言ったものだな…」
「必要ないと?」
「ああ、そうなる」
「……」
その場でがっくりと焔女とやらは膝を地面につけたのだった。しかし、この刀は本当に素晴らしいものだな。
どうも雨月です。今作の大地君は真夏のゆきじょに出ていた田原兄妹の長男だったりします。いや、そんなことはどうでもいいか。では本題です。妖怪と言うとやっぱり○太郎を想像してしまうものですがそれは作者の幼少時代に多大な影響を与えてくれました。怖くて家に入れないとか一人じゃ眠れなくなるとかもうビビりに成長させてくれました。ねずみ○でぎゃん泣きする子供も珍しいでしょう。いまや屁とも思わず恐怖物の再現VTRではあらさがしをする始末…さて、そもそも妖怪とは何だと思いますか?本当に存在する?いや、それよりもやっぱり色々な視点からみたほうが面白いと思っています。実際にそういった類のものでもかまいませんがさまざまな資料に目を通し、こうではないかと考えている人たちの著書を読むと意見がバラけていて面白いものですよ。当時、そして現代でも理解できない現象を妖怪の仕業にしたり、それがそのものだったりと。もちろん私の地元にも地域性のある妖怪が山に埋まっている…と思います。身近でいてもっとも遠い存在が妖怪だったのでしょう。今だってこうして作品の中や話の中に妖怪は生きていますから眉つばであろうと存在しているのでしょう。




