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 Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』

     『常闇の一週間』まで―――後4日。



「それで、どうやって逃げるんだ?」

 ボーイッシュな感じの俺の銃を拾ってくれた・・・えぇ~と・・・確かキャサティアだっけか?がモネに尋ねている。


 モネは本を読みながら答える。

 因みに今は『ローズ』の宿舎と言うのか?そこに居る。

「ある人に頼んでいるの」


「ある人?」

 キュキュシュが首を傾げる。


「ソイツは強いの?コイツ等逃がせる程の実力持ってるの?」

 少しそのある人が気になった為尋ねる。


「えぇ。実力は確かよ」


「どっかの国の人なんですか?」

 『ローズ』の隊員の1人が尋ねる。


「いいえ。彼は確か・・・何処だったかしらね?でもこの戦争には関与していないと思うけど」

 モネは首を傾げながら思い出そうとはしたのだが、結局そのあの人の情報は闇に葬られたらしい。


「彼って事は男か?大丈夫なのか?」

 キャサティアが心配して尋ねる。


 まぁ、理由としては女だけの部隊に男がムラムラしないのか?って事だ。

 えっ?俺?俺は別にしないよ。そう言う所はしっかりしているから。


「それは大丈夫よ。それに、一番危険なのは多分サヤだし」

 そう言いながらモネが俺を見る。


「・・・・どう言う事だ?」

 何か急にその彼に会いたくなくなってきた。


 モネが苦笑しながら答える。

「彼、ゲイなの」


 宿舎・・・・てか、この場に居る全員が固まる。

 特に俺。


「俺その彼に会いたくない」

 思わず本音が。てか、誰でも会いたくないわ!!


「そう言わずに。彼も場を弁えるし・・・まぁ、保証は出来ないけど」


「うぉい!!最後聞こえたぞ!!ちゃんと聞こえたぞ!!」

 モネに叫び、ふと周りをみると、

「テメェー等何で合掌してんだよ!!!!!まだ決まってねぇーだろうが!!!」


 全員手を合わせて目を瞑っていやがった。

 何だそれ!!「尊い命が・・・」みたいな雰囲気!!まだ俺犠牲になるって決まってないじゃん!!勝手に決定すんなよ!!


「俺絶対会いたくない!!!!」

 断固拒否!!此所に来てストライキ!!


「多分大丈夫だから・・・」


「断言出来ない時点でアウトだろ!!!」

 嫌だ。もう嫌だ。何で俺の周りには一癖も二癖もある奴が集まる?


 常識人は何処!?・・・・あっ、俺が非常識だったか。

 再認識。・・・て、そんな下らない事考えている場合じゃねぇー!!


「・・・もし何かしてきたら殺すから」

 大きく息を吐きながら一応申告。


「まぁ、手を出してきたら良いわよ?ヤッても」


「お前の殺るには別の意味に聞こえるわ」


 モネは頬を膨らませ、

「私そんなエロい事ばっかり言わないもん!!」


「40歳手前の「もん!」は可愛くねぇーよ」

 そう俺が言うと、


「酷い!!!」

 モネが手で顔を隠しながら床に崩れる。


 すると、

「酷いぞお前!!!」


「女の子泣かした!!!」


「女の敵!!!」


「地獄に堕ちろ!!!」


 ・・・あれ?何故か一気に敵が増えた。

 てか、嘘泣きだろ!!!何で俺が責められるの?可笑しいよね?絶対可笑しいよね!?


 てか、女の子って・・・もうそんな歳じゃねぇーだろ。

 と、思った瞬間、指と指の間からモネが俺を睨む。


「・・・すいませんでした」

 思わず謝ってしまった。だってスゲェー怖かったんだもん。


「謝れば良いのよ!」

 そう言いながら立ち上がるモネ。


 あれ?泣いてないじゃん。やっぱりじゃん!!

「・・・それで、何時実行するんだ?」

 もう面倒なので重要な事聞いて退散しよう。


「0時ジャストに動く。サヤには少し騒ぎを起こしてもらうからよろしくね」


「了解」


 キュキュシュが手を挙げて尋ねる。

「私達は何処に行けば良いんですか?」


「『ローズ』の皆は城を出て、地下水路を通って逃げて。途中で神父みたいな白髪の男が待っていると思うから。合い言葉は「鉛」ね」


「何で「鉛」なんだ?」

 キャサティアが尋ねる。


「ん~良くは解らないんだけど、何か「鉛が良い!!」とか言われたから」


 随分適当だな合い言葉。

 まぁ、絶対バレないだろうが。


 モネが手を叩き、少し声を張る。

「それじゃ、皆それぞれ準備してね!でも、くれぐれも勘づかれない様にね!特にベルワーには気をつけなさいね!アイツかなり鋭いから。それに、会っても話さない様に!惑わされるわよ」


 ベルワー?そんなキレる奴が居るのか?

 何か、この国は武官よりも文官の方が上って感じだな。


 モネしかり、そのベルワーって奴しかり。


「それじゃ!1時解散ね!それと、合図は爆発音だから!」

 モネはそれだけ言って宿舎を後にする。


 俺もフードを被り、後を着いて行く。

「爆発音って、俺がやるのか?」


「貴方以外に居る?」

 モネはさも当然の様に答える。


 解っていたけどさ。何だよ結局囮か。まぁ、それ以外に出来る事ないだろうがな。

「お前は大丈夫なのか?」


「何が?」


「何がって、逃がした後の事に決まってるだろ?」


「まだ成功したって決まった訳じゃないんだから、後の事は考えないわ」

 モネは先程から俺と目を合わせない。


「・・・お前自害するとか言うなよ?」


 そこでやっと笑みを浮かべる。

「そんな愚かな事はしないわ」


 笑みは浮かべていた。

 けれども、目は笑っていなかった。


 言った事に嘘は無いだろう。

 だが、もしその様な状況になったなら自害する覚悟はあるのだろう。持ちたくもない覚悟を。


「お前も一緒に逃げるってのはどうよ?」


「ふふ、心配してくれているの?」

 茶化す様に笑う。


「そんなんじゃねぇーよ。けどよ、残るより一緒に行った方が良いだろ?残っても危険ならどっちも同じだろ?」


「そうね。でも、私はやる事があるから」


「やる事?」


 尋ねるが、それ以上モネが答える事は無かった。

 けれども、俺にはモネが自ら危ない橋を渡ろうとしているとしか思えなかった。


 いざとなった引っ張ってでも連れて行く。

 この女は此所で死んで良い人間じゃねぇーだろうさ。



 Side=サヤ∥Out

























 Side=???∥Beginning∥『Reload』



 『アスリトン』に奇襲攻撃が決まって、直ぐさま出動命令が出た。

 そこまで焦る必要があるのか?


 とは思っていたが、どうやら『アスリトン』に内通者が居るらしい。

 だが、俺等には詳しい事と言うか内通者の事は知らされていない。


 俺が聞いたのも隊長からだ。

 どうやら部隊長や偉い奴にしか話されていないらしい。


 それなのに俺に言う隊長はどうなの?

 などと思ったが、此所は信用されているって事で無理矢理納得した。


 それと、内通者の話だと今日か明日に何か騒動があるらしいが、信用出来るのだろうか?

 その内通者が寝返っているって事は考えられないのか?


「それないな」


 隊長に尋ねられたら即答された。

「何でですか?」


「理由は簡単。向こうは反王族派と王族派を潰すつもりだからさ」


 おいおい・・・それはまた大いに馬鹿げた事をしようとしているな。

 国が崩れるぞ?


「国をひっくり返すつもりだろうな。内通者からは状況提供と魔法兵器の提供が約束されている。その代わり今回の奇襲と革命成功時の国の安全を保証したらしい」

 隊長はつまらなそうに言う。


 この人も権力や政治などに全くと言って良い程興味が無い人だ。

 兵士は戦ってなんぼ。って感じの人だ。そのくせ戦争嫌いって。


 まぁ、俺も似た様なモノだが。

「まぁ、一応は解りますけどね。ですが、その騒ぎって言うのは何ですか?」


「さぁな。それは知らない。だが、結構盛大にやるつもりらしい。綺麗な花火でも見られれば良いな」

 と、乾いた声で笑う。


「花火あんまり好きじゃないんですよ。火薬を空に打ち上げて何が楽しいんですか?空に打ち上げるのは砲撃だけで十分ですよ」


「砲撃が花火に変われば少しは良いんだけどな」


「それは戦争じゃなくて祭ですよ」


 下らない事を言いながら、『アスリトン』へ向かう。

 この調子だと、着くのは明日の夜中の1時か。


 革命だったとしても、結局誰か死ぬのだろうな・・・。



 Side=???∥Out






















 Side=第三者∥Beginning∥『Reload』



 現時刻、23時55分。

 城内は静かで、寝息すら耳を澄ませれば聞こえるのでは?と思ってしまう程である。


 廊下は蝋燭の火が点々と点いているが、それでは広い廊下を照らせていない。

 精々、暗闇の中で道を迷わない様に程度だ。


 その廊下の暗闇の中で、真っ黒なローブが揺れる。

 足音を立てず、息の音さえ聞こえない程の静かさ。


 黒ローブは耳に青い魔法石を当て、立ち止まる。


 現時刻、23時58分。

 黒ローブは静かに口を動かす。

「・・・幸運を」


 青い魔法石から答える声が小さく響く。

『貴方も』


 短いやり取り。だが、これで十分と言う感じで黒ローブはもう口を開く事はない。


 現時刻、23時59分。


『・・・・カウント。10、9、8、――――』


 魔法石からカウントが聞こえる。

 黒ローブは静かに腰から銃を抜く。


『―――7、6、5、4、3、2、1・・・盛大にね♪』


 その瞬間、黒ローブが銃を天井に向け、乱射する。

 その勢い、フードが脱げ、顔が晒される。

 笑みを浮かべた、悪そうな顔が。


「ショォォォォォタァァァァァァァァァァイムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

 サヤは叫び、銃を乱射していく。


 その銃声に遅れ、兵士達が慌ててやって来る。

 弓矢を構えたり、槍を構えたり、盾を構えたり、剣を構える。


「貴様何者だ!?」

 兵士の1人が声を張り上げる。


「んぁ?・・・さぁ、一体誰でしょう?」

 サヤはニヤリと笑いながら兵士達に近づく。


「正解者には・・・魔法弾を額にプレゼントだ。風通しが良くなるぜぇ?」


「放てェェェェェェェェェェェェエ!!!!」

 兵士が叫び、そして弓矢が放たれる。


「ハハッ!!生ぬるいぞ!!んぁ!?」

 サヤは銃を乱射し、突っ込む。







Scene→Change







ドドドドドドドドドドドドンッッッッ!!ドドドドドドドド!!!!!!!!!


 銃声が鳴り響く。

 その音を聞きながら、『ローズ』は動き出していた。


「遠慮無しだな」

 キャサティアが小声で漏らす。


「・・・凄いね」

 キュキュシュは素直に驚いている。


『ホント、彼が此所に来てくれて良かったわ』

 キュキュシュが持つ青い魔法石からモネの声が聞こえる。


「でも、サヤさんだけで大丈夫なんですか?」

 心配そうにキュキュシュが尋ねる。


『彼が大丈夫だって言ったのだから、大丈夫よ。それに、貴女達の為に囮役しているのだから、心配なんてしてないで早く動きなさい』


「・・・そう、ですよね」

 キュキュシュは拳を強く握る。


 それを横目で見ながら、キャサティアは小さく微笑む。

 まるで妹を見る姉の様に。まるで娘を見る母親の様に。


『後5分だからね。あまり時間は使えないわ。全ては有限よ?急いでね』

 モネはそれだけ言って通信を切る。


 キュキュシュは魔法石をしまい、辺りを気にしながら地下水路に向かう。







Scene→Change







 サヤは敵を殺す、と言う明確な理由無しに銃を乱射していた。

 その為、兵士には殆ど当たらずに壁や天井に当たり弾幕が広がる。


 兵士達はそれを下手くそだから、と誤解し叫ぶ。

「侵入者は雑魚だ!!」


 その勘違いが命取り。


 一瞬銃弾が止まったと思った瞬間、


バンッ!バンッ!!バンッ!!!


 三回銃声が響く。


「ぐがっ!!!!!!!!」

「がはっ!!!!!!!!」

「んがっ!!!!!!!!」


 3人の兵士が倒れる。

 兵士達は理解出来ず、第三者からの攻撃だと混乱する。


 自分達の目の前に居る侵入者は雑魚。

 なら、こんな正確に射撃は出来ない。それなら違う奴が撃っている。


 そんな錯覚に陥る。

 それは先入観。勘違い。


 サヤは今回殺す為に銃を構えている訳ではない。

 殺す気だったのならば、さっさと兵士達の懐に潜り『仙牙龍刀』で切り刻んでいるだろう。


 だが、今回は囮。

 殺すだけなら簡単だ。だが、今回は注意を引く事が重要。

 殺せば終わりではない。


 それに、作戦前にモネから「あまり殺さないで」と言った優しい言葉を貰っている為、無闇矢鱈に殺せない。


 だが、サヤに取っては新鮮だった。

 心理戦などと言う程大それたモノではないが、自分が圧倒的力を使わずに戦っている。


 これも経験。と、確実に戦闘スキルが上がっている。

 などど考えている。


 サヤは弾幕を見つめながら相手の出方を窺う。


 ・・・混乱しているのか?全然向こうからのアクションがないな・・・。

 サヤは少しつまらなそうな顔をする。


 だが―――、


ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!


 何かが壁を突き破り現れる。

 その瞬間、兵士達の叫び声と血が噴き出す男が響き渡る。


「んなっ!?何だ!?」

 サヤはいきなりの事態に少し驚いていた。


 壁を突き破った時に起きた風で、弾幕が晴れる。

 サヤは目を細める。


 薄く残る弾幕に揺られ、男が立っている。

 赤い光を身に纏い。


 金髪短髪。・・・そして、血の涙を流す。


「・・・フォーリ?」

 いきなりの乱入者が自分の仲間だと解り、少し驚き少し嬉しく感じていた。


 だが、

「・・・お前のそれは何だ?」


 サヤの言うそれとは赤い光の事だろう。

 だが、バティフォーリは無言無表情でサヤを見据える。


「答えろよ。てか、カロはどうした?」

 カロと聞いた時、バティフォーリの眉が微かに動く。


 サヤはその反応を見過ごさなかった。

「おいおい・・・まさか置いて来たのか?捜しに行くの面倒だろう?それともお前等はぐれたのか?」


 無言のバティフォーリにサヤは苛立つ。

 そして、最悪のビジョンが浮かぶ。


「何か言えよ・・・それじゃまるで人形みたいだぞ?・・・なぁ、フォーリ」


 バティフォーリは静かにボディーアーマーに付着した血を手で拭う。


 その瞬間、サヤがフォーリに銃口を向ける。

「芝居な訳ねぇーよな。お前がそこまで利口じゃねぇーのも、そこまで性悪じゃねぇーのも知っている。んじゃ、その態度は何だ?カロは何処だ?何故・・・お前は何も言わない!!!!!!!」


 サヤは叫ぶが、バティフォーリは動じない。


「答えろォォォ!!!バティフォーリ=ケスティマ!!!!!」


「・・・・アイツは・・・・・」

 バティフォーリが初めて口を開く。


 だが、それは嬉しい事ではない。

 告げる。終わりを。


「・・・・俺が殺した」


 サヤが構える銃が震える。

 いや、サヤ自身が震えている。


 そして、今自分の状況・立場・役割。全て忘れ、目の前にいる男に向かって叫ぶ。

「本気で言っているのかァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!」


 だが、バティフォーリは答えない。

 その沈黙は、認めている様。


 サヤは奥歯を噛み締める。

「何か言えよォッッッッ!!クソ野郎ッッッ!!!!!」


 その表情は憤怒、悲哀。


 今、二度目の本気がぶつかる。

 だが、まったく違うのは1つ。


 堕ちたのがバティフォーリだと言うだけ。


 たったそれだけ。

 だが、戦う理由のある・・・殺し合い。



 Side=第三者∥Out









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