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宇宙の行方  作者: 春木
第一章 氷河の惑星
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2話 龍星群

 暫く昇月は客室で待っていると、国王自らが部屋へと入室した。


「ゲレンデ国王……!? あなたがお越しになるということは、もしかして……」


 昇月は、国王自らが話しに来る状況に、事態の深刻性を察する。


「はい……。龍星群(りゅうせいぐん)です……。私自ら交戦したのですが……」


 昇月はゴクリと息を呑む。

 国王は、悔しさをそのままに、俯きながら続けた。


()()()()()()()()()を奪われました……」


 薄々予感していたことではあるが、その言葉をありのままに聞いた昇月は、興奮のままに立ち上がる。


「それはいつのことですか……!? 現れたのは誰か判りますか……!?」

「一週間ほど前のことになります……。現れたのは……赤い瞳の女……」

「赤い瞳……()()()()か……!! すみません、グランデ国王。直様、大星母に連絡します」

「よろしくお願いします……」


 国王は昇月に深々とお辞儀をすると、昇月は直ちにトランシーバーを取り出して通信を始めた。


   *


 昇月が国王から話を聞いていた頃、長旅になるかと思われていた行方とニコは、目的地に辿り着いていた。


「行秋、すごーい! あんな距離をあっという間に移動しちゃった! それも "異能力" って力なの!?」

「そうだ。今のは『疾風』と呼ばれる異能力。簡単に言えば空を飛んだってことだ。目的地が判っていれば、そこに移動するのにこの雪原を歩く必要はない」

「凄いな〜、異能力って。まるで神族(しんぞく)の使う魔法みたい」

「神族……?」

「ああ、行秋は宇宙に出たばかりだから知らないよね。神族って呼ばれるのは、常軌を逸した力を持つ種族のこと。様々な惑星やエネルギー、生命を創ったのも、その神族って言われているくらい凄い種族なの」


 ニコは地面の雪をゴソゴソと探りながら簡単に説明しているが、行方の手には力が籠っていた。


「その神族という種族には……どうすれば会えるんだ……?」

「うーん……。神族は宇宙を駆け回れるから、親族の惑星はとうの昔に統率者が居なくなって崩壊してるんだよねー。興味を持った惑星にいる傾向があるみたいだけど、いろんな場所にいるしなぁ。でも会わない方がいいよ。神族にも、優しい人と悪い考えを持った人がいるからねー。それに……」

「それに……?」

「龍星群って奴らがいるんだけど、神族を絶滅させる為に惑星中からエネルギーを奪ってる宇宙の犯罪者集団にも出会す危険性があるんだよ。まあ、それは大星母の探索をしてても言えることではあるけどね。あっ! あったよ!」


 ニコは、地中に何かを探り当て、身体を捻りながら雪原に埋まるボタンを押した。

 すると、ゴゴゴゴゴゴゴ……と音を立て、地面の雪が退かされると、大人五人分くらいの円状の台が現れた。


「さあ、コレに乗って! 国に入るよ!」

「まさか……国って……」

「そう! ()()にあるんだよ!」


 そりゃあ、いくら彷徨っても見つからないはずだ……と、頭を掻きながらも、ニコに並んで台に乗車した。

 次第に、再び鈍い音が鳴り響くと、行方とニコを乗せた昇降台は下降を始め、分厚い雪原の中を降っていく。


「うお……!」


 暫くの暗闇の後、光が差したと思えば、冷静な行方が思わず声を上げるほどの大都市がそこには広がっていた。

 ガタガタと音を立て地下都市の地上に着地すると、機械は自動的に止まった。どうやら、上で呼び、下まで降ろしたら止まる、という風に設計されているらしく、周囲を簡単に見回した時に、上へと昇るボタンはないように思えた。

 雪であまり見えなかったが、ニコは綺麗な水色の髪のショートカットの若い女の子だった。


「あ、あの……」


 そんな中、一人の少女が行方とニコに声を掛ける。

 緑色の綺麗な髪で、地下といえど気温は寒い為、防寒具を身に纏ったニコと同じくらいの女の子だった。


「どうしたのー?」


 ニコはここの住人だろうと、なんの気無しに話し掛ける。


「使われなくなった昇降台から降りてきたと言うことは……お二人は大星母の調査隊の方々……ですよね……?」

「僕は違……」

「そうだよー!」


 行方の否定を押し切るようにニコは笑顔で答えた。

 すると、緑髪の少女は剣幕を変える。


「す、直ぐに逃げてくだ……!」


 次の瞬間、


「え……?」


 ニコの眼前には、細長い刃が映し出された。

 それを止めているのは、行方。


「ほう……。私の剣を止められるとは……調査隊にしておくには惜しい人材だな……」


 一瞬の内に刀を鞘に戻すと、男は行方を見つめる。


「いきなり殺しに掛かるなんて……。あなたは何者ですか?」


 行方は平静を装うが、内心は心臓が高鳴っていた。

 早々に、自分の出会いたかった存在に近づけるかもしれない――――と。

 しかし、予想は大きく異なることとなる。


「私は龍星群の(あお)。大星母の調査隊を殺す為にここへ来た」

「龍星群……!?」


 その名を聞いた途端、みるみる内に青褪めるニコ。

 しかし、行方の言動は更にニコを青褪めさせた。


「そうか。申し訳ないが、僕は大星母とは関係ない。雪上で護衛を頼まれただけの縁だ。地下都市へ辿り着いた今、もう彼女の護衛の約束もなくなった」

「な、何言ってんのよ……!! 私、殺されるのよ……!?」

「君が殺されることで、僕に生じるデメリットはなんだ? 君を見捨てたことで、大星母から復讐にでも遭うのか?」


 その言葉に、ニコは再び言葉を失う。

 行方の揺さぶりは正解だった。ここでニコを見捨てたとしても、命懸けで守ったとしても、何も変わらない。


 ゴッ…………!!


 再び、蒼の迅速の刃がニコを襲うが、再び行方は片手でそれを防いだ。


「何故こいつを庇う……? 無関係……なのだろう?」

「ああ、無関係だ。だが、ニコ、相談がある。もしここで君を助けることができたら、()()()()()()()()()()()()()()()()に会わせてもらえるか?」

「いいわよ!! なんでもしてあげる!! ()()()もきっと喜んで会ってくれるわよ!!」


 そして、蒼はハッキリと照準を変えた。


「話は付いたようだな。貴様を殺し……こいつを殺そう……」

「龍星群、さっき少しだけ話を聞きました。神族を絶滅させようとしている組織だとか……」


 ズオッ…………!!


 次の瞬間、行方からは膨大なエネルギーが放たれる。

 その強大な力を前に、蒼も、ニコも、同じ言葉を口にした。


「貴様は一体……何者なんだ……?」

「僕は……」


 右手には雷を、左手には水を、足下には風を、そして、その瞳は赤く輝きながら行方は告げる。


「神族、()()()を身体に取り込んだ地球人だ……!!」


 次の瞬間、行方は目にも止まらぬ早さで蒼の間合いに入る。

 蒼もまた、目にも止まらぬ剣撃を繰り出すが、行方はそれを見切っているかのように全て避け、


 バチィ!!!


 大きな音を立て、雷を宿した右手を蒼の心臓に突き刺し、思い切り放電させた。


「凄い……。龍星群を……たった一撃で……」


 蒼は思い切り血を吐き、行方の服に血反吐をぶち撒ける。

 しかし、蒼はそのままニタリと笑った。


「何故だ……!?」


 心臓に突き立てられた腕は、がっしりと掴まれ、行方は動きが封じられてしまった。


「私に死の感覚を与えてくれたのは数百年ぶりだ……。こんなところで貴様のような奴に出会えたこと、嬉しく思うぞ……」

「心臓を突き刺し、雷まで放電したんだぞ……!! 何故、生きていられるんだ……!!」

「私は、『()()』の力を与えられた。死ぬことのできなくなった存在だ……」


 そして静かに蒼は剣を握り、今度は行方の心臓に突き刺す。

 行方も同様に血を吐き、ニコは悲鳴を上げた。

 しかし、


「奇遇だな……。僕も…… "()()()" だ」


 そうして、二人は睨み合いながら、互いの心臓に穴を開け、血を垂れ流しながら、再び距離を空けて睨み合った。

キャラクター紹介


主人公:行方行秋ナミカタ ユクアキ/地球人

 様々な異能力が使える主人公。「戦術の神 神族 アテネ」を体内に取り込んでいる為、人知を超えた頭の回転速度を誇る。


◇大星母

ニコ・ジェミニ・メイ

 「ペコちゃん」という変形生物を相棒にしている女の子。短絡的な性格。

昇月しょうげつ

 白髪の青年。生真面目で正義感が強い。


〇氷河の惑星

グレンデ国王


龍星群りゅうせいぐん

真眼の紅

不死の蒼

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