結成-1
都内のある高校の武道館の屋上。
顔面蒼白の男子生徒が屋上の縁に立っていた。
「動くなよぉ~」
少し離れた所からそう言う声がする。
男子生徒の頭にはリンゴが乗っていた。
「次は外すなよぉ~」
「おう」
そんな会話をしているが縁に立っている男子生徒は、何故、自分がこんな目に遭わなくてはならないのか。
目の前にいる奴らは一体、何の権限があってこんな事をするのか。
「行くぞぉ~」
次の瞬間、男子生徒の視界はブラックアウトした。
痛みは一瞬。ゆっくりと身体が下へ落ちていく感覚が襲う。
思考が消えていき、そして、最後に思ったのは両親への感謝だった・・・・・・・・
ここは、東京都品川区五反田。
五反田駅から疲れ切った顔をして出てくる男が一人。
「疲れた・・・・・・・・」
男の名前は、熱海 長四郎。
私立探偵を生業としている28歳だ。
「あ~ 疲れた」
首を回しながら、ゴリゴリ鳴らす。
彼は二日前から、静岡県熱海市の熱海温泉に浮気調査をしに行っていた。
そこで彼は散々な目に遭った。今回の調査も普段通りに行くはずだった。
都内のホテルの前で見張っとけば良いのかと思ったのだが、対象は静岡県熱海市に旅行に出かけ高級旅館へと入るわ。
そこまではまだ良かった。高級旅館での調査に神経を使いまくった。
対象不倫相手の女が手ごわく、かなりの手練れであった。
不倫経験豊富といった感じで、こちら手の内がバレているのか。
危うくバレそうになること十数回。
そして、埼玉県春日部市から来たという五歳の男児に付きまとわれそのせいで余計にバレそうになったことか。
普段の調査より神経を使い果たし、温泉も楽しめずクタクタになり調査を終え今に至る。
探偵を始めた当初は、こんな探偵業務を生業にするはずではなかった。
10年程前までは全国津々浦々に高校生探偵として名を馳せていた。
それが今ではそこら辺に居るしがない私立探偵。
意外と、コナン君や金田一少年のような殺人事件の依頼は来ない。
昔は、あんなにチヤホヤされていたのに。
金田一少年は子持ちの私立探偵になっても、事件解決しているというのに彼はというと・・・・・
重い脚を名一杯上げて、階段を登って行く。
事務所兼自宅に入ると、見知らぬ女子高生が来客用のソファーにドカッと座っていた。
「だ、誰?」という言葉と共に、確かここを出る際に鍵は掛けたはず・・・・・・・・と頭の中の記憶を張り巡らせる。
「誰? じゃないでしょ? 客よ。客」
目の前の女子高生はキツイ目をしながら、長四郎にはっきりと物を言う。
「鍵・・・・・・・・」
「あ? 掛かってわよ」
「じゃあ、どうして入っているわけ?」長四郎は弱々しく尋ねる。
「昔、結構な悪でしてね」
女子高生はニヤリと笑いながら、キーチェーンを見せる。
「ピッキングかよ」
「へへへへ」
「へへへへじゃない。犯罪だぞ。ガキンチョ」
「ガキンチョ~ 私はガキンチョって名前じゃない。羅猛 燐って名前があるんだけど」
「知らんがな」
「依頼人の名前だよ!!」
「ピッキングする奴を依頼人とは呼ばんぜ」
「そうかしら、殺人事件の解決依頼なのに・・・・・・・・」
燐はどうだ? 嬉しいだろうと言わんばかりの顔をし、対する長四郎はというと、うんざりした顔をするのだった。




