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ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
相模灘最終決戦編
336/340

背負う

同日、4時00分、横須賀基地。


「九州、四国、北海道、東北、中国地方、近畿地方、中部地方の電力送電終了、三浦半島経由でコンデンサー艦に充電中!」

「『大和』以下五隻、明石と合流まであと10分!」

「関東地方、及び周辺原発限界稼働中! 予備電力、及び余剰電力を充電中、完了まであと1時間」


 相変わらず微動だにせず小堀は報告を聞き続ける。


「関東地方の電力送電はどうした?」

「現在民間の電力会社を通してケーブル、及び回線接続中!」

「民間の電力会社?」

「電力を取る発電所周りに非難していた住人の中で、自主的に協力している方々がいるそうです」

「そうか……」


 目の前で、必死の形相で作業を続ける兵、居てもたってもいられず、一部の避難民たちは、出来る範囲で作業への手伝いを開始。現場判断でその援助を受けることにしたのだ。


「作戦『武御雷』、進行度60%を超過、この調子でいけば、0700までに全作業工程が終了します」


「大いにけっこう、早く終わることに損はない。そのまま状況にあたれ!」


 ここまで、艦隊損耗は途方もないことになっている。しかし、作戦自体は順調に進んで……いた。


「これは……相模灘海底ソナーに感あり! 通常動力型潜水艦です!」

「なんだと!?」


 電探員の前のモニターには、三隻のエネミー表示が浮かび上がる。コンデンサー艦たちのすぐ目の前だ。


「コンデンサー艦は!?」

「現在半数がケーブル接続中! 動けません!」


 このままだと、充電した電力と、貴重な高性能コンデンサーが全て水中へと消える。


「まずい!」


 小堀がそう叫んだ直後のことだった。


「新たな飛行物体確認! 友軍機! 機種は『流星』! 『瑞鶴』の艦載機です!」




「幸運艦は伊達じゃないな、瑞鶴」

「えへへ、まさか格納庫の奥に、予備機が五機も残ってたなんて気づかなかったよ」


 俺たちは後退途中、突如出現した音源をヨミが捉え、潜水艦と断定。攻撃手段を持たない俺たちは周辺航空基地へ攻撃要請を図ったが、それよりも早く、『瑞鶴』が対戦爆弾を装備させた『流星』5機を発艦させていた。


 聞くと、全機発艦させたつもりが、最下段格納庫の奥に、欧州出兵時に最終予備機として、おいておいた機体が残っていたそうだ。


「それはそれで、報告義務の怠りとして問題だがな」


 プライズはやれやれと言わんばかりにため息をつく。


「でも、これで『武御雷』作戦は続行できるよね?」

「ああ、潜水艦たちは、輸送艦を狙って雷撃するために震度を上げ、雷撃姿勢に入っているはずだ。全部ストップして急速潜航なんて、とてもできる艦じゃない」


 瑞鶴の幸運に救われたことになる。


「あ、明石だ!」


 大和が指さす方向には、異形の筒を甲板上に乗せた『明石』がいる。


「んにゃ、合流できたにゃね。説明している時間はないにゃ、紀伊は少し離れて待機。大和は反転して南東125度の方向で艦首固定。錨を下ろすにゃ」

「錨を?」

「いいから早く! ヨミと『やまと』は『大和』の左右に密着するように位置、同じく錨を下ろすにゃ!」


 とにかく時間が惜しいのだ。やるしかない。


「大和、反転、取り舵一杯。方位125度」

「よーそろーとりかーじ!」


 大和が反転を終え、『やまと』『伊403』が停止すると、『大和』の艦橋へと明石が現れた。


「にゃ、今からやるのは応急処置&突貫工事で、『大和』に武御雷をとりつけるにゃ。そして、それと並行して『伊403』、『やまと』の電力を『大和』へと注入するケーブルを取り付けるにゃ、準備はいいにゃ?」

「うん、私は大丈夫。早く始めちゃって、明石」

「にゃ、有馬、これを渡すにゃ」


 明石は俺に、真っ黒い眼鏡と、スマホ程度のモニターが付いたハンドガンのようなものを手渡した。


「見れば分かるとおもうにゃけど、発射スイッチとゴーグルにゃ。引き金は、有馬が引くのにゃ」


 それだけ言うと、明石は姿を消した。


 外では、クレーンが忙しなく稼働を開始し、大和の本来一番砲塔があったエリアから艦首先端にかけて、異形の砲身をとりつける作業が始まった。


「……そうか、軍の代表として、俺はこの引き金を引き、全てを終わらせる必要があるのか」

「怖い?」


 俺が発射スイッチを握りしめながら呟いた言葉に、大和は尋ねる。


「まさか。ただ……そうだな、こんな役割を、俺が引き受けていい物なのか、未だに俺は自信が持てないんだ。こんな思い希望を、俺が背負えるのか……」

「はは、いつまでたっても謙虚だね、勇儀は」


 大和はそっと俺の手に手を重ねる。


「大丈夫、勇儀と一緒に、私もその希望を背負う。勇儀が自分を信じられない分は、私が勇儀を信じるよ」

「あー、ずるいんだ。私だって、有馬のことは信じてるよ」


 二人しかいないはずの艦橋に、新たな別の声。


「そ……ら?」

「えへ、来ちゃった」


 左腕部分だけプラプラと袖を揺らした、いつもの軍服姿の空が、『大和』の艦橋にいた。


「おま、どうしてここに!?」

「いやーあれだけ騒がれれば嫌でも気になるよ。だから、出航する『明石』に紛れ込んでみたら、『大和』に向かってた。じゃあそこに有馬もいる。そう踏んで、今」

「お前……陸で待っていてくれって言ったのに―――」

「聞いた。それで最初は、私も祈って待っているつもりだった」


 目を閉じ、薄く微笑む空。


「でもね、やっぱりそんなの私には似合わない」


 失った左腕を抱えながら言う。


「やっぱり私は、有馬の隣がいい。そこが死地だというなら、喜んで私は死地に向かうよ」


 後ろでは大和が引き笑い、俺も深い、深いため息をつく。


「空の行動にはもう驚かないつもりでいたけど……参ったな」


 大和は一歩前へ踏み出し、大和と向き合う。


「傷はもう大丈夫なの?」

「そっちこそ、一個主砲がないみたいだけど?」


 この二人は相変わらずだな……。


「互いに、一本腕を失ってるんだね」

「じゃあ、片腕同士、残った腕で有馬を支えて上げないとね?」


 二人は決意がみなぎっているとでも言わんばかりの視線を俺へと注ぐ。


「世界最強の戦艦と、歩兵が付いてるんじゃ。俺も怖いものなしだな」


 二人の頭にポンと手を乗せ、艦橋の外を睨んだ。


「じゃあ、その時は、よろしく頼むぜ」

「「もちろん!」」

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