いざ行かん欧州へ
現在、1月7日、11時50分、佐世保亜細亜共同軍港。
「さて、そろそろつくはずだが……」
欧州に行くにあたり、佐世保で連合艦隊を編成、他の準備も整え、向かう手はずになっているため、俺は港にて、連合艦隊の到着を待っていた。
「まだ来ないか?」
浅間長官が俺の隣に立ち、煙草に火をつけながら言う。
「ええ、時間的には、もう着いていてもいい頃なのですが……」
そんな話をしていると、ようやく遠くから汽笛が聞こえ、水門が開く音がした。
「お、やっと来たみたいだな、私は輸送船に積む物資の確認をしてくるから、艦隊の指揮は君に任せるよ」
「了解しました」
長官は煙草を片手に、倉庫の方へ歩いて行った。
「随分匂いが強いし、変な音はなるし……体に悪そうな煙草だな」
軍の長官組は皆煙草を吸う、依存症ほどではないが、一日一本ぐらいのペースで吸っている。
その中でも浅間長官は、とびぬけて吸う回数が多い……ような気がする。
「さて、久しぶりに皆に会いに行きますか」
アメリカ艦以外は皆、大規模改修を受けていて、キューブをスリープモードにしていたため、明石意外と会うのは、二カ月ぶりぐらいだ。
結局、欧州出兵用の艦隊は、最初の案に少し手を加えたものになっている、新たに就役したWSたちもいるので、それを加えたら、だいぶ大きな艦隊になった。
「連合艦隊総出撃だなこりゃ……」
手にした資料を見つめながら呟く。
軍がいない間、日本は本当に大丈夫だろうか?
「結局、自衛隊の艦も数隻出撃するしなぁ」
総合会議の時は、自衛隊は動かないと言っていたが、近代潜水艦の脅威が大きいと見られたため、結局数隻出ることになった。
万が一に備えて、中華同盟に掩護用の艦艇と航空兵力を送ってもらったが、なんと言ったって中国と東南アジアの国々の兵だ、どこまで任せられるか分からない。
「別に中国が悪いって訳じゃないけど、国柄的に、日本とは合わない部分があるからなぁ」
東南アジアは、頑張ってはいるが、決して強い軍隊ではない。
中国に関しては、量に関しては文句なしだが、質がどうも良くなく、実力ある兵士はそこまで多くない。
本当に大丈夫なのだろうか?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
欧州出兵用連合艦隊編成一覧
「水上砲撃戦部隊」
第一艦体
総旗艦『長門』『陸奥』『武蔵』『A型』『B型』『Ⅽ型』
第二艦体
旗艦『大和』『アイオワ』『扶桑』『妙高』『A型』『B型』
「航空戦闘部隊」
旗艦『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』『※古鷹』『A型』
「航空掩護、直掩戦闘部隊」
旗艦『瑞鶴』『エンタープライズ』『いずも』『秋月』『初月』『A型』
「水雷高速戦闘部隊」
第一艦隊
旗艦『阿武隈』『吹雪』『夕立』『陽炎』『綾波』『夕雲』
第二艦隊
旗艦『矢矧』『北上』『雪風』『時雨』『響』『朝潮』
「輸送船護衛戦闘部隊」
旗艦『アリゾナ』『三笠』『B型』『B型』『A型』『Ⅽ型』
「護衛対象輸送船団」
総艦艇数 五五隻
兵員輸送船『とちぎ』『あおもり』『ながの』
物資輸送船『D101~D151』
後方支援艦『明石』『ヴェスタル』
「特殊戦闘部隊」
旗艦『あめ』『はれ』『やまと』『しろわし』『しょうほう』『せいりゅう』
「特殊電子戦闘、潜水奇襲部隊」
旗艦『伊―403』『おうりゅう』『しょうりゅう』『じんりゅう』
※以下軍機
他、ファントム所属艦が一隻出撃、独自に作戦を遂行、また『伊―403』は、必要になれば大堀大佐一行を艦長へ迎える。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「勇儀!」
全艦が錨を下ろし、港に入港すると、全員が俺の前に姿を現した。
その中で大和が飛び出し、俺の胸に抱き着いてきた。
「お前は寝ても覚めても変わらないな」
俺は大和の頭に軽く手を乗せ、ポンポンと叩く。
「パパ、全艦艇、集合しました」
ヨミがそう言いながら、俺の方へと寄って来る。
「そうか、ありがとう」
頭を出してうずうずしてたので、ヨミの頭も撫でてやる。
「いつまでイチャイチャしているんだ」
長門が呆れたようにため息をつく。
そうだな、いつまでもこうしてはいられない。
「さて、全員集まっているということだが……うん、確かに全員だな」
空と一緒にいるkarを除いて、全兵器のWSたちがここにいる。
「それじゃあ、艦隊編成の内容を言うから、しっかりき――」
俺が言いきる前に、上空を二機の航空機が飛び越えた。
「な、なんだ⁉」
とっさに空を見合上げると、その二機は、『九九艦爆』と『九七艦攻』だった。
「あちゃーあれほど、今は飛ばないでって、言っておいたのに……」
「蒼龍も? 僕の方も言っておいたんだけどね……」
飛龍と蒼龍が、同時にため息をつく。
「赤い尾翼、胴体尾部に斜め黄色三本線の『九九艦爆』……BI‐310の機体番号の『九七艦攻』……と言うことは」
「江草さんに友永さんですね……」
赤城と加賀がそう言いながらため息をつく。
「説明してくれるか?」
俺が聞くと、飛龍が口を開いた。
「ここに来る途中、僕たちだけ、下関に一度よって、友永と江草の機体にキューブを入れたんです」
最初から二人には、友永隊、江草隊の記憶を持った航空機がいたが、今回は、正式に人格が持てるキューブを機体に入れたようだ。
それは俺が指示したことだから知っているが。
「入れて、目覚めた瞬間からずっとああで、燃料が切れるまでずっと飛んでは着艦、給油してまた飛び出すを、ずっと繰り返しているんです……」
元気な二人だな……。
「司令からも、二人にしっかり言ってあげてよ、僕に乗ってる整備員たちが、凄く困っちゃってるんだよね」
蒼龍もそう付け加え。
「出港する前に、一度会っておくか……二人を、佐世保の飛行場に降りるよう、伝えておいてくれ」
その後、気を取り直して、全員に艦隊の編成を伝えた。
武蔵が、「お姉さまと同じ艦隊じゃない」と、切れそうになっていたが、そこは何とか大和になだめてもらい、その場を収めた。
瑞鶴も、「何故プライズと同じ艦隊なのか」と駄々をこねたが、両方大和の直掩艦だからしょうがないのだと、納得してもらった。
「さて、明日の午前にはここを出港だ、燃料はひとまずパプアまで行ける分あればいい、パプアで満タンにした後、インド、ギリシャで補給、ドイツに向かうぞ」
そう告げると、皆頷いた後、すっと消えて行った。
だが一人だけ、まだ残っている者がいた。
「どうした、アイオワ?」
ホットパンツに作業着の上着、長くカールのかかった髪の毛に、エメナルドグリーンの大きな瞳、日本艦とは大きく異なる特徴を持つ彼女。
「……私は、皆が集合するまでこの港を守っていたけど、いい人ばかりだったわ」
アイオワは、水平線を見つめながら、話してくれる。
「誰も、私を大和と比べようとはしなかった、私を、ただ一隻の、戦艦『アイオワ』として見てくれた……それが嬉しかった」
零れる笑みからは、少なくとも、この港で、悪い思いはしてないようだ。
「アイオワ、日本を、好きになってくれたか?」
「ええ、少しね」
俺が聞くと、アイオワは少し悪戯っぽい笑みを浮かべ、消えて行った。
「少し、か……」
アイオワは、きっとまだ日本を警戒している、心のどこかで、日本のWSたちを避けようとしている。
それは嫉妬なのか、憤怒なのか、憎悪なのかわからないが、少しづつ、心を開いてくれるなら、それでいい。
開かせるのが、俺の仕事なのだろうが……。
「さて、じゃあ俺は、お二人に会って来るか……」




