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 Side=第三者∥Beginning∥『Reload』

     『常闇の一週間』まで―――後3日。



 サヤは銃を腰にしまい、『仙牙龍刀』を取り出す。

 即殺。峰打ちなどはしない。


 研ぎ澄まされた刃をゆらりゆらり揺らし、バティフォーリを睨む。

「同じ事を尋ねるのは嫌いなんだ・・・・特に真面目な話ではな」


 サヤの表情は怒り。

 それは仲間に対して向ける表情ではない。


 敵。今やサヤの中ではバティフォーリを敵と同等の認識をしていた。


「理由は話さなくても良い。だが、言わないのは違うだろ?それえではまるで・・・殺すのが当然だったと言っている様だぞ?」


 睨み付けるが、バティフォーリは表情を変えない。

 動かず、喋らず、ただただサヤを見据えている。


「さて、何処から切り落として欲しい?それとも貫くか?削るか?裂くか?選ばせてやる。だが、どれもお前に取ってはバッド・エンドだ。それが嫌なら大人しく俺の前から消えろ。逃げるなら追わない。その変わり・・・一生俺の目の前に現れるな」


 サヤは『仙牙龍刀』を構える。

 それと同時に殺気が漏れ出す。


 バティフォーリは動じずに、完全にサヤの方へ体を向ける。

 そして、纏う赤い光がバティフォーリの右腕に集まり、形を成す。


 それは槍。だが、赤い光は完全な槍には成らず、辛うじて槍。と言える程度だった。


 サヤはそれを見る。

「そうか・・・死を選ぶか。なら、遠慮無くぶっ殺してやるよォォッッッッ!!!!!!」


 先にサヤが動き出す。


 何のモーションも無く、バティフォーリの左側面に移動する。


 そして、『仙牙龍刀』を振り上げる。


 だが、『仙牙龍刀』は何かに弾かれる。


ガギィッンッッッッッ!!!!!!!


「!!?」

 サヤは何故弾かれたか解らずに、目を丸くする。


 その一瞬の隙。

 バティフォーリが右手に持つ槍の矛先がサヤの右目めがけ伸びる。


「くッッッ!!!!!」

 辛うじて躱す。だが、退かずにバティフォーリの腕めがけて振り上げる。


 だがそれも弾かれる。


 そこで一旦サヤは距離を置く。

「・・・その光か・・・」


 サヤは呟き、考える。


 『仙牙龍刀』は弾かれる。

 それならば、他の攻撃も弾かれると考えて良いだろう。

 だが、それならばどうやって攻撃を当てる?


 打撃か?斬撃か?銃撃か?

 どれも良い答えじゃない。


 それならばどうする?

 ・・・不毛だな。考えても無駄ならゴリ押しだ。


「似合わないモン手に入れたな、おぃ!!だがよ、だから何?って事だ!!!」

 サヤは叫び、振るう。


「『仙牙五刀―――龍撃』」


 巨大な斬撃が飛ぶ。


 だが、それすらもバティフォーリが纏う赤い光に防がれる。


ドゴォオオオオォォォォォオオオオオンッッッ!!!!!!!!!!!


 粉塵が舞い、視界が悪くなる。


ブシュゥゥゥゥウウウウゥゥゥゥゥゥウウウッッッッッ!!!!!!!!!!


 バティフォーリの腕が吹き飛ぶ。


「『仙牙八刀―――音帝』」

 遅れて、サヤが技の名を口にする。


 最初の斬撃は囮。

 だが、当たるとは思ってはいなかった。


 何故当たった?


 当てた本人が驚いている。

 サヤはバティフォーリを見る。


 左腕は無残に床に転がり、傷口から血を噴き出している。

 だが、バティフォーリは顔色1つ変えない。


「感情を何処に忘れて来た?テメェーいつの間に人形に成り下がったよ?」

 唾を吐きながらサヤが挑発する。


 その時、赤い光が傷口に集まる。

 そして、凄まじい早さで回復、いや再生する。


「おいおい・・・トカゲの尻尾かよ」

 流石のサヤでも再生など出来ない。


 だが、目の前で新しい腕が出来上がっていた。

 ふと、床に落ちている腕を見る。


 完全に生み出したって事だな。つなぎ合わせるとかじゃねぇー。

 エルと同じ事してやがるよ。


 サヤは若干焦っていた。

 攻撃は当たる。

 だが、あの再生能力は脅威。


 幾ら当てようとも、直ぐさま再生する。

 消耗戦。だが、フォーリの赤い光に限界があるのか?

 それも解らない以上、無闇矢鱈に消耗戦に持ち込めない。


 サヤはこの時気付いていなかった。

 消耗戦・・・これを考えている時点で、自分がバティフォーリを殺す気が無い事に。

 無意識に、サヤは殺さない方法を探していた。


 現に、腕を狙わずに首を狙えば済む話しだった。

 首で無くとも、急所を狙えば良い話しだった。


 けれども、サヤは無意識に腕を狙った。

 バティフォーリですら反応出来なかったのだ。十分出来た事。

 だが、しなかった。


 此所にサヤの甘さがある。

 口では「殺す」と言ってはいるが、思考の奥深くでは「殺さず」を考えている。

 この時点で、サヤの勝ちは無くなったも同然だった。


 だが、当の本人はそれに気付いていない。

 それが盲点。


 サヤは現時点でも、無意識に「殺さず」を考えてしまっている。


 バティフォーリはその違和感に気付いていた。

 右手に持つ槍を構え、そのまま突っ込んだ。


「なっ!?」

 サヤはバティフォーリの無謀な突進に一瞬驚き、『仙牙龍刀』を振ろうとする。


 が、一瞬『仙牙龍刀』を振るスピードが落ちる。

 それは本当に一瞬。

 サヤ自身も気付いていない。無意識による、抑え。


 それをバティフォーリが見逃す訳はなかった。

 矛先がいきなり伸び、サヤの肩を貫く。


「ぐはッッッッ!!!!」

 顔歪め、サヤは再度『仙牙龍刀』を振ろうとするが、


ドゴォォォォオオオオオォォォォォォンッッッッッッ!!!!!!!!!!!


 壁に激突し、足が宙に浮き、振る事が出来ずに壁を突き抜ける。


「な・・・舐めるなァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

 サヤは叫び、『仙牙龍刀』の柄頭を右手の人差し指と中指の第2関節で挟み、腕を鞭の様に撓らせ、バティフォーリの顔めがけて振る。


ガキィィィィィィィィィンッッッッ!!!!


 渾身で振った刃すらも、赤い光によって防がれる。


 バティフォーリはそのままサヤを床に叩き付け、肩に突き刺さった槍を思いっきり押す。


ドゴォォオオオオオォォォォォォォオオオオンッッッッ!!!!!!!!!


 床にひびが入り、そのまま下の階へ落ちる。

 下の階の床にぶつかりまた下へ落ちる。


 2人はそのまま下へ落ちていった。







Scene→Change







 サヤとバティフォーリが対峙している時、『ローズ』の面々は既に地下水路に着いていた。

 サヤが暴れているため、全ての兵士は其方に向かっている。


 そのお陰でスムーズに此所まで着いた。

 緊張感のせいで、大して走ってはいないが肩で息をしている。


「はぁ~・・・はぁ~・・この後は水路通って行けば良いんだよね?」

 キュキュシュがキャサティアに尋ねる。


「あぁ。南の方へ向かって、暫くしたら2つに別れる分岐点がある。そこで協力者の男と落ち合う手筈だ」

 キャサティアは息を整えながらもうお復習いの様に説明する。


「走って10分って所だね。それじゃ行こう――――」

 キュキュシュが皆を見ながら「行こうか?」と言おうとした瞬間、


ドゴォォォォオオオオオォォォォォォンッッッッッッ!!!!!!!!!!!


 地下水路の天井が破裂し、瓦礫粉塵が舞う。


「キャッ!!」

 キュキュシュは小さく悲鳴を上げる。


 『ローズ』の面々は直ぐさま剣や弓、槍を構えキュキュシュの盾になる様に立つ。

 突き破られた天井の真下は粉塵で何も見えない。


 だが、赤い光が揺らめいている。

 皆、生唾を呑む。


 そして、砂塵が少しずつ晴れてその場にい居た人物、またはその状況に驚愕する。


「ゴホッ・・・ゲホッ!・・・・」

 サヤは咳に混じり血を吐き出す。


 そのサヤの肩には赤い槍が突き刺さり、貫通し地面に矛が突き刺さっている。

 そして、槍を突き刺している男バティフォーリは無表情でサヤを見下ろしている。


 『ローズ』の面々はこの状況に驚いていた。

 1つはいきなり落ちてきた事。そして、もう一つはあのサヤが血反吐を吐いている事だ。


 『ローズ』の面々のサヤへの印象は最強だった。

 戦場に現れ、無傷で生還。


 血だらけで死にかけて生きている。

 天空の系統の魔力を流し込まれても無事。


 そんな男が、血反吐吐いて地面に倒れている。


 それが何よりも信じがたい光景だった。

 そして、その唖然としている中一番最初に口を開いたのはキュキュシュだった。


「サヤさんッッ!!!!!!!」

 駆け寄ろうとするキュキュシュを、キャサティアとグラが抑える。


 2人の本能は告げていた。

 あの2人に近づいては駄目だ、と。


 巻き込まれる。確実に。


 先程から流れる異様な汗。

 それは全てあの2人から放たれる魔力と殺気。


 それだけでも人を殺せるのではないだろうか?と思える程だった。


 だが、キュキュシュは目の前のサヤの安否に気を取られ、気付いていない。

 それでも額からは汗が流れている。


 思考は気付いていないが、本能は気付いている。そんな感じだ。

「サヤさんッッ!!!!」

 再度キュキュシュは叫ぶ。


 だが、サヤはキュキュシュの声が聞こえていないのか、敢えて無視をしているのか、バティフォーリを睨み付けている。


「止めろキュキュシュッッッッ!!!!」

 キャサティアは叫び、キュキュシュを落ち着かせようとする。


「でも!でも!!!」

 キュキュシュはキャサティアを見ずに叫ぶ。

 完全に状況を忘れている。


「落ち着け!アイツならだい―――――」

 「大丈夫だ」と言おうとした瞬間、2人が動く。


「ぐあァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 サヤは叫び、先程とは比べものにならない魔力と殺気を放つ。


 そして、『仙牙龍刀』をバティフォーリの胸めがけて突き出す。


ギィィィィィィィィィィィィィィンッッッッ!!!!!!!!!!


 刃先と赤い光がぶつかり、不快音が鳴り響く。

 だが、先程の様に弾かれずにぶつかり合っている。


 サヤは歯を食いしばり、バティフォーリを押す様に力を入れる。


ズズッ―――グシュッッ!!――ズズズッッッ――。


 肩を貫いていた槍が、少しずつ抜けていく。

 そして、サヤが叫ぶ。

「おらァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」


 槍は完全に抜け、バティフォーリが少し後ろに下がる。

 サヤは退かず、直ぐに『仙牙龍刀』を振る。


「『仙牙五刀―――龍撃』!!!!!!!!!!!」


 斬撃がバティフォーリめがけて飛ぶが、赤い光が邪魔して消し去る。

 だが、サヤは先程の様に既に次へ動いていた。


「『仙牙三刀―――線斬』」


 地面を擦る様に『仙牙龍刀』を振る。

 地面を這う様な斬撃が走る。


ブシュゥゥゥゥウウウゥゥゥゥウウウウッッッッッ!!!!!!!!


 バティフォーリの膝から下の右足が吹き飛ぶ。

 だが、直ぐさま赤い光が傷口に集まる。


ブシュゥゥゥゥウウウゥゥゥゥウウウウッッッッッ!!!!!!!!


 今度は左足が吹き飛ぶ。


「『仙牙八刀―――音帝』」

 遅れて技名を口にする。


 一瞬で三手。サヤは仕掛けた。

 だが、バティフォーリは驚く事も顔を歪める事もせずに再生した右足と、槍を地面に刺し、それを支えに左足の再生を待っていた。


 だが、それを見ている程サヤは優しくない。

 直ぐさま構え、動く。


「『仙牙七刀―――閃光』」


 刀身が伸び、バティフォーリの胸に当たる寸前でまた赤い光とぶつかる。

 サヤは柄を握る手に、更に力を入れる。


「『仙牙七刀――真――閃光千爆』」


 唱えた瞬間、伸びた刀身が破裂し千もの刃が飛び交う。


 赤い光はバティフォーリを守る様に刃を防ぐが、数が多すぎる。

 最初は防いでいたが、数本がバティフォーリの体に突き刺さる。


 そして直ぐさま赤い光は傷口に集まり再生を始める。


 サヤは体を捻り、『仙牙龍刀』をゆっくりと上から下へ振る。


「『仙牙四刀―――螺旋』」


 振った瞬間、回転が掛かった斬撃がバティフォーリとぶつかる。

 バティフォーリはそのまま後ろに吹き飛び、地下水路の闇へ消える。


 サヤは息をする間も無く、走り出す。


「サヤさんッッッ!!!」

 キュキュシュは走り去るサヤの背中を見つめながら叫ぶ。

 だが、その声は届かず木霊した。


「落ち着け!!アイツはアイツの役目を果たしているだけだ!!それに、私達が参戦してどうにかなる相手か!?」

 キャサティアはキュキュシュを落ち着かせる為に叫ぶ。


 だが、キュキュシュは食い下がる。

「それでも!!!!」


「それでもじゃねぇーよ!!!あの赤い光を纏う男を見たか!?吹き飛ばした足が一瞬で再生したんだぞ?そんな奴相手に戦いを挑んだって消耗戦が良い所だ!!!」

 キャサティアはキュキュシュと違い、サヤではなくバティフォーリを見ていた。


 そして、気付いていた。

 あの赤い光は纏う者の反応速度を超えないと。


 その為、バティフォーリが反応出来る攻撃は絶対的に防げるが、反応出来ない攻撃は食らってしまう。


 だが、それを補う様な再生。

 そのせいで致命傷も致命傷ではなくなってしまう。


 サヤはそれを力技でカバーしたが、それを自分も出来るか?と尋ねられれば答えはNOだろう。


 だからこそ、自分達が行ったら足手まといになる事が解っていた。

 それはキュキュシュにも言えていた。


 天空の属性だと言っても、あの赤い光に何処まで通用するか解らない。

 そんな未知な敵に自分達の大将を送り込ませる程、生ぬるい思考は持ち合わせていない。


「落ち着きな!!今は私達は逃げる事だけ考えるんだ!!!」

 キャサティアは必死だった。


 キュキュシュは今にもサヤを追おうとしている。

 何時もは自分から率先してや、感情的な事はあまりなかった。


 だが、ここに来てしかも会ったばかりのサヤに対しての感情。


「でも!行かないと!!サヤさんが!!!」

 キュキュシュは涙を溜めながら叫ぶ。


 キャサティアは大きく息を吐き、手を翳す。


バチィンッッッ!!!!


 キャサティアはキュキュシュの頬を叩く。


 キュキュシュは叩かれた頬を押さえながらキャサティアを見る。


「落ち着け!!アンタが言ってどうにかなる相手じゃないだろ!?それとも、此所で作戦を失敗に終わらせる気か!?」


 その言葉と叩かれた事によって、キュキュシュは冷静さを取り戻す。

「ごめんなさい・・・・」


 それを聞いて、キャサティアと他の隊員が溜息にも似た息を吐く。


 此所まで取り乱すとは・・・・。

 皆考えている事は同じだった。


 そこまで思っているのか?と。

 此所でからかったり、ちゃかす時間は無い。


 直ぐさま体の向きを変え、進み出す。

「兎に角今は早く行くよ!このままだと見つかっちまう!!」

 キャサティアは先導する様に先に進む。


 他の隊員もそれに付いて進む。

 キュキュシュは最後尾で、静かに後ろを振り返る。


「・・・サヤさん・・・・」

 キュキュシュが呟いた瞬間、


「ぐあアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!」


 サヤの叫び声が木霊する。

 それを聞いた瞬間、キュキュシュは何も考えずに走り出していた。


 それに気付いたキャサティアが叫ぶ。

「キュキュシュッッッッ!!!!!!!!!!」


 だが、キュキュシュはそれを無視し地下水路の闇に消える。


 キャサティアは舌打ちをし、叫ぶ。

「私が追う!!グラ!!先導頼むよ!!!」


「解ったわぁ!!!」


 キャサティアは銃を片手にキュキュシュの後を追う。


 嫌な思いを胸に抱きながら。



 Side=第三者∥Out










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