表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
大規模海戦演習編
101/340

大和の奇策


そう言って私は、武蔵に通信を入れる。


「武蔵、一式徹甲弾装填!右砲戦最大俯角!」

「最大俯角ですか?」


 武蔵は疑問形で返す。


 それもそうだ、だって一式弾は、対艦の弾で、潜水艦には効果が無い、けど、使い方を変えれば……。


「……分かりました、一式弾装填!」


 少しの沈黙の後、武蔵はそう返答してくれた。


「ありがとう武蔵……味方航空機が爆弾を投下したところに、私の合図で、一斉射するからね」


 私は言い終わった後、再び空母へと無線を繋げる。


「瑞鶴、航空機は?」

「私、エンタープライズ、加賀、蒼龍、飛龍から、合計13機が爆装で潜水艦を探して……見つけた!ここより右三十二度方向、四隻!」


 いける!


「武蔵、主砲方向、仰角調整!一式弾装填!」

「……調整完了!装填完了!」


 武蔵と私の砲口が、水面下にいる潜水艦へと向く。

 着水の水柱が立つタイミングで、13機の航空機から爆弾が切り離され、水の中へと消えていく。


「主砲、斉射!」


 私の一声で、私と武蔵の主砲、合計六基18門が、水面に向かって火を噴く。


「お願い、当たって!」


 私の祈りに共鳴するように、一式弾が水面に勢いよく侵入していく。

 一式弾は、徹甲弾のため、多少の衝撃じゃ爆発しない、二十メートルの砲身内で、初速780m毎秒まで加速された砲弾が、水中の爆弾めがけて侵入していく。

 

 私がぎゅっと自身の手を合わせるのと、艦橋にまで響き渡る爆発音が鳴るのは同時だった。 


「潜水艦二隻の撃沈を確認!」


 瑞鶴から報告が上がる。


「よし!」


 私は自身の考えた策が効果を出してくれたことに満足し、ガッツポーズをした。


「すごい、まさかこんな作戦が成功するとは」


 エンタープライズは、航空機を収容しつつ呟く。


「ね、言ったでしょ?やってみないとわからないって」


 800キロ爆弾や250キロ爆弾を投下、そこめがけて、一式弾を発射。

 運が良ければ、砲弾が爆弾に命中し、爆弾の信管に傷をつけ、起動させてくれる。


 そうすれば、魚雷発射の為に、深度を上げている敵潜水艦付近で爆発、水中爆弾ではないが、そんな近くで800キロ爆弾が爆発すれば、潜水艦の装甲を砕くことができる、はず……と考えて、実行したのだった。


 本当に運がよかったとしか言いようがない。


「よくやった!大和!」


 そんな声が、この海峡に響き渡った。


「「「「「「「「司令官⁉」」」」」」」」


 私達は、一斉にその無線に反応する、今有馬は、横須賀の基地で指示を出していたはず、なのにどうしてこんなところに……。


「あ……そうゆう事か……」


 私は、近づいてくる『AH―2バッファロー』の姿を見て、納得した。




 俺は潜水艦のことを聞いた瞬間、海自の空母からヘリか航空機を出すよう指示し

たが、着艦のことがあるため、そんな余裕はないと言われてしまった。

 そのため、基地に居るヘリの部隊を出動させた、そして、横須賀基地に本拠地を置くヘリ大隊と言えば……。


「俺ら第四ヘリ大隊だった訳か、なるほど、納得だ」


 そう言いながら、張本さんはヘリを『大和』に近づける。

 俺を大和に乗せるためだ。


 日本には、航空戦隊とは別に、ヘリ大隊と呼ばれるスコードロンが七つ存在する。

 その内の一つが、張本さん率いる、釣竿を持った二足歩行するトカゲが部隊マークの第四ヘリ大隊と言うわけだ。 


「さて、俺は帰るが、後は大丈夫か?」


 俺は、グットサインを出して大丈夫だということを伝えた、それを見て張本さんは、ふっと薄い笑いを浮かべ、機体を傾ける。

 俺は、それに合わせて『大和』の甲板へと飛び移る。


「さて、艦橋へ行くか」


 まだ俺には、大和の姿も声も聞こえない、だが確かに、この艦は動いている、それは大和が、ここにいる証だ。


「さて、やるか」

 

 俺は帽子を被り直し、無線機のスイッチを入れようとするが、もうすでに入っていることに気付いた。


「……そこにいるんだな、大和」


 俺がそう零すと、微かに背中に温もりを感じた。


「あの奇策は俺でも思いつかなかったよ大和、俺の艦隊を守ってくれてありがとう」


 そう言って俺は、引き連れてきた頼もしい仲間に通信を入れる。

 

 できるだけ小さな声で。


「『そうりゅう』『はくりゅう』『こくりゅう』攻撃指示、各個自由攻撃、一体どこの艦隊に喧嘩を売ったのか教えてやれ」


「「「了解」」」


 通信からも、静かな声で返答が来る。

 艦長が呼んだ支援艦隊と言うのは、哨戒に出ていた潜水艦部隊のことだ。


「第四ヘリ大隊各員、周辺の海域に展開、逃げる敵潜や新たにやって来る奴らの撃滅を頼む」


「「「「了解」」」」


 第四ヘリ大隊の『AH―2バッファロー』二機、『SH―60Jシーホーク』二機もスタンバイしてもらう。


「空母組、聞こえるか?聞こえていたら汽笛を鳴らしてくれ」


 俺がそう伝えると、六隻の空母はそれぞれの汽笛を鳴らす、良かった、聞こえているみたいだな。


「航空隊を、潜水艦の発見と上空の直掩に着かせろ、敵機と潜水艦を近づけるな」


 そう言って、俺は艦橋から潜水艦の位置を探る、水影は一切見えない、だが、


「うっわ……」


一瞬の内に、俺の目の前には映画のような光景が起こる。


 盛大な爆発音を鳴らしながら、大きな水柱が四本上がったと思えば、正面でさらに一本、後方で二本の水柱が立ち上る。

 少し離れた位置で、ヘリたちに沈められたのか、さらに二本立ち上った。


 大和達が倒した潜水艦も合わせて、合計十一隻がこの艦隊を包囲していたのだ、その半数を、たった一度の攻撃で沈めた『そうりゅう』型潜水艦とは、恐ろしいものだ……。


これでも、世界からみたら旧式兵器扱い何だけどなぁ。


「こちら『そうりゅう』、音源反応は全て沈めた、基地までの護衛も任せておけ」

「こちら張本、上空、周辺も問題無しだ」


 そう通信が入ったのと同時に、水面が揺らぎ、三つの黒い頭を突き出した。


「さて……俺は出番終了かな?」


 そう呟き、防空指揮所に上がる、被雷したのは『武蔵』『大和』『赤城』『エンタープライズ』。

 『大和』と『武蔵』の鋼鉄板がはがれ、『赤城』が浸水、傾斜、『エンタープライズ』は、艦首付近に当たったが、あたりどころがよく、大した損害にならなかった。


「でもよくもまあ、こんな大艦隊を、ここに展開できたもんだ」


 どうやってここに入り込んできたのかも謎だ、何より、大和達がここを通ることを知っていたように、待ち構えていた。


 何故ここを通ると知った?確かに、このルートは予定通りだが、それを決めたのは、大和で在り、WS以外だと、長官たちしか知らないはず……。


「まあ、気にしてもしょうがないか……」


 その辺は、俺が考えることじゃない。




 現在、14時00分、大島上空。




 今は、『赤城』『武蔵』『エンタープライズ』がドッグを陣取っている、『大和』は艦体に傷がなく、新たな水雷防御用の鉄板を着けるだけで済むので、ドックではなく工廠に居る。

 ちなみにだが、その隣には『三笠』がいる、少し前から大規模改修中なのだ。


 『三笠』は、いくらWSとは言え、第一次世界大戦前の艦、現代の艦や他のWSの戦艦とまともに戦える体ではない。

 そこで、現代の技術を使って、特殊な艦に改修中だ。


「で、次の演習が艦隊決戦か……」


 俺は現在、再び『ブラックホーク』に乗って、大島上空を飛んでいる、次の演習は艦隊戦の演習で、戦うのは長門とアリゾナのペア、陸奥と扶桑のペアだ。


「砲数、火力って面では同等か……」


 扶桑の砲は36、5センチ連装砲六基十二門、対してアリゾナは36、5センチ三連装砲四基十二門、砲塔の数は違うにしても砲門の数は同じだ。


「どうなるかな」


 そう呟きながら、俺は沖に出た四隻を、目で追うことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ