間章 英国航空騎士団
「皆の者! 良く聞け!」
気付くと私は、整列したパイロットたちに、大きな声で語り掛けていた。
体が少し重い、どうやら甲冑を来ているようだ。
「今ここにいるのは、厳しい訓練を終え、遂に、自らの機体を手にしようとしている、新たなる騎士たちだ」
語り掛ける声は、自分でも惚れ惚れするほど凛としていた。
「しかし、今英国は、かつてないほどの苦境に立たされている、諸君らの中には、本来ジェット機に乗るはずだったものもいるはずだ」
イギリスは内戦が始まった直後に、現代兵器の半分以上を敵に奪われてしまった。
ジェット機も例外ではなく、僅かしか南部は取ることができなかった。
「しかし、それでも空で戦いたいと、我が『スピット』制空戦闘団に属してくれたことは、感謝に耐えない……」
私は、拳を強く握りしめたと思えば、再び大きな声で叫んだ。
「そんな絶望のさなかに居る君たちに、私は、見習ってほしい存在がいる」
大きく息を吸い込み、高らかに言った。
「それは、旧大日本帝国に居た、空のサムライたちだ!」
スピットは確かに、私達のことを呼んだ。
「彼らは敗戦間近で、敵に続々と新鋭機が登場する中、誇りと勇気、そして僅かな希望を持って戦った! ベテラン兵は、老獪なテクニックにものを言わせ、連合軍の新鋭機を少数で退けた! 新兵たちは、刺し違える覚悟で、己の全力を持って敵に向かった!」
私はその言葉を聞いている内に、少しずつ涙が込み上げてくるのが分かった。
「特攻という自殺紛いのことを、正当化しようとは思わないが、それを実行に移せるだけの、守る意思と勇気は、賞賛に、そして尊敬に値する!」
かつての旧敵は、こんなことを思ってくれていたのかと……。
「そして、今我らに求められているのは、まさにその意思の強さと勇気だ! 彼ら日本人に、武士道、大和魂があったように、我らロイヤルには、騎士道、ジョンブル魂がある! それを世界に、見せつけてやろうではないか!」
そこで私の意識は、現代へと戻って行った。