コムソモリスクナアムーレ軍事基地
現在、07時15分、俺たちは朝食をとり終わり、滑走路に出てきた。
「さっむ……」
俺は対Gスーツを着込み、滑走路の脇に腰を下ろしている、空は今管制塔だ。
フライトコースなどの確認のために管制塔に居るが、俺はロシア語が話せないので、外で待っている。
「終わったよ~」
空が管制塔から降りてきた。
「お、じゃあ行くか」
俺達は再び空へと上がる、コムソモリスクナアムーレまで、約50分ほどで着く。
「なあ空、管制塔で随分長い間話していたがなにしてたんだ?」
「ん~とね、昨日の夜ハバロフスクに敵のレシプロ偵察機の姿が見えたから、その辺飛ぶ時は警戒しとけよって言われてた、後は気象の話、今日の夜は雲が多くなりそうだから早めに帰って来いよって」
ハバロフスクはウラジオストックとコムソモリスクナアムーレの間に位置する町だ、特に大規模な基地はないが、一様迎撃用のレシプロ戦闘機が数機待機しているらしい。
まあ中華連邦との境目だしいつ何が来てもおかしくはないのだが……。
「WASって、軽空母以外で偵察機運用していたか?」
WASは、基本偵察機を使用しない。
大抵は衛星を使っての確認だが、艦隊戦の時、軽空母が居た場合のみ、レシプロ偵察機が飛行しているのを確認しているため、WASは軽空母のみ偵察機を搭載していると想定している。
「情報によると、機体から何度かフラッシュが見えたから、撮影してるんじゃないかって予想して、偵察機としたんだって、一様見たことがないからⅩ型偵察機って呼ぶらしい」
レシプロ、偵察写真……。
「単発なのか?」
「いや、暗くてよくわからなかったらしいけど、単発では無かったらしい、それに、やたら機体が大きくて機動性が良かったらしいよ」
随分不思議な機体だな……WSではないっぽいないな……。
「艦偵以外にも、偵察機を作り始めたのか? だが随分急だな」
「やっと偵察や情報収集の大切さがわかったんじゃない?」
さすがにそれはないと思うが……。
何か大規模な作戦の余興なのだろうか?
「まあいくら考えても解るはずないよな……」
どれだけ考えても敵の意図を完璧に理解できるようにはならない。
「さて、後どれくらいかなっと……」
俺は操縦席の左側にあるモニターで地図を映す。
「お、噂のハバロフスク上空だ……」
そう呟くと同時に、空が叫んだ。
「敵味方不明機左前方二機!」
その声を聞くと、俺は反射的に操縦桿を引き上昇する。
「機種確認のため近づく、空は周辺警戒!」
「了解!」
そのやり取りを終えると俺は機体を水平に戻し、機体に近づく、遠くからでも機影が解ったように、それなりに大きい機体が二機、単発のレシプロではない……。
「双発? いや違う、三発機?」
不明機は、機首に一つ、翼後部に二つエンジンが付き、機体規模にしては大きいプロペラが回っていた。
俺は不明機の上空を位置取り、機体を傾けながら様子を確認する。
「……これが、前見られた機体なのか?」
その機体二機は、俺の姿を確認すると翻し、反転した。
「どう、有馬?」
「帰って行ったな……まあ打電だけしておくか」
「りょーかい、コムソモリスクナアムーレにこのまま向かうねー」
そこから数分後、俺たちは無事こむ……めんどくさいからKSでいいか……。
KSの軍事基地に着陸した。
「てかこの基地でか!」
東では一番大きいとは聞いていたが……。
「コムソモリスクナアムーレ軍事基地、野球場のように扇形に広がる三本の幅広な滑走路、ホームベースに当たる場所に管制塔が立ち、管制塔から見て左側に航空倉庫、右側に車庫、そして管制塔の後ろには研究所とでっかい宿舎があるよ」
空がそう言って機体から降りてくる。
「よー久しぶりだなー」
そこに一両の戦車が向ってくる、いつぞやの『T―34―85』だ。
「ルカか、久しぶりだな」
俺はヘルメットを取りながらルカに挨拶をする、空もヘルメットと対Gスーツを脱ぎ、『Ⅿ0』に放り込んでいた。
「日本からお前らが来ると聞いてな、こうして愛車と出迎えの準備をしていたと言う訳だ」
そう車内から顔だけ出して言う。
「我が祖国へようこそ有馬、お帰り同志シューカ!」
そう言って『T―34』が上空に向かって発砲する。
「相変わらず歓迎するときに撃つ癖は治らないんだね、この基地は」
空がやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。
「まったく、撃つのは全員揃ってからにしろと何度も言っているだろ」
ルカの後ろから一両の『T―18―BIS』が出てくる、さらにその後ろには数量の『T―14』、現在のロシアの主力戦車と、一世代前の主力戦車だ。
『T―18』に乗る一人の兵が顔をだして言う。
「我々は貴官らの来迎を歓迎する」
その声とともに空砲が発射される。
「全員降車! 有馬司令官殿に敬礼!」
空砲の音が消える、そうすると一斉に車輌から人が出てきたと思ったら、俺に向かって綺麗な敬礼をして見せた。