間章 瑞鶴の葛藤
同時刻、航空部隊。
「瑞鶴、航空隊の計数が終了した。出撃機の4割は落ちたようだ。私の航空戦力も、もう潰滅したと言っていいだろう」
「そっか……分かった」
私は、エンタープライズからの報告を聞いて、大きく息を吐きだす。
「本部へ、電報を送らないと」
もう、戦えないと。
『我ラ航空艦隊、艦船、及ビ航空機二甚大ナ被害ナリ。戦闘続行難シ。之ヨリ反転、帰投ス。以下損害。『飛龍』『てるづき』『アドミラル・ゴルシコフ』『こうりゅう』撃沈。『ドルトムント』大破。『やましろ』『燕雲』中破。航空機損耗率、76%』
電報を打ち終わると、私は甲板へと姿を映し、ボロボロの航空部隊を見渡す。
敵航空艦隊の潰滅後、砲戦部隊援護のため、決戦航空部隊と防衛航空部隊は合流、『大江戸』の捜索にあたった。砲戦部隊の掩護のために、残存する航空機で攻撃隊を編成、攻撃したまではよかった。
それとほぼ同時で出現した敵の大航空編隊が、格納庫が空になった私たちを襲った。戦闘機隊は必至に抵抗したが、『Ⅴ33シヴァ』のあの攻撃によって、陣形が乱れ深手を負い、潜水艦含む四隻も持っていかれた。それ以外の艦も甲板をやられ、発着艦不能に陥った。『大江戸』を攻撃した航空隊の損害も甚だしく、満足に戦えるのは、私『瑞鶴』だけになってしまった。
とはいえ、私も艦載機の二割は失っているし、整備員に死者も出ている。ギリギリ小破で留まってはいるが、何度この幸運が続くかは分からない。
「それに、一回は飛龍先輩が拾ってくれた命……」
『飛龍』は、敵の雷撃を受ける際、私と並列して進んでいた。舵を切ればよかったものの、後ろにいる私が被雷しないようにと、あえてその身で魚雷を受け止め、私を守った。曰く、『瑞鶴はまだまだ頑張ってもらわないと。航空戦隊最期の希望の仕事は、まだ終わってないよ』とのこと。
「飛龍先輩……分からないよ。私は、何をすればいいの?」
『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』、結局、先輩たちは皆先に行ってしまった。また、私だけが残された。確かに、あの時とは違う。指揮官だっているし、色んな国がバックアップに付いてる。
じゃあ、私がここに残った意味は? 航空戦隊最期の希望の仕事って何? 私は、いったい何をすればいいの?
「何をすれば、私は仕事を果たしたと言えるの……? 指揮官なら、それが分かるの……?」
遠方で決戦へと挑む彼を想う私の呟きは、暗くなった海上に、静かに溶けて行った。




