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ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
大規模海戦演習編
111/340

生放送

10月02日、13時25分、大島沖。


「今日と明日の演習は、地上波で生放送するみたいですね」


 そう零が、私の参謀席に座って言う。


「そうだね、今日明日は、学校も臨時休校になったらしいし、私の、日本の戦艦の強さを示す、いいチャンスだね」


 私は、艦長席に座って返す。


「どう戦うつもりですか、大和さん? 火力、装甲、速力、対空火力、全てでこっちが勝っています、普通にいけば、負ける通りはありません」


 しかし、相手はあのアリゾナとコルト長官だ。


「一体どんな手を打ってくるのか分からない以上、下手な真似はしない、正面からぶつかって、同航戦でアリゾナを倒す」


 そう言って、私は立ち上がる。


「有馬は、実況で呼ばれたらしいし、しっかり勝っていかないとね」


 今日の朝知ったが、どうやら有馬は、テレビ局に解説役として呼ばれているらしい、テレビ局は、普通の歴史学者に頼みたかったらしいが、どうやら政府が、有馬を推したようだ。


「有馬さんは、誰にでも好かれるような性格をしていますからね、それに総理的には、軍のイメージアップを図りたいという、細やかな思惑があるのでしょう」


 イメージアップ?


「軍は、子供でも活躍でき、決して悪い組織ではないということを、少しでも、遠回りにでも日本に伝えて、軍の兵力を少しでも増やしたいのだと、思いますよ」


 そう零が言って、席を立つ。


「あーでも、有馬がそんな気の利いたことが言えるかな?」


 私は頭を捻る。

 有馬は、人の心を気遣えるいい人だし、察しも悪い方ではない、でも、嘘は嫌いだ、聞かれたことは美化せずに、本当のことを言うと思う。


「まあ、有馬さんですからねぇ、そこのところは、上手くやるんじゃないですか?」


 ……それもそうか。


「よし、そろそろ時間だね」


 私は艦橋に備え付けられている時計を見る。


 現在、午後13時30分、演習開始の時間だ。


「さて、行くよ!」


 私は、勢いよく顔を叩き、気合を入れる。


「両弦、前進半速!」


 そう言って、私はゆっくりと、前へ進み始めた。




 現在、13時00分、テレビ局内のスタジオ。



「それでは、本日最後の話題となる軍事演習についてなのですが、私達では知識不足と言うことで、今回特別に、演習の様子を解説していただくために、お呼びさせていただいた、有馬勇儀中佐さんです、今日は、よろしくお願いしますね」


 そうアナウンサーが言うと、カメラがこちらを向く。


 うわ……めっちゃ緊張する……。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 俺は、そう簡単な挨拶をして頭を下げる。

 その挨拶が終わると、陽気な一人のゲストが、俺に話しかけてきた。


「ねね、今何歳なの? 若そうに見えるからさ、めっちゃ気になるんですけど!」

「ぽやちゃん、急に話題ふったら、びっくりしちゃうでしょ、テレビなんて出たことないだろうから、ごめんね、驚かせちゃって」


 俺に最初に話を振った人は、最近よくテレビで見ていたお笑いタレント、ピーナツちゃんだ、いつでも明るい話し方と、独創的なネタが話題になっている。

 逆に、そのピーナツちゃんを止めているこの男の人は、ハスミさんだ、本名は川城蓮見、お笑いタレントで在りこの番組のコメンテーター、レギュラーを務めている。


「そうですね、ではまず、有馬さんのプロフィールから見ていきましょう」


 そう言って、アナウンサーが手元の資料をめくり、話始めようとするが、それを、一人の芸人が遮る。


「そんなボード使わなくたって、本人から直接聞いた方が早いんだから! だろ? ピーナツちゃん?」


 この人は、アップアップという、レジェンド芸人コンビの一人である、橋本博司、様々な角度からの正直な突っ込みで、笑いを交えながら、ニュースを考えるレギュラーの一人だ。


「そうそう! だからさ! 君何歳?」


 俺は「ははは」と苦笑いしながら答える。


「今年で、18歳になりました」


 そう答えると、ぽやちゃんはオーバーな反応を取る。


「えー! その年でこんな偉いの! 凄すぎて写真撮りたくなっちゃた、いぇーい!」

「何でスタジオにスマホ持ち込んでるの⁉」


 ピーナツちゃんの行動に、ハスミさんがツッコミを入れる。

 この人を番組に入れると、何が起こるかわからないから他の参加者も大変なのだろう、まあ、それが面白いから、出しているのだろうが……。


「でも本当にすごいよね、18歳で中佐の……何とか長官ってのに就いてるんでしょ?」


 ハスミさんが、そう優しい目で、新たな質問を俺に投げかける。


「はい、軍の戦線長官……いうなれば、現場の司令官を務めています」


 そう言うと、アナウンサーは、俺のプロフィールが書いてあったボードをひっくり返す。


 そこには、「有馬指揮官の指揮した戦場三選!」と書かれていて、いくつか、文を隠す紙が張り付けられていた。


「有馬さんは、今まで、三つの大きな戦いで、指揮を執ったそうですね?」


 アナウンサーは、ボードの紙をめくる。


「はい、ええと、民間の呼び方で言うと……ハワイ沖海戦、カウアイ島の戦い、インド救出作戦ですね」


 俺は、軍の内部で言われる、ハワイ沖輸送護衛海戦、ハワイ奪還作戦、アジア電撃戦と言いそうになったが踏みとどまり、民間に伝わっている名前で言った。


「ありがとうございます、では、それぞれの戦いを振り返ってみましょう」


 そう言って、アナウンサーは指し棒を取り出した。


「これまで三つとも、専門家の方にお越しいただいて、解説を行いましたが、それよりもさらに詳しい現場の方がいるのですから、もっと深いところまで、お伝えできるかと思います、よろしいですか?」


 アナウンサーは俺に目線を向ける。


「はい、お答えできる範囲なら」


 俺がそう言うと、アナウンサーは、慣れた手つきで、紙をめくり始めた。


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