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宇宙の行方  作者: 春木
第三章 崩壊都市
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34話 三者三様

 宇宙の真ん中、地球より遥か彼方に浮かぶ戦艦、大星母。そこに、数百年の時を経て、顔見知りである地球人の三人が雁首を揃えていた。行方、止水、楽の三人は、険しい表情で互いの顔を見遣る。先陣を切るのは、行方だった。


「それじゃあ……僕から経緯を話そう……。宇宙に発った順番で話した方が、互いに理解しやすいと思うしな……」


 思い出話など、互いに望んではいない。まずは、どうしてこの大星母という組織と繋がり、今この状況になっているのかを、全員は確認し合いたかった。その為、行方から順に話すことになった。


「僕は、惑星ネージュという雪原に満ちた惑星で、大星母の調査隊員のニコと昇月に出会ったんだ。そこで龍星群の『不死の蒼』や『真眼の紅』にも遭遇し、宇宙で初めて言語の通じる生命体に出会った僕は、その時には未だ、どちらの味方に着くか悩んでいた。というのも、紅という人物が、既に僕に会っていたり……。まあ、惑わされることを告げられた。しかし、この大星母の戦艦に案内され、白蓮やミトさん、戦闘部隊長たちに会い、信頼に値すると感じたんだ。それから二つの惑星を回ることになったが、最終的に大星母に組させて欲しいと頼む形で、ニコ、昇月、トートに連れられ、ルミナスという崩壊都市から帰還した」


 止水は先ほどまでの困惑した表情とは裏腹に、真面目な視線で行方を見つめていた。


「なるほど。行方らしい簡潔な説明だ。それなら大星母と繋がったことも頷ける。次は楽くん、どうしてここにいるの?」

「あー、俺はなぁ」


 両手を頭に乗せ、ごろっと転がりながら楽は話し始める。


「親父とオリュンポス十二神の故郷に向かうことになったんだけど、それが行方さんと同じ宇宙に出ることだったんだ。まあ、別の次元とは聞いてたけど、別の銀河系に存在する、神族の惑星? ってところに行こうってなって、俺たちは行方さんと違って寿命があんだろ? だから、地獄の神のハーデスの地獄を通じて、裏世界から宇宙に出たんだ。何十年って歩いたんだけど、神族の故郷は消滅してたんだ。そんで、ゼウスたちで惑星を創り直すって話になったんだけど、未だ全然回復してないから、親父が無限のエネルギー源? にならなきゃいけねぇってなって、死ぬこともできねぇらしいんだ。そこでゼウスから提案されたのが、二宮さんの封印を解こうとしてる行方さんと合流して、三柱の主神って奴らを見つけ出して、力を貸して貰えば、親父はその永劫の使命から解放されるってんで、十二神に稽古つけてもらって、ハーデスに力を借りて、行方さんの居場所を突き止めたって感じかなー」


 少し判り辛い楽の説明に、止水は目頭を凝らしながらも、異能祓魔院で過ごした日常を懐かしむように微笑んだ。


「ふふっ、楽くんは変わってないな。つまり、ゼウスら十二神を救う為に自身を捧げたお父さん……。それを救おうとして、ハーデスの力を借りて地獄を巡り、行方の元まで辿り着いたってことだね」

「おう! その通りだぜ! やっぱ頭いいな!」

「それで、問題は止水だ。一番宇宙に出る可能性が低いというか……理由がないし、手段もなかったはずだ。それに、異能祓魔院で仕事もしていたはず。全てが理解できないんだが……」

「あぁ……僕にも色々あってな……」


 そう言いながら、止水は謎の小型機械をピコピコ押し始める。何の機械か初めて見たが、行方はそれがゲームだと咄嗟に理解し、「おい」と取り上げた。


「なんて言うか、僕にも少し悲しい話なんだよ……。まあ、話すけど……」


 そうして、嫌々ながらも止水は口を開いた。


「まず、宇宙に出た理由がそもそも恥ずかしいんだけど……」


(恥ずかしい理由……?)


 二人の視線が止水に向けられる。


()()()()()()()()()()()()()()された……」

「は……?」

「だから、異能力ってものに興味を示した宇宙人にキャトルミューティレーションされたんだよ!!」


 二人は唖然としてしまったが、楽にはその言葉の意味が理解できなかった。


「キャトルミューティレーション? ってなんだ?」

「まあ、異能力が盛んになった現代では、防衛策が成されているからそんな話は滅多になくなったが、異能力が人類に発現される以前の時代では、()()()()()()()()()()()をキャトルミューティレーションというんだ」

「じゃあ、なんだ止水の兄ちゃんはソレされたんだ? 発現される前の話なんだろ?」


 しかし、楽の疑問に止水は答えず、別の場所をジーっと眺め続ける。その姿を察し、代わりに行方が答える。


「ほら……。止水は…… "無能力者" ……だからだろ……。異能で防げなかったんだ。もしくは、数百年にも及び、異能力を断絶してキャトルミューティレーションを成功させた宇宙人がいたのか……。地球の神族とも色々あった頃だしな……」

「あぁ……。まあでも、理由はどちらか判らなかったんだが……。僕は結局、無能力者だったから、その宇宙人たちに興味を持たれなくて……」


 二人は、その後の止水の行先の想像がつかず、ゴクリと喉を鳴らす。


「よく判らない惑星に捨てられた……」


(ふむ……。捨てられた辺境の惑星で、大星母に救われた……というところか……?)


「それからは本当に地獄!! そこは僕を連れ去った宇宙人が捨てて行った多種多様な生命体たちで国が築かれてて、みんな優しくしてくれるけど、怖いし何言ってるか全然判らない!! なんか食べ物もくれたけど、見たこともない色や動物ばかりで口に入れるのも本当に怖かった!! ゲームもできないし……みんなにも会えなくなったし……」


 急な止水のテンションに二人は驚くが、行方はこれ以上の不幸はないだろうと言葉を制した。


「そ、それで……どうなったんだ……?」

「そこで、僕にただ死を待つだけの呆然とした日常の中で、ようやく()()()が現れたんだ……」


 二人は止水の目を見続ける。


()()()()()が」

「アマちゃん……?」

「うん。天照大神(アマテラスオオミカミ)

「あ、天照大神……!? 日本神話で最も有名な神じゃないか……!」

「あぁ。僕もオリュンポス十二神と出会っていなかったら信じることさえできなかった。天照大神は、邪神化した十二神から逃げるように宇宙に出たそうなんだが、日本人の様子が気になって戻ろうとしていた時、日本人の臭いがすると寄ってみたら僕がいた……と」

「それで、天照大神に助けてもらったのか……? 何故、それで地球に戻らなかったんだ……?」

「それが、天照大神の速度で地球に戻っても、二百年以上は掛かるらしく、僕を宇宙に出したら、そもそも呼吸ができないってことで、別の方法を探すことになったんだ」


(そうか。そこから大星母に……)

 

「ひとまず、僕がどの種族とも会話ができないのは困るだろうってことで、様々な惑星に訪れたアマちゃんが僕の中に入ることで、僕を他の宇宙人たちと話せるようにしてくれたんだ。そして、その惑星の中で模索している内に、僕たちはとあることを知ってしまったんだ……」

「とあること……?」

「あぁ……。今、十二神が弱体化していることを知った組織が地球を狙っているから、帰らない方がいいと……」


(そこで……止水も龍星群を知るのか……!)


「その名も……()()()()()()()()……」


 もう行方は何も考えずに聞くことにした。


「それから、それは困る、どうにかして地球を救いたいと色んな奴を訊ねたら、この大星母とコンタクトを取ってくれる奴がいて、大星母を紹介してもらったんだ」

「あ……そんな感じで出てくるんだ……。大星母……」


 流石の楽も、細目で気怠そうに聞いていた。


「それから、僕は大星母に頼み込んだ。そして、天照大神と大星母の両者と契約を結んだ。大星母には、()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()こと、天照大神には、地球に必ず戻るから、もう少し僕の中にいて、寿()()()()()()()()()()ことを」

「天照大神はなんの条件も無しに飲んでくれたのか……?」

「いや……条件は……。一緒に、伊邪那岐(イザナギ)伊邪那美(イザナミ)の二人の神を探してくれ……とのことだ。大星母にいれば探しやすいだろうとのことで、僕はそれを飲んだ」

「そうか……。日本の神々は、十二神の邪神化により、ほとんどが宇宙に出てしまっていたのか……」


 しかし、行方はあることに気が付く。


「ちょっと待ってくれ。止水が大星母に出会った経緯や、今も生きている事情は理解したが、結局、数百年と時間は経っている。みんなに会えなかったんじゃないか……?」


 すると、止水は珍しい笑みを溢した。


「アマちゃんの能力で、()()()()()()()会えたんだ。日本にいる者とは話せないけど、その空間に少しだけ、()()()()その場に移動させてもらったんだ……」

「そうか……。天照大神にはそんな力が……」


 涙を一筋溢しながら、止水は綺麗に笑った。


「みんな天寿を全うしていた。死ぬ間際の少しだけ、僕は行くことにした。すると、死ぬ間際だったのか、みんな僕のことが視えてるみたいだった。話すことは叶わなかったけど、最後に、みんなに会えた気がしたんだ……」

「みんな……元気だったかよ……?」


 流石の楽も、異能祓魔院の面々は気になるようだった。


「あぁ。愛ちゃんもしっかり、異能祓魔隊として仕事をこなして、最期の時を迎えていた。そうだ、楽くんに伝えたいことがあったんだ」


 そうして、今度は力強い笑みで楽を見遣る。


『鬼道楽・止水歩、二人の勇士は未だ戦い続けている。我々、異能祓魔隊全隊員が彼らを胸に奮闘することを誓う』


 その言葉を聞いて、楽もゴクリと息を呑んだ。


「どうやら、共闘するにおいて不足はないみたいだな」


 行方が呟く。二人は無言で、その勇姿溢れる眼光を向けた。

〇キャラクター紹介 ―地球人組―


行方行秋ナミカタ ユクアキ

 本作の主人公。二宮二乃の封印を解く為、様々な異能力を仲間から授かり、封印を解ける神を探しに宇宙へと出る。


鬼道楽キドウ ラク

 異能祓魔院の主人公。自らが契約した日本の神、卑弥呼ひみこ。双子の兄、鬼道御琴キドウ ミコト、そして御琴が契約した神ヘルメス、そして地獄の主ハーデスの力を宿す。冥界の中を移動可能。


止水歩シスイ アユム

 異能祓魔院で働いていた無能力者。生粋のゲーマー。ゲームのやり過ぎで人の呼吸や筋肉の動きから相手の行動を予測する天才。学生の頃は行方に次ぐ二位の成績だった為、私的に行方をライバル視している。

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