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『F―4EJファントム』

「では改めて、私達は貴官らの来迎を歓迎しよう」


 そう言いながら俺の前に座る男は言う。


「こちらこそ、手厚い歓迎感謝しますボロディノ・ハープン司令官」


 この人はここKS基地の最高責任者、そして空の名付け親だ。


「そんな硬い挨拶はよしてくれ、有馬司令官」


 皺が多い顔を崩して俺に笑いかける、その顔からは司令官と言うより、近所のおじいさんって感じがする。


「ははは……そうゆうわけにはいきませんよ、ハープン司令官、いえ、白衣の亡霊」

「その名を知っているのか……」


 白衣の亡霊、この人は2036年にロシアが行ったピィエルン作戦、いわゆる北極奪還作戦で、大量の兵士を撤退させることに成功した英雄だ。


「あの頃は必死だったからな、今となってはもうできるとは思えないよ」


 ピィエルン作戦に従軍した兵士たちは、撤退も進軍も出来ず北極に放置された。

 ロシア史上レニングラード包囲戦とならぶ地獄と言われている。


 開始時こそ大量の人員と兵器で勢いよく侵攻したが、気象が安定した日にしか物資は輸送されず、その内半分は、潜水艦で沈められてしまう、そんな状態だった。

 遂にはモスクワが空襲されたため、ほとんど北極への輸送はできなくなる、そんな状態になっても、撤退用の船がほとんど来れないため、撤退もできず、弾がないので攻撃もできずの所を、この人は自分の部下と近くに展開していた部隊、三個師団のほとんどを生還させたのだ。


 その時の来ていた服が真っ白だったから、撤退途中で死んだと思われていたから、白衣の亡霊と呼ばれるようになった。


「前置きはこれぐらいにして、本題に入ろうか、有馬司令官」

「はい、お願いします」


 今この部屋には、俺とこの人しかいない、空はルカに貸しているので、今頃戦車倉庫だろ。


「君の目的は確か、ここの軍事基地の総戦力の調査と、北欧のWS事情だったな」


 俺は頷く、総戦力の調査は艦長に頼まれてだがWS事情については電撃作戦時のルカの言葉が引っかかっているからだ。


「これが、ここの基地に駐屯している兵器たちの詳細と機数だ」


 そう言って資料をこちらに向かって渡す。


「拝見させていただきます」


 そこには、ずらずらと大量の兵器の名前が並んでいる、旧式WSから最新式の物まで様々だ。


「ここは東ではメインの基地になるから、別の基地の車輌たちがいることも多々あるが、まあその詳細は勘弁してくれ、多すぎて数え切れんからな」


 相変わらずの物量は健在のご様子で……。




 コムソモリスクナアムーレ軍事基地、駐屯兵器


 ステルス戦闘機『su―67』

常時起動機33機、予備機13機、修理中8機、スクランブル機3機


 多目的支援機『tu―99』

常時起動機26機、予備機2機、修理中2機、スクランブル機2機


 長距離大型偵察ヘリ『BE2』

常時起動機13機、予備機2機、修理機0機、哨戒用2機


 大型重爆撃機『ゴルバチョフ』

常時起動機8機、予備機2機、修理機11機



 主力戦車(MBT)『T―18―BIS』

常時起動車輌23輌、予備車輌3輌、修理車輌0輌


 支援戦車(SBT)『T―14』

常時起動車輌39輌、予備車輌10輌、修理車輌2輌


 巡行戦車(ⅭT)『シュバルツ』

常時起動車輌10輌、予備車輌2輌、修理車輌1輌、哨戒用3輌

 

 まで現代兵器。


 戦闘機『yak―9P』

常時起動機78機、予備機12機、修理機8機


 中戦車『T―34―85』

常時起動車輌134輌、予備23輌、修理2輌、その他一輌


 まで旧式兵器。




「凄い……数ですね……」

「まあな、そこに、臨時で駐屯している航空機や戦車が加わる、いろいろな所から航空機が飛んでくるから、たまに珍しい機体も止まっていたりするぞ」


 ここは亜細亜の真ん中に近い、中国が占領されている今、亜細亜を横断するときはここを休憩地点とすることも多いのだろう。


「今はどんな機体がいるんですか?」


 興味本位で聞いてみると、司令官は少し考えた後こう答えた。


「一番レアなのは貴官らの『Ⅿ0―J』だが、そうだな……『F―4EJファントム』が一機来ているぞ」

「ふぁ、ファントム⁉」


 俺は驚きのあまり変な声が出てしまった。


 『F―4Eファントム』戦後間もないころ、世界中の空を飛び回った西側諸国の主力戦闘機で、アメリカの傑作機の内の一機だ。

 2020年には日本製のファントム『F―4EJ』が引退し、2028年には世界中のファントムが引退したが……。


「日本ではファントムをWSとして復活させていないはず……」

「まあ詳しくは、そのパイロットに聞いたらどうだ?」

「日本人なんですか?」

「ああそうだ、日本の海上自衛隊だそうだぞ?」


 もっと分からない、ファントムの管轄は空自だったはずだ、何故海自の人がファントムを乗っている? と言うかそもそも、何故ファントムに乗ってこんな所に?


 考えれば考えるほど分からなくなる。


「ははは、混乱するのも無理は無いさ」


 部屋の扉が開き、一人の男が中に入ってくる。


「どなたでしょうか?」

「俺は海上自衛隊、イージス艦『ふそう』艦長の、大堀楓真大佐だ」

「『ふそう』艦長……なのに『ファントム』に乗ってるんですか?」


 そう聞くと大堀さんは苦笑いで答える。


「えーとな、あの『ファントム』、実は……貰ったんだ、私物として」

「…………貰った?」


 え、軍用機って私物化できるの?


「『ファントム』が日本から引退してしばらくたった頃、アメリカで4,2億円の飛行可能な実物『ファントム』が売られたことがあったが……」


 そんなことあったんだ……。


「で、それを買ったんですか?」

「いいや違う、それはすぐにどっかの金持ちが落札しっちゃたんだけど……」


 随分言葉に詰まるな……。


「まあ見てもらった方が早いかな……ついてきなよ」


 そう言うのでハープン司令官に別れを告げてから部屋を出る。




 向かった先は航空倉庫だった。


「君は確か、WSの姿が見えるんだったよな?」


 大堀さんが倉庫に着くなりそう俺に言ってきた、俺は首を捻りながら答える。


「ええ、まあ、でもな――」

「では儂が見えるのか?」


 そう言って倉庫の奥から一人のよう……少女が出てきた。


「まさか!」

「儂が『F―4EJファントム』のウェポンススピリッツ、ファントムじゃ」


 日本はファントムのWSを作成したという話は聞いていないのだが……。


「この機体、実は極秘で作ってもらったんだよね」

「ごめんなさい話についていけないです」


 俺は目の前であくびをする少女を眺めながら言う。

 

 ファントムの姿は、桜花と同い年ぐらいの少女で、黄土色の髪を一つ縛りで背中まで伸ばしている。

 少し鋭い目つきで瞳の色は朱色、振袖の和装で、どことなく零と似た雰囲気を持っている。

 振袖の中心にはやはり日の丸が描かれており袴は薄めの蒼、襟は黒くなっている、おそらく袴が青いのは、今の迷彩が蒼塗装だからだろう、機体の塗装で服の色が変わるのは、零で確認済みだ。


「今から話すことは絶対に他言無用だからな」


 大堀さんは、そう言ってファントムの近くに腰を下ろす。


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