片付けに不在の王太子
翌日。本来ならお休みの日。
おおまかな片づけは、昨日のダンスパーティ前に生徒全員で終えていた。
今日は生徒会役員と有志で片付けチェック。有志って結局はボランティアなんだけど、結構参加者が多い。
「みんな偉いわねえ」
おばちゃんっぽい言葉を発していると、ルーカスに「生徒会室に行きますよ」と引っ張って連れていかれる。
生徒会室には既に、全員がそろっていたが、
「ランドルフは?」
書類を手にカロリーナがバーナードたちに顔を向けた。
「ああ、ランドルフですか」
何だか言いにくそうな感じの3人はあ互いに目をちらちらと見合わせている。
「どうしたんです? 王太子の仕事ですか?」
聞いてはいないけど、と言うカロリーヌ。
ランドルフ王太子も生徒会のメンバーだ。それも生徒会長。
いつもはあまり生徒会室に来ることがなく、特に今は私が嫌われ薬を飲んで近づけないうえに生徒会のメンバーのように資料室の主になっていてはなおさらだ。
それに、王太子はまだ王の存在があるとはいえ、未来の王様だ。だから、国としての勉強もある。実際に現地視察、外交、なんてこともやっているし、役職の貴族の会議に末席ながら出席もする。
学園での勉強もあるが、ほとんどのことは今までに家庭教師から教わっているらしい。もっぱら、学園生活は、他の貴族生徒との交流や、数少ない子供同士の付き合い最後の場でもあるんだとか。
だから、生徒会長の座にはいるが、ほとんどは副会長のカロリーヌが主になって活動している。
今日の片付けも生徒会が主になってということで、一応、会長のランドルフが指揮をとるってことになっているのだが。
「お仕事であれば、仕方ないのですけど」
カロリーヌはそう言いつつもノアやバーナード、フレディに目をやった。
「何かあったんでしょう?」
ビクリとなる3人。
絶対、何かあったんじゃん。
カロリーヌの厳しい視線を浴びて黙っておられる人がいるなら会ってみたい。そのうえ、自分の婚約者やら幼馴染みやらにまでじっと見つめられては白状するしかないだろう。
「あの、それが」
言いにくそうなバーナードがフレディを小突き、フレディがノアをお嬢様方の目の前に押し出した。
目を見開いたノアが二人の裏切り者に僕かよ!? って顔を向けてるよ。
「ノア様?」
カロリーナがにこりと微笑むが逆に怖いよなあ。美人の笑みってある意味怖い。
首をすくめたノアは、
「あのですね、ランドルフは、ちょっと元気がないというか」
「元気が?」
「はい、なもんで、今日は無理かなあ、なんて」
首を傾げ、眉を上げたカロリーヌは、
「昨晩は、普通にダンスもされてましたわよね」
確かに、私とカロリーヌが踊った後、二人はみんなの視線を浴びて、ホールの真ん中でダンスをしていたっけ。
ノアは「はあ、そうなんですけど」
「あのあとから、というか、帰りがけに声をかけたら、なんというか、心ここにあらずというか」
「?」
「今日も、ぼんやりとしていて、気力が出ないと言うか」
全員がはてな顔だ。私は、少し離れた場所で事の成り行きを見守っていた。
今日は、何の装備もしてないし。気分が悪くなったらまずいよなあ、と思ってのことだが。
ルーカスは、もともとの魔力の強さと、私への耐性がだいぶ強くなったみたいで、今も私の近くにいる。
いる、けど。
「ルーカス?」
ふと見ると、ルーカスの顔から大量の汗がだらだらと。
「!?」
どういうこと?
「ルーカス?」
「……え?」
「あんた、大丈夫なの? 汗ひどいよ」
と、いきなり、ベシーやロザリン、アンの声が響く。
「ランドルフ様が!?」
「誰よ、それ」
「聞き間違いでしょう?」
何かと思い顔を向けるが、何だかもめているような。
そんな中、カロリーヌは大きく息を吐きだすと、
「わかりました。ともかく片づけを優先しましょう」
とこちらを見ると、
「エマ様は、申し訳ないけど、外のブース周辺の掃除をお願いしますね。あ、ルーカス様も一緒に」
「はい、わかりました」
横のルーカスは、
「は、はい!」
と飛び上がりそうな勢いだ。
カロリーヌに指示を出してもらい、みんなも三々五々に散っていった。各自、あちこちで生徒たちと一緒に片付けの仕上げをするんだろう。
それにしても。
「ねえ、ルーカス、何があったのかわかった?」
びくっとしたルーカスは「な、なにが?」と私でも挙動不審なのがわかるんですけど。
ただ、どれだけ聞いてもルーカスは何も言わず、首を傾げつつも私は掃除を終え、また生徒会室に戻った。
ベシーやロザリンに聞いてみようっと。と思っていたのだが。




