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特殊情報偵察部隊第一責任者〝大堀楓真〟


「ああ、ルーちゃんにタッシュンか、君たちならまあいいかな」


 ルーちゃんはまあいいにしてもタッシュンと言う呼び名は独特だな……。

 多分シューカ・タシュケントのタシュケントから出したんだろうけど。


「「その呼び名はやめろ!」」


 二人の声が重なる、相当嫌だったのだろうか。


「分かったって……ルカ、タシュケント、君たちにもきちんと教えるからこっち来て座れよ」


 大堀さんはなぜ空をタシュケントと、ロシア軍人としての名前で呼ぶのだろうか?


「さて、まずは俺の正式な立ち位置から明かしていこうか」


 皆は各々の姿勢で大堀さんの話を聞き始めた。


「一様俺は、海上自衛隊の大佐で、イージス艦『ふそう』の艦長だが、それと同時にもう一つの役職を担っている、それが……」

 

 大堀さんが言う前に、後ろであくびをしていたファントムが言う。


「特殊情報偵察部隊、第一責任者、それがこやつの正体じゃ」

「何でかっこつけて言おうとすること君は奪っていくの……」


 そう言いながら大堀さんはファントムの頭を軽く小突く。

 大堀さんの耳にはps……あれ? プロトタイプだ……。


「大堀さん、なんで貴方、psなのに姿が見えて、wsに触れるんですか?」


 旧式のpsでは声を聞くのが限界だったはずなんだが……。


「あ~……俺も兵器好きなんだよ」


 俺は今の一言で何となくこの人の確信を見抜いた気がした。


「俺と同類ってことですか?」

「まあそんなとこだな、あの時の事件さえなければ、俺もこの機械を着けずに、兵器たちと触れ合えたかもしれないな……」


 そう大堀さんは言葉を零した。


「さて、話がそれたな……」


 大堀さんはそう言うと、切り換えて話始めた。


「俺はさっきファントムが言った通り、桜日自衛隊の特殊情報偵察部隊の第一責任者だ、まあ簡潔に仕事を説明するならば、誰にも知られず、世界中の機密情報のやり取りを行う裏の情報部隊だ、一様隠語としては『亡霊』と呼ばれているな」


 亡霊……ファントムか……。


「で、結局なんでファントムなんて旧式機を蘇らせたのさ、現代のジェットとやりあうには物足りないし、レシプロとも辛くない?」


 そう空が、機体を見ながら言う。

 確かにそれは最もだと思う。


「失礼な小娘じゃな、儂を見くびるなよ?」

「小娘なのはお前も同じだファントム」


 そう言って再びファントムを小突いた後、ファントムを自身の膝に座らせ、話を続ける。


「亡霊の仕事をするにあたってな、高速で動き回れる足が欲しかったんだよ、でも『F35』とか『F15』は主力の戦闘機として使いたいし、レシプロだと行けるところ限られるし、ってことで旧式機のファントムを、最低限今の戦闘機や、レシプロとやりあえるだけの性能にして、俺の私有機にしたわけ」

「随分無茶苦茶だが……」

「まあそんなに深く気にするなってことだ」


 ルカがため息をつきながら出した言葉に大堀さんは笑いながら答える。


 しかしまだ一つ疑問が残る。


「ファントムって、どうしてそんな『のじゃロリ』になったんですか?」

「……あーそれ聞いちゃう?」


 少しの沈黙の後大堀さんはそう言う。


「ええ、まあ、気になりますから」


 俺がそう返すとファントムが大堀さんの変わりに話始めた。


「小僧、WSは何をもとに姿を構築しているか知っているか?」

「メモリーに残っていた記憶や人間のイメージ」

「そうじゃ」


 俺が答えるとファントムは満足そうにうなずく。


「だからお主の大和や瑞鶴などの兵器たちは、人間たちのイメージの結晶じゃ、そしてもう一つ、WSの姿を構築できるものがあるじゃろ?」

「個人の思い?」

「そうじゃ」


 またも満足そうにうなずく、大堀さんはそんなファントムを膝に置いたまま下を向いている。


「個人や使用者の思いが特別強いと、WSはその者の姿と記憶を引き継ぐことになる、隼、零、アリゾナなどじゃな」


 隼は加藤隼戦闘隊の加藤さん、零は零戦搭乗員の恋人、アリゾナは艦長のアイザックさんだ。


「しかし現代のWSには、メモリーとして使えるイメージが足りない、個人の思いが強く出るほどの激戦を戦っていない、などの理由で姿を形成しにくいのじゃ」


 ふむふむ、確かに……。

 戦後の兵器たちは大戦のような激戦を戦っていない分、思いの強さが減る、そして生まれてからの時間が少ない分、イメージも固まらないのだ。


「だから、誰か一人のイメージを抽出し、体とすることも可能にしたのじゃ」

「ん? ってことはファントムの姿は……」

「大堀の趣味じゃ」


 大堀さんは顔を下に向けてプルプルしている、よっぽど恥ずかしいのだろう。


「大堀さん……もう少し何とかならなかったのですか……?」

「いや、ほらさ? ファントムおじいちゃんって呼ばれてたじゃん? でもせっかくならさ、可愛い子の方がなんかやる気出るじゃん?」


 うわぁ……この人間違いなくアニメオタクだな……。

 いや別にそれが悪いとは言わないけど、それが無意識のうちにファントムのイメージを形成して、ここまで典型的に完成された『のじゃロリ』を作り出すとは……。


 俺たち三人は何も言えず沈黙し、大堀さんは恥ずかしさに顔を伏せる、そんな状況をファントムは楽しそうに眺めていた。


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