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Side=羽時 刃∥Beginning∥『Reload』
街中の時計台の時計が、0時を指した。
『中立国』中央広場の噴水の側に腰を掛けていた。
噴水は一定時間水を高く噴射した後、静かに噴射を止める。
それを繰り返し何回見たか。
だが、帰ろうと思えなかった。
アイツに言われた事が胸に突き刺さっている。
でも、アイツが言った事は強者の言葉だ。
強いから、力があるから言えたのだ。
力のない弱者は、どうすれば良い?
越えられない壁に立ち向かって、越えられなかったらどうすれば良い?
簡単に言うなよ・・・弱者に強者の気持ちが解らない様に、強者にも弱者の気持ちは解らないんだよ。
・・・そう言えば良かったのに、言えなかった。
アイツが怖くてとか、そう言う理由では無い。
アイツの言葉には、重みが有った様な気がした。
アイツは・・・ちゃんと戦っているのだと。
では俺は?
親父の鍛錬が厳しくて逃げ出して、『リロード』に来ても特別やる事無くて・・・挙げ句の果てには犯罪者だ。
俺は・・・何がしたいんだ?
親父から逃れればそれで良いのか?
『羽時』から解放されればそれで良いのか?
弱者だと逃げていればそれで良いのか?
・・・弱いままで・・・良いのか?
でも・・・だからってどうすれば良い?
・・・いや、もう自問は止めよう。
答えなんて・・・返ってこない。
見つけないと駄目なんだ。
自問するだけじゃ駄目だ。答えを待つだけじゃ駄目だ。
兄さん・・・・兄さんも、今の俺と同じ事思ったのかな?
兄さんも『羽時』のプレッシャーに負けそうになったのかな?
いや、兄さんはきっと悩むより行動していたんだろうな。
考えるの下手だったし。何より馬鹿だったし。
でも、そんな優しい兄さんが好きだった。
兄さんみたくなる何て言わないよ。
でもさ、兄さんと並ぶ男になりたいって思うのは・・・良いだろ?
だから見ていてくれよ、兄さん。
俺さ・・・強くなるから。
だからさ・・・応援していてくれよ。
俺は立ち上がり、時計台の時計を見つめる。
長針がゆっくりと動き、2を指した。
Side=羽時 刃∥Out
Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
・・・眠い。
俺はオカマバーのカウンターチェアに腰を掛けている。
鏡で見た訳ではないが、きっと目の下に隈あるよね・・・きっと。
あぁ~クソッ!!!何で俺が徹夜してまであの少年待ってないと駄目なんだよ。
カロの野郎・・・何が「貴方が置いて来たのですから、ちゃんと帰りを待ってあげないと駄目ですよ?」だ。アイツ俺が徹夜で隈が出来た俺を見て笑う気だな・・・。しかも大笑いじゃなくて微笑むだけだぜきっと。
マジ・・・怠い。
もう良いじゃん。少年は家出したんだよ。そう言う年頃なんだよ。
そっとしとこうじゃん。俺もう寝たいよ。眠りたいよ。
枕が恋しいよ・・・てか、最近俺ちゃんと寝てないよね。
前はオカマ共に邪魔されたし。
睡魔は良く襲って来るのに・・・寝れないとか。拷問だよね。精神的に来るよね。
何かもうどうでも良くなってきたよ。
マジ・・・誰だっけ?睡眠時間三時間とか言ってた人?
マジ憧れるわ・・・・。
あぁ~もう限界!!少し・・・いや、かなり眠るは。
オヤス―――
バダンッ!!!
俺が夢の中にダイブしようとした瞬間に、オカマバーの扉が結構強く開けられる。
「んぁ?」
俺は首だけ動かし其方を見る。
太陽の光が眩しいぜ・・・・。
てか、もう外朝ですか。
俺もう絶対眠れない・・・・鬱だ。
「・・・・お願いします!!!」
すると、いきなり誰かが叫んだ。
頭に響く・・・てか、少年じゃん。
「・・・・何を?」
俺は少年を睨みながら尋ねる。
怒っている訳ではないよ?まぁ、多少は怒っているけど、これは太陽の眩しさ&寝不足で視界が悪いだけだからね。
すると、少年は日本に伝わる人にお願いする時にする伝統ポーズ土下座をした。
イマイチ現状を理解出来ない俺は馬鹿なのでしょうか?
「・・・何故に土下座?」
少年は頭を下げたまま、叫ぶ。
「お、俺は弟子にして下さい!!!!」
・・・・What?
「・・・Please say again」
「何で英語なんですか?しかも凄く発音良いし」
少年は頭を上げずにツッコむ。
成る程・・・少年はツッコみ属性か。貴重だな。俺等には。
「・・・・もう一度言って下さい」
俺は英語を日本語に変換して聞き直す。
「あ、はい。俺、強くなりたいんです!!」
青いな~・・・初々しいとも言うのか?
「・・・どうして?」
「俺、逃げるのはもう止めたいんです!!逃げてちゃ、見えるモノも見えなくなる。俺は、自分の道を行きたいんです!!!」
あぁ~青いなぁ~。
どうしようかな・・・・凄く悩むわ。此所でNOって言ったら駄目かな?それは空気読めとか言われるかな?
もうそろ空気読めないのレッテル剥がしたいんだけどなぁ~。
ラテスと初めて会ったら辺から俺に不本意なレッテル貼られたし。
マジどうしよう。あぁ~眠たいから思考が・・・。
「・・・死ぬぞ?」
「どうせこのまま行けば死人同然です。それなら、一歩でも兄さんに並ぶ男になりたいんです」
少年は床に額を擦り付ける様に頭を下げている。
並ぶ様に、か・・・。越えるとかじゃないんだな。
あくまでも、兄と同じ所に立つのが目標か・・・。
「死にそうになっても助けないから」
俺はそう言いながら欠伸をする。
「あ、有難うございます!!!!」
少年は頭を下げながら叫ぶ。
あぁ~・・・頭痛い。
・・・まぁ、良いか。少し気分が良いしな。
「俺が師匠だから。俺の事は東方○敗と呼べよ?んで、お前はド○ンな!」
「何故にGガ○ダム?」
おぉ~ボケが伝わるって良いね。
「じゃぁ~東西南○中央不敗で良いよ」
「それって結局同じじゃないですか・・・てか、そしたら俺サヤさんと戦わないと駄目ですよ?」
おぉ~ツッコみに鋭さは無いが、何か逆に新鮮。
てか、やっぱり『アース』にもガン○ムは存在するんだね。少し安心したよ。
「冗談だ。てか、お前は今まで何処に居た?」
「話し切り替えるの早いですね・・・えぇ、と中央広場の噴水の前で・・・」
「お前は会社に行くフリをするサラリーマンかよ・・・オカマ共が心配してたぞ?」
まぁ、フォーリにボコられて目覚めてから2時間後に気付いたけどね。
「ママ達に謝らないとな」
そう言って、微笑む少年・・・いや、弟子一号。
「今凄く不本意な名が付いた様な気がするのですが?」
結構鋭いな。
「気のせいだ。弟子い・・・少年」
「今なんか言いかけませんでしたか?」
やはり鋭い。
「気のせいだ。または空耳だ」
その鋭さをツッコみに回せば!!
「アンタ達いつまでふざけた事言い合ってるのよ?」
ママさんが厨房の方から歩いて来る。
・・・てかさ、オカマのネグリジェって怖いよね。この世のモノとは思えない。
これ、もう捕まえて良くね?犯罪だよこれ。有る意味銃刀法違反だよ?
凶器ブランブランさせてるもん。
「・・・アンタ今失礼な事考えてなかったかしら?」
ママさんが俺を睨む。
「いえ、何も考えてません」
怖いよ。
「そう・・なら良いけど。それよりも・・・・」
そう言いながら、ママさんは弟子一号の側に行き、
「・・・・7時までには帰って来いと何時も言っているだろうがぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ママさんの太い腕が弟子一号の首に入る。まぁ、ラリアットだ。
「グボォベッ!!!!!」
弟子一号は壁に激突する。
・・・初弟子が凄まじい早さで死んだ。
マジ俺何も教えて無いんだけど。俺から技を盗め的な事言いたかった・・・。
「ぐはっ!!げほっ!!!」
・・・生きてた。
「い、いきなり・・・攻撃は・・・ないだろ?」
弟子一号は首を押さえながら軽くママさんを睨むが、
「んぁ?誰に口聞いとるんじゃ、んぁ?」
ママさん口調が男に戻ってる。
「・・・ごめんなさい」
弟子一号が素直に謝る。うん。それは正しいよ。有る意味ママさんが一番化け物だもん。
「はぁ~・・・まぁ、良いわ」
ママさんは髪を掻きながら、溜息を吐く。
そして俺を見る。一瞬俺もラリアット食らうのかとドキドキしたが、
「・・・本当に良いのかい?」
「ん?何が?」
「弟子とかの事よ」
どっちの心配をしているか解らないが、
「何とかなるだろ?俺強いからね。餓鬼一人や二人増えた所で変わりはしない。それに、本人は強くなる気満々らしいからさ、邪魔にはならないさ」
そう言いながら俺が笑うと、ママさんはまた大きな溜息を吐く。
「はぁ~・・・私から言わせればアンタも十分餓鬼よ」
そう言いながら、ママさんが俺の方に体を向け、頭を下げた。
俺も弟子一号も驚き、顔を見合わす。
すると、
「・・・ジンをよろしく頼みます」
「・・・ママ・・・」
弟子一号は頭を下げるママさんを見ながら、涙目になっている。
・・・何か良いなこう言うの。
「・・・了解した」
家族・・・なんだろうな。
ホント、良いもんだ。
Side=サヤ∥Out
Side=第三者∥Beginning∥『Reload』
茜色に染まり世界が夜に変わる時、大量の足音が響く。
鎧を纏った4万もの軍勢。
剣・槍・盾・弓を携え、馬が蹄を響かせる。
人力砲台が人に引かれ、キシキシと軋みながら進む。
その中で、黒い馬に跨った軍服を着る無精髭を生やした男が、笑みを浮かべて懐中時計を眺めていた。
懐中時計は5時30分を指しており、秒針が音を立てながら進む。
すると、隣を歩いていた兵士が馬に跨る男に話しかける。
「ロスドン大佐。その懐中時計は?」
「んぁ?あぁ~これは思いでの品さ」
そう言って懐中時計を胸ポケットに収める。
「思い出・・・ですか?」
「お前少し馬鹿にしたろ?」
そう言って軽く睨むロスドン。
兵士は少したじろぎながらも、尋ねる。
「女性からの・・・贈り物ですか?」
「んぁ?クハッハハ!!!違う、違う。男からだよ!お・と・こ」
「男性からですか?」
「あぁ。昔のダチからだ。訓練生時代のな」
ロスドンは少し寂しそうに言う。
「・・・・戦死したのですか?」
申し訳なさそうに尋ねる兵士。
「それも違うぜ?コイツは離反したんだよ」
「えっ!!離反ですか?」
「あぁ。多分お前も知っていると思うぞ?」
そう言いながら兵士を見るロスドン。
「私がですか?それ程に有名な方で?」
ロスドンは少し間を開けて、その名を言う。
「クリストン=ロバーツ・・・」
その名に兵士は驚く。
「えぇ!!あの『二首の狼』ですか!?」
「クハッハハ!!懐かしい二つ名だな!結構コアな奴だなお前!?」
大口を開けて笑うロスドン。
「そ、そりゃぁ~有名ですから!!!誰でも知っていますよ!?」
叫ぶ兵士。
「『二首の狼』の方じゃなくて、『お笑い男』の方が有名だろうが!?グハハ!!!」
「あっ、いや、そっちの方も有名ですが・・・その二つ名ってどう言う所以で付いたのですか?」
苦笑しながら尋ねる兵士。
「所以?・・・確かぁ~ふざけていたからか?良く解らないんだよ。何時の間にか付いた二つ名って言うか、あだ名かもしれないな!」
その答えに、兵士は苦笑する。
「まぁ・・・離反した裏切り者だ」
笑みを消し、表情を暗くするロスドン。
「えっ!あっ・・・すいません」
「お前のせいじゃぁ~ねぇ~よ。気にしてすんな」
そう言いながらも、表情は暗いままだった。
「・・・すいません」
兵士はもう一度頭を下げる。
「あんまり凹むな!!戦争が始まるんだ!気合い入れろよ?」
「はっ、はい!!」
兵士は走りながら、前の部隊に入る。
その様子を見ながら、ロスドンはもう一度懐中時計を取り出す。
「「二つの首は互いを喰い合い、死滅する」・・・か。お前はそれを恐れて・・・離反したのか?セルド」
懐中時計は、秒針を動かす。
今から少しずつ離れて行く。
だが、全ては解決出来ずに後悔を残す。
消えぬ記憶。
それすらも、時間に置いて行かれる。
それが有限の命。
戻す事の出来ない・・・過ちと過去。
ロスドンは懐中時計を強く握り、前を向く。
目の前には『中立国ガデラン』。
開戦目前。
この戦いで、何を手に掴めるのか。
・・・もしくは、何を失うか?
それが無からず・・・軍は進む。
命を奪い、奪われる。
Side=第三者∥Out
Side=クリード=J=ガデラン∥Beginning∥『Reload』
サヤと名乗った少年が起こした奇跡。
いや、アレが彼の力だろう。
人間を召喚し、そして凄まじい治療魔法。
そして剣術。全てにおいて最高ランク。
彼は一体何者なのだろうか?
売名行為だと言った。果たしてそれが本当なのだろうか?
それにオルフスターが言った事も気になる。
この城の中・・・我の近くに内通者が居る。
それが『ローデン』の人間かどうかは解らないが、敵である事に間違いない。
だが、誰かも解らない以上下手に動けない。
それでも指を咥えて待っているのも、国王としてそれは許せない。
『ローデン』の兵は彼が倒すと言った。
可能性は低い。
けれども、信じたくなった。
他人にこの国を守ってもらうのに、我々が動けないと言うのは何とも言い難いが・・・今は彼を信じるしかない。
我々は・・・中に居る内通者を捜すしかないだろう。
信用出来るのは・・・妻とオルフスターだけ。
・・・一体どうなる?
不安だけが頭を過ぎる。
すると、それを肯定すかの様に、
ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!
爆音が響く。
「何事だ!?」
我が叫ぶと、オルフスターが叫ぶ。
「『ローデン』の軍勢が砲弾を使い、攻撃してまいりました!!!予想していたよりも早い攻撃です!!!」
何と・・・一体何故?
・・・まさか・・内通者が知らせたのか?
彼と言うイレギュラーの存在で、作戦を早めた?
クソッ!!!迂闊だった。
どうする!?
ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!
爆音が再度響く。
我は立ち上がり、叫ぶ。
「至急市民の避難だ!!国内各部のシェルターに避難させるのだ!!!!!」
兎に角、今は市民の安全。
我の叫び声を聞き、皆動き出す。
・・・彼は、本当に動き出すのか?
確信を持てない希望に、今はただただ・・・祈るだけだった。
Side=クリード=J=ガデラン∥Out