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ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
大規模海戦演習編
127/340

元帥会議


現在、17時45分、横須賀連合艦隊基地、本部作戦室。


「彭城元帥、演習お疲れさまでした」


 私の正面に座る、大澄総理大臣が言う。


「いえ、頑張ってくれたのは私ではなく、有馬君とWSの子たちですから」


 これは、謙遜などではなく本心だ。


「それで、今回至急集まってもらったのは、その有馬君についてだ」


 総理の顔は、少し厳しいものになる。


「はい、どのように処罰をいたすおつもりですか?」


 私がそう問うと、隣にいた、海自の代表である酒井直人が発言する。


「その子への処罰は、正直必要ないのでは? さすがにあの記者の発言は、度が過ぎています」


 その言葉に、大臣もうなずく。


「うむ、私も、正直処分したくは無いのだが、正当な理由があるから、処分とまではいかなくとも、罰則を与えないと、示しが付かなくてな……」


 それを受けて、陸自の代表である、今村健介が提案した。


「なら、謹慎だけでいいのでは? 簡単ですし、罰則らしいでしょ」


 それに首を振ったのは、空自の浜松壮介だ。


「だめです、彼は近々、うちから『Ⅿ0―J』を借りて、ロシアに行く予定なんです、謹慎にしてしまったら、向こうにも迷惑がかかります」


 どうしようかと皆で首を捻っている中、防衛大臣の小堀が発言した。


「なら、謹慎にしているように見せかけて、ロシアに飛ばし、謹慎が終る頃に、日本に帰ってきてもらえばいいのでは? 期間限定島流しのような感じで」


 期間限定島流しか……まあ特に異論はないが。


「ロシアの情報が、日本に伝わってニュースで報道されたらどうする?」


 酒井がそう尋ねると、小堀は肩をすくめていう。


「そもそも、有馬君がロシアに渡ること自体、あっちは上層部しか知らないさ」


 なら大丈夫だろう、ロシアの情報統制は厳しいからな。


「よし、ならそうしよう、本来は日帰りで行かせるつもりだったが、二泊三日で行ってもらうとしようか」


 そう総理が言い、皆頷いた。

 誰も、特に異論はないようだ。


「ではそう伝えておいてくれ、空君」


 私がそう言って、天井を見上げると、上でごそごそ音が鳴った後、天井のパネルが開いて、空君が降りてきた。


「あちゃー、バレてましたか」


 空君は、舌を出して、てへっとしているが、他の代表は大きなため息だ。


「警備は何をやっとるんだ……」

「違う、この子が異常すぎるだけだ」


 そんな会話を、陸と空の代表がしている中、私は、空君に正式に伝令を頼んだ。


「空君、有馬君とともに二泊三日、ロシアに飛んで、これを渡してきてくれ、同時に、軍も見学させてもらってきなさい、時間が余ったら、好きにしていいぞ」

「了解! いつ飛べばいいですか?」


 私は、手帳を取り出して、予定を確認する。


「五日の午前六時半に飛んでもらうから……午前六時頃には、横須賀の航空基地に来てくれ」

「了解です、では」


 そう言って、空君は再び天井に消えた。


「あの子が裏切ったら、この国は亡ぶな」


 総理が半笑いで、冗談とも言い切れないことを言った。


「大丈夫ですよ、あの子は有馬君のことが大好きすぎるからで合って、有馬君が日本を攻撃しない限り、あの子も裏切ることはしないと思いますよ」


 そう言って、私は会議室を出ると、そこには、明野沙織提督が資料を片手に立っていた。


「お疲れ様です元帥、こちらが報告書です」


 私も敬礼を返し、資料を受け取る。


「うむ、ご苦労……ん?」


 私は、一枚の写真と報告書に、目が留まる。


「首のない死体?」


 その写真は、首のない死体が大量に転がっている街並みを映していた、付属する文には。


『最近、戦場の片付けに来ると、人間の兵士たちの頭が、大きな刃物で切り取られていることが多くなってきた、その後の首は見つかっておらず、詳細を確認中』


「欧州戦線や、ロシアの戦場など、陸戦が多発しているところで見られるようです」


 WASも、何を考えているのか分からんな……。


「まあこの件は後だ……あの件は、有馬君に話したのかい?」


 そう聞くと、明野提督は薄く微笑んで首を振る。


「もし聞かせたら、元帥殿に詰め寄ってくるかもしれませんよ?」


 私は、頭を掻きながら、その考えに同意する。


「そうだな……本当にすまない、君にこんな任務を押し付けて」


 そう言うと、明野提督は首を振る。


「いえ、父と約束したので……これが、私の使命なんです、たとえ命に代えても、南の海は、私が守らないといけないんです」


 その目には、決意と覚悟、その両方を感じさせる、強い光が宿っていた。


「そうか……なら、精一杯頑張ってくれ」


 そう私は、明野提督に告げ、その場を立ち去ろうとするが。


「あ、そう言えば、有馬君なら、今頃軍の寮にある、取調室に居るから、会いたければ行くと良い、別れの挨拶もまだだっただろう」


 そう、最後に付け足してから、今度こそ、その場を立ち去った。





「……取調室、ですか」


 私は、元帥を見送った後、有馬さんに別れを告げに行くため、軍の兵士たちが、寝泊まりしている寮に向かったのだが、どうも、目的の部屋が見当たらない。

 そんな時目の前から、背の小さな一人の兵が歩いてきたので、尋ねてみることにした。


「あの、取調室ってどこだかわかりますか?」


 その兵は、こちらに視線を向け、胸元の階級章を確認して驚いたように敬礼する。


「わわわ! 中将殿⁉」


 つやつやとした黒い髪、まだ少年の面影を見せる顔つきから、学生兵だとわかるが……。


「えっと、何歳ですか?」


 どうも、背が小さいように思い、そう尋ねる。


「申し遅れました! 私は、大和第348部隊所属、衛生兵兼食事課の、浅井圭十六歳、少尉であります!」

「大和第348部隊……」


 どこかで聞いた気が……。


「えっと、一様分隊長は有馬さんです」


 ああ、なるほど、有馬さんの部隊の人だったんですね。


「私は明野沙織中将、パプア国際軍港で、提督をしている者です」


 私も、自己紹介を終え、本題に入る。


「それで、有馬さんのいる取調室はどこでしょう?」


 そう聞くと、少尉は、指差しで教えてくれた。


「ここの突き当りを、右に曲がって真っすぐ行った突き当りです、私も、先ほどまで有馬さんとお話していたので」


 そう最後に付け足した。


「ありがとうございます……ところで少尉」


 私は、もう一つ気になっていることを聞いた。


「はい?」

「貴方、何故その年で、少尉になれたのでしょうか?」


 有馬さんも対外だが、話に聞く、第348部隊は、皆士官クラスの階級で、何かしらの勲章を持っているらしい。

 雨衣さんが中尉で、射撃き章と、重要物を護衛した時にもらえる七星勲章。

作戦中に亡くなられた、坪井さんが、栄誉昇級で大尉、整備を誰よりも早く終わらせられる人に与えられる、ボルト勲章。

 清原さんが、整備長の大尉で、航空き章と、同じくボルト勲章。

 だが、この子は勲章やき章を、話を聞く限りでは持っていない、なのに小尉なのは、少し気になる。


 WSの件で階級を上げられたのは知っているが、それでも16歳が元一等兵とはどうゆう事なのだろうか?


「えっと……長野事件って知っていますよね?」


 おずおずと、そう聞いてくるので、私は首を捻りながら答える。


「ええ、まあ、知っていますが?」


 丁度その頃、私はパプア国際軍港に配属したので、報告を聞いたくらいだ。


「そこで、いろいろありましてね……まあ詳細は、有馬さんから聞いてください、僕はこの後、食堂に戻らなくてはいけないので」


 そう言って、一礼してから、去ってしまった。


「……まあ、聞けばわかりますか……」


 そう思って、私は有馬さんのいる取調室に向かった。


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