あかつきとジオットとジェネシス
今は無理でも、いつか必ずさっちゃんを超えてやる。
そう固く決意しながら、翌朝あかつきは豊平川の河川敷を走っていた。
チームメイトの彗星探査機ジオット、太陽探査機ジェネシスも一緒だ。
朝のランニングは、少し前からこのチームの日課となっている。
チームとしての団結力を高めるため、ランニングは足の遅い者のペースに合わせて行われる。
「はぁっ……はぁっ……もう……駄目」
あかつきの後ろを走っていたジェネシスの声だ。振り返ると、金色の長い髪を後ろで束ねた探査機が崩れるように地面にへたり込もうとしていた。
「ジェネシス!」
あかつきは怒声を発しながらジェネシスに詰め寄る。
「もう駄目って、今日はまだ三キロしか走っていないじゃないでしゅか!」
「そうは言ったって、今日はいつもより大分ペースが早いじゃない! こんなんじゃ……こんなんじゃ私はついていけない」
「二〇〇機のヒューマノイド探査機の中で、あかちゃんとジェネシスは追われる立場ではなく追う立場なんでしゅよ。いつまでも同じペースで走っていたら、いつまでも特S級探査機の背中は見えてこないでしゅ」
「何かあればS級S級って……私はもう、うんざりよ」
顔を覆ったジェネシスが、肩を小さく震わせはじめる。泣いているのだ。
「あかつきちゃんはA級探査機だから、次の目標としてS級を考えられるの……でも、私はそうじゃない。私はあかつきちゃんよりさらにワンランク下のB級なのよ。私なんかがいくら頑張ったって、S級の背中なんか見えてくるわけないじゃない」
「それは……」
あかつきはジェネシスに寄り添うように腰を落とす。だが、かけてあげるべき言葉はなかなか見つけられない。
「私なんて、何をやったって無駄なの……このチームからも、抜けたほうがいいのよ……」
ジェネシスの肩の震えはどんどん激しくなっていく。
あかつきがジオットを見やると、ジオットは視線を返しながら首を横に振ってみせた。
これ以上は、なにを言っても火に油を注ぐことになるだけだ。
そう悟ったあかつきは、ジェネシスが泣き止むまでその傍に無言のまま寄り添いつづけることにした。




