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ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
大規模海戦演習編
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拳動応答

 そこから四十分ほど、記者の質問に答えていき、後二人と言うところまできた。


「それでは次の方どうぞ」


 そろそろ疲れてきた……。


「女性を戦場に行かせるのはいかがなものでしょうか?」


 はい来ためんどくさいやつ、勘弁してくれ。

 兵役については俺専門外だし……。


「女性と言うと、WSの大和のことですか? それとも、自衛隊、及び軍の女性兵士のことですか?」


 多分、女性兵士だけって言うのだろうが、一様聞いてみた。


「女性兵士のことに決まっています」


 そう、小太りの40代ぐらいの女性記者が言う。

 どうすっかな、この質問。


「私自身は、特に問題があるとは? 思っていません、それから、自分の管轄は兵器であり兵役にかんしては専門外なので……」


 俺がそう言うと、その記者は渋い顔をしながら、突っかかってきた。


「あのね君、若いくせに、調子に乗るんじゃないわよ⁉ 世の中はね、女性を大切に扱うのが普通なの、それなのにどうして、女性を死ぬかもしれない戦場に送り出して、平気な顔してるの⁉ そもそも、なんでこんな子供が長官なんて役職やってるのよ、あなたがここにいること自体、場違いなのよ!」


 聞いてねえなこいつ。

 俺は何も言わずに、その記者の言葉が終るのを待つ。


「それにね、なんでWSとか言う、兵器たちまで女性の姿で戦わせてるのよ! それは女性を戦争の道具として見る侮辱行為じゃないの⁉」

「WSが、全員女性な訳ではないんですけど」

「黙りなさい!」


 あー、マジでこいつめんどくせえな。


「そして、なんで子供まで戦場に行かせてるの⁉ こんなの徴兵令や学徒出陣と同じじゃない、何が人命重視よ!子供を指揮官にしたせいで、最初の戦いで一体何千人死んだのよ! 子供はおとなしく、戦争の悲惨な歴史を学んで、どれだけ日本が悪いことをしてきたのか知りなさい!」


 ……は?


「特攻隊、植民地での拷問、南京虐殺、捕虜への待遇、中国侵略、上げ出したらきりがないほど、日本は戦争で悪いことをしてきたの知ってる? 知らないわよね⁉ 

知っていたら、戦争に加担しようなんて思わないものね⁉」


 息を切らしながら、その記者はこちらを睨む。


「そしてあんたもよ、WSとか言う人間もどき!」


 急に話は、大和へ向けられた。

 俺は、大和に対して、何を言われるか分かったもんじゃないから、大和を帰そうとも思ったが、それを、大和自身が拒んだ。


「日本の歴史、最大の汚点である戦争の道具が、人間と同じ面して、ここに立ってんじゃないわよ! あんたは今すぐ、ここで謝罪してもおかしくないぐらいの存在なのよ⁉ 戦争してごめんなさい、人を大量に殺してごめんなさいって! 謝りなさいよ!」


 大和は、その言葉を受け止め、黙ったまま聞いていたが目元には薄く涙が浮かんでいた。

 周りの記者や観客は、この記者を止める気は無いらしい、軍側のスタッフが、無理に抑えつけると、暴動行為とみなされ、軍の組織自体が危なくなるので、動くことはできない。


「どうしたのよ、何も言わないで⁉ せっかく話せる口と、土下座できる体を貰ったんだからしなさいよ! 早く! するのが、あんたたちがもう一度この世に生まれた意味でしょ⁉ だったらその義務を果たしなさいよ!」


 義務、意味の言葉の所で、大和は一層顔を伏せた、プルプルと肩を震わせながら、涙を堪えている、あと少し耐えてくれ大和、あと少しで、質問の時間が終るから……。

 そうすれば、こんな奴の言葉を聞く必要は無くなるから。


「貴方も、するように言いなさいよ! 貴方WSの責任者なんでしょ? だったらあなたも一緒に土下座すべきなんじゃないの? 国民を大勢殺してしまって、ごめんなさいって」


 やっと俺に、矛先が向いたか。


「ええ、わかりました謝罪しましょう、ですがそしたら、大和達WSのことも、許してやってくれませんか?」


 俺がそう言って膝を付くと、大和が声を上げた。


「ダメ! 勇儀は何も悪くない、悪いのは私達兵器なんだから、司令官である勇儀が頭を下げちゃダメ……そしたら、勇儀まで、私たちの行いを、間違ってるって言ってるみたいになっちゃう……そんなの、嫌」


 そう言うと、大和は記者の前に立ち、両膝を付いた。


「100年前……戦争をしていまい、各地でひどい行いをしてしまい、国民を……無駄に死なせてしまい……ごめん……なさ……い……」

「ふん、謝るのが遅いのよ、のろまが、血で汚れた汚い顔は、そうやって地面につけてる方がお似合いよ」


 その言葉を聞いた瞬間、警備員が止めに入る前に俺は――――

                ――――――その記者の顔面を殴っていた。





「あーあやっちまったな」


 私はそう小さく呟いた。

 この覇気は、激怒モードの有馬君だ、空君でも呼んでこないと、力では抑えられない、なんせ、殺気が怖すぎて、大人でも泣き出すレベルだからねぇ。


「い、今わたしの顔を殴ったわね⁉ 警備員! 今すぐこの人を、警察に連れて行って!」


 そう殴られた記者が喚きたてるが、二人の、警察からのスタッフである警備員は動かない、というより、有馬君に睨まれて、足をすくませているのだ。

 日頃殺し合いを仕事としている軍人の睨みは、そこんじょそこらの悪党なんかよりも恐ろしく感じるものだろう……有馬君は別格だが。


「何してるのよ! 他の人も! 早く通報して!」


 まだ喚く記者の胸倉を、有馬君は掴み持ち上げ、静かに言い放った。


「言いたいことは、それだけですか?」

「な、なによ! 女性の顔を殴っといて、謝罪の言葉もない訳? いいわよ、後で通報して捕まえてもらうから」


 なんでそんな、煽るようなこと言うんですかあなたは……本当に死にたいんですか?


「黙れババア、俺は、大抵のことは見過ごしますし、作戦を悪く言うのは咎めません、私だって未熟な存在です、最初の作戦では、確かに大勢の死者を出しました」


 有馬君は、瞳孔の開き切った目でそう話す。


「ですが、過去の日本の戦争や、人、はたまた兵器をバカにしたり、貶したりするようであれば、容赦はしません」


 記者や周りの人は、怯え切っているのか、一切動かず有馬君をただ見つめている。


「私の戦友で在り、部下で在り、相棒で在るWSたちを侮辱するようなら……」


 これ以上はまずい。


「有馬君、そこまでにしなさい」

「副艦長は黙っていてください」

「君の部下が見ている目の前で、そんな醜態をさらすなと言っているんだ」


 私がそう最後に強く付け足すと、有馬君は、静かに後ろを振り向き、怯えて立つ、大和の姿を見ると我に返ったのか、記者を掴んでいた手を放した。


「警備員、この人にはご退席していてだこう」


 そう私が言うと、二人の警備員はおどおどしながら、半分気絶している記者を、人混みを分けて連れて行った。


「さて、時間も押してしまったので……」


 と、私が締めくくろうとした時、有馬君がそれを遮った。





「副艦長、最後まで話してもいいですか?」


 俺は、自身の手を拭きながら聞いてみた、まだ問いに、きちんと答えていない。


「まあいいだろ、じゃあ続けてくれ」


 俺は、一礼してまた話し始めた。


「先ほどの暴行、失礼いたしました、後程きちんとした処罰は受けるつもりです」


 そう入れた後、俺は話始めた。


「私は正直、子供や女性が兵士として戦場に出ることを、お勧めしたくはありません、世間一般的な理由からです」


 俺だって、女性や子供が、戦場で死ぬのを見たくはない、でも……。


「しかし、前線で銃を構える彼女たちは、望んで戦場に来ました、志願すれば、後方に回れて死ぬことなく、日本の本土を離れることなく、兵士としての給料がもらえるのにです」


 軍事病院や整備士は、優先的に女性や子供が配属されるようにしてあるのだ。


「でも彼女たちは、国のために、自身の身を削る決意をしてくれました、そんな彼女たちの決意を、無下にするのは嫌です、女性だからと言って、身をもって国を守ろうとする精神を挫くのは嫌です」


 これが、軍や自衛隊の、女性たちへの考えだ、そしてもう一つ、俺は、WSたちへの考えも用意してある。


「大和、皆を呼んできてくれるか?」

「……分かった」


 そのやり取りをすると、大和は姿を消した。


「WSは、過去の兵士たちの記憶や思いから構成された存在です、なので、兵たちの大切な人、家族や恋人など、女性の形をしたWSも多いです」


 そう言うと同時に、大和が再び実体化し、あたりにも淡い光が輝きはじめ、修復、改修中の三笠、扶桑、長門を除いて、全てのWSが実体化して現れる。


「この子たちが現在復活し、なおかつ日本にいるWSたちの一部です」


 記者やカメラマンはその様子を、これでもかと言わんばかりに見つめている。


「WSたちは、国を守るために戦うことを誇りとし、使命としています、そこに性別なんて関係ないものだと、私は考えています」


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