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Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
吹き飛ばした糞野郎の後を追う。
傷を負わせる事は出来るが、直ぐさま回復するのは不利だな。
だが、腑に落ちない。
あの赤い光はそれだけしか出来ないのか?
守るだけ?再生させるだけ?武器に形を成すだけ?
感情を殆ど殺している。
あれはフォーリが望んだ結果か?
イマイチあの赤い光の特性とか、良く解らないな。
だが、勝てない相手ではない。
最悪『音帝』で切り落とせば終わる。
フォーリの反応速度を超えないらしいからな。
「ここら辺か?・・・気配が無い?」
立ち止まり、辺りを見渡す。
だが、気配がまるっきり無い。
「姑息な事しやがるじゃねぇーか・・・」
結界とか出来ないしなぁ~。
どうしようか。
『仙牙龍刀』を構える。
右・左・前・後・上・下。
何処から来る?
呼吸を整える。
「肺」
声が響く。
「なっ!?――――グハッゲホッ!!オェッ!!!!」
血・・・?な・・・ん、で?
息が・・・出来ない?
まさか、肺をやられた!?
どうやって?外傷は無い。
・・・まさか内側から臓器攻撃しやがったのか!?
やべぇー・・・苦しい。
どうやって内側から?・・・赤い光り以外無いだろうな。
んじゃ、どうやって体内に?
原理は解らないが、あの赤い光が原因って事は解っている。
それじゃ、俺の体内に入って臓器ズタボロにしようってか。
えげつないな。
それなら・・・・。
歯を食いしばり、集中して魔力を放出する。
「ぐあアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!」
ヤバイ・・・予想以上に辛い。
魔力放出して体内のあの赤い光も出そうと思ったが、キツ過ぎる。
肺がズタボロだからな・・・時間の問題か。
てか、良く生きているな俺。
息・・・出来ねぇー。
コレはマジヤバイ。
目の前が霞む・・・此所で終わり?
こんなやられ方で?笑えないぞそれ。
クソ・・・考えるの面倒になってきやがった。
あぁ~・・・クソが、魔力放出した後考えてなかった・・・。
後先考えないで馬鹿やり過ぎたか?
・・・走馬燈が流れないからまだ死なねぇーのか?
いや、見なくとも死ぬ時は死ぬか。
「『Light of heaven:The end to the start:The meaning to fight against power to stand up―――『闘志への恩情』』」
声?・・・誰だ?
聞き覚えがある。
・・・・!?
何だこれ?息が・・・出来る?
体を触れながら、膝を着き立ち上がる。
そして、後ろを振り返る。
そこには、汗を流し息を切らしながら杖を此方に向けているキュキュシュが立っていた。
「なっ!お、お前何で此所に居る!?」
「だ、だって・・・・叫び声が・・・聞こえたから・・・」
息を切らしながらキュキュシュは説明する。
「だからって・・・早く逃げろ!!何の為に俺が囮やっていると思ってるんだ!?」
コイツが捕まったら全部パーだろうが。
「私達の為ですよね?だからこそ!私達の為にサヤさんが傷付くのは間違っている!!」
「そんな事は後で聞いてやる!今は退け!!!!」
「後で?そんなの信用出来ません!!」
キュキュシュは何時にも無く食い下がる。
「はぁ?お前俺が負けると思ってるのか!?」
「はい!」
良い返事ですね・・・。
「ふざけんな!!俺が負ける訳ねぇーだろうがよ!!!」
「でも死にかけていたじゃないですか!?助けたの私ですよ!?」
「ぐっ・・・・」
この小娘が・・・。面倒だ。あぁ!!!面倒だ!!!
クソっ!どうする?あの馬鹿抱えて一旦逃げるか?
それもありか・・・だが、あの戦闘狂から逃げるのも困難。
守れるか?
・・・いや、愚問だ。
守れるかどうかじゃねぇーよ・・・守るんだよ!!!!
「隠れていろキュキュシュ!!」
キュキュシュに叫び、直ぐさま『仙牙龍刀』を構える。
何処かに隠れている。
だが、そこが何処か解らない。
なら・・・関係無しにぶっ飛ばす!!
「『仙牙五刀――真――龍撃地層』!!!!!!!!!」
コンクリの地面に『仙牙龍刀』突き刺す。
その瞬間、俺の周りに地中から斬撃が噴き出す。
炙り出してやるよ・・・。
地面から噴き出す様に飛び出る斬撃はランダムに飛び出す。
射程内距離は10メートルと短めだが、お生憎とこの地下水路なら余裕でカバー出来る。
ドゴォォォォオオオオオォォォォォォンッッッッッッ!!!!!!!!!!!
ドゴォォォンッッッッ!!!!
バゴォォォォォォンッッッッ!!!
ドドドドドドドドドドッッッッ――――。
柱が崩れ、天井から岩が落ち、グラグラと揺れる。
崩壊寸前と言える地下水路。
だが、退く訳にはいかねぇーだろうが。
さぁ、出てこいや。
――――!?
「後ろ!!!!!」
俺が気付いたのと同時にキュキュシュの叫び声が響く。
『仙牙龍刀』を振りながら後ろを振り向く。
「不意打ちとは随分じゃねぇーか!!んぁ!?」
ギィィィィィィィィィィィィィンッッッッッ!!!!!!!!!!
赤い光りで形成された槍と、『仙牙龍刀』の刃がぶつかり不快音を響かせる。
「キリングマシーンにいつの間に成り下がった!!その力で全て潰す気か!!」
叫ぶ。
「カロはどうした!!!アイツを本当に殺したのか!?」
ぶつかる。
「どうしてお前は平然としている!?お前に何があった!?」
尋ねる。
「何で何も言わねぇー!?答えられないのか!?・・・本当にお前が殺ったのか!?」
『仙牙龍刀』を振るう。
だがそれも全て躱し捌かれる。
・・・何で、何でお前はそんな無表情で戦える?
仲間じゃ・・・ないのかよ?
どうしてお前は血の涙を流している?
それは、何かを悔いているのか?
どうして・・・お前は・・・、
「どうしてだァァァァァァァァァッッッ!!!!!!!!!」
いつの間にか、『仙牙龍刀』を下ろし、叫んでいた。
感情のコントロールが利かない。
仲間を・・・殺せる訳ねぇーだろうが・・・。
なのに、なのに・・・何でお前は・・・・、
「・・・俺に・・・矛先を向ける?」
何も感じないのか?何も思わないのか?
本当に・・・どうしたんだよ?
フォーリが槍を掲げる。
その表情は無。唯一感情を表しているのは流れる血の涙。
「サヤさんッッッッッ!!!!!!!!」
キュキュシュが叫ぶ。
だが、今の俺には・・・何が出来るってんだ?
殺せない。
無理だ・・・。
理由はどうあれ・・・無理なんだよ。
俺に、お前の命を背負って言うのかよ?
フォーリが俺の胸めがけて槍を振り下ろす。
クソが・・・本気じゃねぇーかよ。
ホント、糞野郎が。
「『Judgment』!!!!!!!!」
ドゴォォォォオオオオオォォォォォォンッッッッッッ!!!!!!!!!!!
キュキュシュの声が聞こえた瞬間、フォーリの持つ槍が爆風を轟かせながら一瞬で消えた。
フォーリは首だけ回し後ろを見る。
キュキュシュは杖を向け、肩で息をしながら凄い険相でフォーリを睨んでいる。
「殺らせません。サヤさんは絶対に殺らせません」
その声からは、怯えが無かった。
殺意とも取れる何かが、その言葉に篭められている。
キュキュシュは静かに一歩前に出る。
それを合図にした様に、フォーリは再度槍を形成し投擲する。
「『Boundary』!!!!!!!」
キュキュシュが叫んだ瞬間、投擲された槍は何かに打ち消された。
・・・・あれが、天空の属性。
「――――――――」
聞き取れない程小さな声。
その瞬間、
「!?」
キュキュシュの真下から槍が突き出る。
フォーリ!?
詠唱しただと?・・・感情を殺しても尚、殺す手段を執行するのか。
キュキュシュは槍を辛うじて躱し、地面を転げる。
「―――――――」
また、小さな声。
その時、フォーリの後ろから五本の槍が浮き出る。
まさか!?
『五体刺殺』か!?
「キュキュシュ逃げろォォォォォォォ!!!!!!!!」
俺が叫んだのと同時に、槍が放たれる。
キュキュシュは突然の事で防御が遅れる。
当たる!!!
そう思った瞬間、キュキュシュの後ろから炎が掠める。
そして、その炎がキュキュシュを囲む。
ブシュッッッッッッ!!!!!!!!
槍が突き刺さる音が響く。
その瞬間炎が消えて行く。
炎の中にはキュキュシュと、そのキュキュシュの前に立つキャサティア。
だが、キャサティアの腹には槍が突き刺さっていた。
「げほッッッ!!・・・一本食らったか・・・」
血反吐を吐きながら、キャサティアはその場に膝を付く。
「キャサティア!?キャサティア!!!!!」
キュキュシュはキャサティアの肩を抱きながら、治癒魔法を行っていた。
その時、フォーリが右手に槍を形成した。
「!!?」
まさか・・・殺る気か?
お前が?
ふざけるなよ・・・これ以上、俺に無様な姿晒してんじゃねぇーよ!!!!!!!
フォーリがキュキュシュ達に槍を投擲しようとした瞬間、
ブシュゥゥゥゥウウウゥゥゥゥウウウウッッッッッ!!!!!!!!
右腕が吹き飛ぶ。
赤い光は直ぐさま傷口に集まるが、
ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッッ!!!!!!
ブシュゥゥゥウウウウウゥゥゥッッッッ!!!!!!!!
左腕、左足が同時に吹き飛ぶ。
フォーリはその場に倒れる。
「『仙牙八刀―――音帝』」
遅れて技名を口にする。
まだ死んでいない。
傷口に赤い光が集まっている。
痛みは感じないのだろうか?
・・・・関係無いか。
「お前は・・・お前は・・・・」
一歩一歩近づく。
ブシュゥゥゥウウウウゥゥゥゥゥゥウウウッッッッッ!!!!!!!!!!
再生した所を瞬時に吹き飛ばす。
「目的は果たせたのか?・・・喋れないんだっけか?カロを殺したと言っておいて、生きて帰れると思ってないよな?」
ブシュゥゥゥウウウウゥゥゥゥゥゥウウウッッッッッ!!!!!!!!!!!
「鉄壁の防御も、再生の方に割き過ぎて防御が疎かだぞ?まぁ、割合100%だったとしても、見えない刃を防げる訳はねぇーわな」
ブシュゥゥゥウウウウゥゥゥゥゥゥウウウッッッッッ!!!!!!!!!!!
「感情ぶっ壊したお前に・・・生きる資格ねぇーよ」
フォーリの喉元に刃先を当てる。
「何だその目は?助け求めているのか?貶しているのか?解らねぇーよ。今のお前からは何も読み取れねぇーんだよ・・・・どうして・・・そんな目で俺を見れる!!!」
フォーリは無表情のまま、ただただ俺を見ている。
その目は、何も訴えず、何も求めない目。
ふざけるなよ。
怒れよ。悲しめよ。笑えよ。
何でお前は・・・・。
一瞬、刃を下ろしてしまった。
瞬時にフォーリは跳び上がり、槍を形成する。
「フォーリィィィィィィィィィィッッッッ!!!!!!!!!!」
フォーリは俺を見て、そして視線をずらす。
横に居る、キュキュシュとキャサティアに。
「!?・・・止めろォォォォォォォォォォォォッッッッッッ!!!!!!!!」
キュキュシュはキャサティアを治療するのに真剣で気付いていない。
その頭上に、無情な矛が振り下ろされる。
奥歯を噛み締める。
そして――――、
ブシュゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥゥウウウウッッッッッッッ!!!!!!!!!
フォーリの体に斜めの傷が走る。
そして血が噴き出す。
フォーリは静かに後ろに跳ぶ。
だが、その表情は、
「何で・・・笑ってるんだよ・・・・」
フォーリは小さく笑みを浮かべていた。
何かを言う様に、伝える様に。
そのまま、フォーリは地面に叩き付けられる。
赤い光は消え、残るは血を流し倒れる死体だけだった。
静かに、フォーリを見つめる。
『仙牙龍刀』の刀身は血に濡れ、滴る。
誰の血だ?・・・アイツのだ。
誰が殺った?・・・俺だ。
どうして・・・こうなった?
どうして・・・お前は笑った?
「教えろよ・・・戦闘狂・・・・」
頬に涙が伝う。
俺はそのまま地面にへたる。
何だこの感じは?
何が殺すだ。
殺した後のこの感情は何だ?
後悔以外の何物でもないだろう?
俺は、軽く見過ぎていたのか?
何度仕留めるチャンスがあった?
それを無意識に回避していたのは誰だ?
ふざけるなよ・・・。
何で最後の最後で笑いやがった・・・・・。
俺に、何を言いたかったんだよ・・・、
「フォーリ・・・・」
Side=サヤ∥Out
Side=キャサティア∥Beginning∥『Reload』
「くっ・・・・」
腹を貫かれた割には、痛みが少ない。
瞑っていた瞼を開く。
一番最初に映ったのはキュキュシュの泣き顔だった。
「よがっだ・・・よがっだ・・・」
涙を流しながらキュキュシュは笑みを作ろうとしていた。
「・・・泣きすぎだ。馬鹿」
キュキュシュの頬を拭いながら微笑む。
どうやら治療してくれた様だな・・・・、
「!?アイツはどうした!?」
起き上がり、辺りを見渡す。
そして、二番目に映ったのは倒れる死体だった。
「コイツは・・・・」
「サヤさんが・・・倒した」
キュキュシュの声が低い。
私はあの男を見る。
地べたにへたり、下を向いている。肩が・・・震えている?
「何で、アイツはあぁなっている?」
意味が解らない。
コイツは敵じゃないのか?
「・・・仲間・・・だったみたい」
キュキュシュは小さく答える。
「仲間?・・・仲間!?」
理解した。
アイツがあぁなっている意味も。
何でアイツがこんなにも手こずったかも。
「おい!・・・・おい!!!」
男に声を掛けるが、全て無視をする。
「駄目だな・・・あれは暫く動けないな」
肉体的な問題ではない。精神的な問題だ。
仲間を殺したのだ。
それぐらいのダメージが無い方が可笑しい。
「・・・キュキュシュ、あの男を転送で国境付近に送れ」
「えっ?何で国境付近?」
「人目が無い所に送らないと、あの男殺されるぞ?今のアイツは赤子同然だ」
『ローズ』の皆が居る所に送ろうにも、あんな動けない奴を送っても足手まといになるだけだ。
「わ、解った」
キュキュシュはあの男の側に行き、肩に手を置く。
だが、男は無反応でただただ下を向いている。
そして、男は一瞬で消える。
キュキュシュは私を見ながら尋ねてくる。
「で、私達はどうするの?」
「『ローズ』に戻るぞ。もうそろそろ合流地点だ」
立ち上がりながら、辺りを見渡す。
豪快に崩壊している。
「これで良く崩壊しないな・・・・」
思わず呟いてしまった。
「それはですね、私が頑張って立っている柱に強化魔法を掛けているからですよ?」
「「!!?」」
後ろを振り返る。
そこには、
「ベルワー=ミニッツ・・・・」
そこには細目の男が立っていた。手には剣を携え、表情は笑みだが、殺気が放たれている。
「おや?名前を覚えていてくれたのですか?嬉しいですねぇ~」
「キュキュシュに直接接触したてきたのはお前だけだったからな。良く覚えているよ」
笑みを作るが、それが精一杯だ。
「あぁ~そうだったんですか。いやいや、挨拶に行くもんですね。そのお陰で貴女の様な女性に顔と名前を覚えてもらえるなんて」
白々しく喜ぶベルワー。
私は一歩一歩下がりながらキュキュシュに近づく。
あの男は剣を握っているが、戦えるのか?
頭は切れるとは聞いていたが、剣の腕が凄いとは聞いてないぞ?
だが、隠していたと言う事もある。
甘くは見れない。
「おやおや?何で後ずさりするのですか?」
ベルワーは一歩ずつ私達に近づく。
「何かあったのですか?それよりも、何故地下水路がこんなになっているのでしょうか?」
笑みを浮かべながら近寄ってくる。
「それに、貴女のお腹に血が付いてますが、戦闘でも?」
あと数歩の所でベルワーが止まる。
そして、私を指さし笑みを消し去る。
「こそこそやってんじゃねぇーよ。ぶっ殺すぞ?」
その瞬間、
ブシュウウッッッッッッ!!!!!!!!!!!
「か・・・・ハッ!!!!!」
刺さ・・・れた?
視線を下に落とす。
腹に短剣が突き刺さっている。
誰・・・が?
視線を上げる。
ベルワーの後ろに、人影が居る。
クソが・・・剣はフェイクか・・・。
その場に崩れ落ちる。
「キャサティア!?」
キュキュシュが私の肩を掴みながら叫ぶ。
私は、一瞬キュキュシュの顔を見て肩に手を置く。
そして、
「今は・・・逃げろ」
「えっ?」
キュキュシュが何か言う前に、姿が霞んで行く。
「なっ!?転送魔法だと!?止めろ!!!」
ベルワーが慌てて叫ぶ。
それを聞いてベルワーの後ろに居た人影が私めがけて短剣を投げながら走って来る。
だが、遅い。
短剣が私の肩に突き刺さる前にキュキュシュの姿は消えていた。
「クッ・・・・貴様、転送魔法が使えたのか?」
ベルワーは顔を歪めながら尋ねてくる。
・・・残念だけど、もう私には答える体力残って無い。
静かに、倒れる。
「クソが・・・最後の最後で」
薄れゆく意識の中で、ベルワーの悔しがる声が聞こえる。
はは・・・いい気味だ。
キュキュシュ・・・今は、逃げろ。
お前さえ生きていれば、『ローズ』は消えない。
そこで、私の意識は途絶えた。
Side=キャサティア∥Out